セスカのおこ2
「ちょっとレオナ! また変なもの拾ってきて!」
「いや、セスカ。これには事情が!」
宿に帰るなりすごい勢いで怒られた。
夜になっても帰ってこなかったこと。また女の子を連れてきたこと。プラス何かでセスカの怒りは頂点に達している。
「セスカさん。レオナ様の事情も聞いて差し上げないと」
「そうだぞセスカ。こちらにおわすお方を誰と心得る。グリドリッジ王の第三子ご息女の……。えーと……」
「アンリエットですわ。皆様、こんばんは」
一瞬、無音になった。さっきゅんとセスカは何が起こったかよくわかていない様子だ。
「レオナ、あんたお姫様をさらってきちゃったの?」
「そういうことになる。どうだい、このドレス。なんと気品のある事か」
「これ、大事件になるわよ。ここまで誰にも見られなかった?」
「おそらく誰にも見られていないよ。ハイドを使っていたからね」
レベル千六百万シーフの説得力である。
「レオナ。この状況、どどどどうするの?」
「アンリエットお嬢様に、ちょっと話を聞かせてもらいたいとは思ってる」
「聞きたいことなんて、そりゃもう、数えきれないくらいあるわよ」
アンリエットが割り込む。
「あなた方は泥棒さんのお仲間さんなのかしら」
「単なる泥棒ではないわ。華麗なる詐欺師、セスカファミリーよ」
「まあっ。素敵ですわね。詐欺師なんて図書室の本で読んだことがあるだけですわ。どんな詐欺をしているんですの?」
俺達は答えに窮した。
「そ、それはちょっと言いにくいです」
「もしかして、王家を詐欺にかけるおつもりですの?」
お嬢様は洞察力に優れているようだ。
「いや、ちょっと。なぁセスカ」
「うーん。まあ、まあね。ちょっと近い感じかもしれないわね」
「父さまはボーっとした方だから、少し痛い目を見るのも勉強になるかもしれないですわ」
俺とセスカは目を見合わせた。
セスカの最終目的の最終段階は、父さまの暗殺だ。ちょっと正直には言えない。
「まだ秘密ですけど、そんなところです」
「ちょっとレオナ、それじゃ困るわよ。王様のことを色々聞きださないと」
「あ、う。それは、セスカがやってくれないか」
「情がうつったの? あー、やだやだ。男は美人に弱い弱い……」
「そんなんじゃなくて、ちょっとセスカ、こっち来て」
俺はセスカの腕をつかむと部屋の隅の方へ行った。ひそひそ話をするためだ。
「アンリエットはNPCなのか?」
「まずまちがいなくNPCでしょうね」
「NPC相手には、ようしゃしないつもり?」
「ようしゃしないわよ」
「NPCに人格ってあるのかな」
「ないわよ。ホントにどうしたの? しっかりしてよ」
「実際に話すと人間と変わらないんだよな」
「だめだわ、こりゃ。レオナは向かいの酒場にでも行って一杯飲んで頭を冷やしなさい」
セスカは俺の手に小銭を握らせると、俺を部屋から追い出した。
NPCに人格があるのなら、殺してはいけない気がする。
これがプレイヤーなら、元の世界に帰るだけで済む。でもNPCはここでしか生きられない。死んだらそこでおしまいだ。
いやいや、俺の考えが甘いだけだ。NPCなんかサクッと殺せるようになるべきだ。
俺は向かいの酒場で初めてのエールを飲んだ。味は気に食わないが酔うことはできる。俺は酔っぱらいながらNPCを殺すイメトレを繰り返した。
書き溜めた分をほとんど出し切ってしまいました。
困っております。




