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細工師ギルド

 俺は細工師ギルドに来た。目的はシーフ用のツール。それも特別に高品質なものだ。

 俺は「マウス」という人との面会を申し込んだ。受付の人はその名を聞くと「しばらくお待ちください」とだけ言って、もう十分近くになる。その間にショーケースに並んだ細工品を見て回っていた。六分儀がかっこいいので思わずほしくなったが、要らないものを買っても仕方ない。懐中時計もいい感じだ。だが、手に入れる必要があるとしても今ではない。

 受付の人が戻ってきて、その名前をどこで知ったのかと聞かれた。シーフギルドで見た唯一使えそうなツールに入っていた銘だ。俺はその通りに伝えた。

 よく考えたらシーフが使う道具に銘を入れるなんて自殺行為だよな。盗みの片棒を担いでますって宣言しているようなもんだ。

 受付の人はまたどこかへ行ってしまった。盗みの片棒を担いでいる人とはそう簡単に会えないかもしれない。

 しばらくすると受付の人が戻ってきた。「マウス」氏とは面会できるようだ。そのまま応接室に通された。応接室にはすでに初老の男が控えていた。

「私が『マウス』です。細工師ギルドのギルドマスターをやっております」

 マウス氏は立ち上がり、握手のために手を差し出してきた。俺は握手の瞬間、その腕につけている腕時計を盗んだ。マウス氏は気づいていない。俺は何事もなかったように続けた。

「どうりで。ツールはいくつもあったのに使えそうなものは一つだけでした。マウスさん。あなたは素晴らしい職人だ」

「実は『マウス』は偽名なんです。シーフギルドにあったというツールは手慰みにつくったものなんですよ」

 マウス氏は続けた。

「シーフのツールは、本来シーフおかかえの職人が作っているものなんです。私たち細工師ギルドの職人ではないんです。しかし、私は彼らの仕事がうらやましくてたまらなかった。実用性一辺倒のデザインに魅了されてしまったんですよ。そこで、つい一つだけ作ってしまいました。しかし、作ってすぐにそのツールは盗まれてしまったんですよ。あなたが見たツールはおそらく私の作ったものでしょう」

 マウス氏は腹を割って話してくれている。ここは俺も正直に話した方がよさそうだ。

「なるほど、了解しました。そこで本題なのですが、私のためにツールを作っていただけないでしょうか。ツールはシーフのかなめです。良いツールがなければ、良い仕事はできません」

「それには条件があります。シーフギルドにあるという私のツールを取り戻していただけないでしょうか。取り戻していただけたら、あなたが欲しいものをいくらでも作って差し上げます」

「すみません。先にツールがないと仕事ができないんですよ」

 俺は懐から、ウォルフ君が持っていたツールを取り出した。

「見てください。これで十分な仕事ができるとお思いですか」

 相手は細工師の最高権威だ。見ただけで精度も耐久性も劣ることがわかるはずだ。

 それに続けてマウス氏の腕時計を取り出した。

「この時計は、私の盗みの腕を見ていただくために失敬したものです。お返しします」

 マウス氏は自分の腕を確かめると、驚きのあまり言葉を失った。それから、しばらくすると震えた声で話をつづけた。

「わかりました。あなたの鑑識眼も腕も大したものです。先にツールを作りましょう。それを使ってシーフギルドから盗まれたツールを盗み返してください。ツールの作成にはそうですね……二日ください。二日後にまたここに来てください。ツールをお渡しいたします」

「わかりました。またお伺いします」

 俺は細工師ギルドを後にした。

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