さっきゅんのひみつ
次の日、俺たち三人は大図書館にいた。入館料を払えば数万冊の蔵書を見放題らしい。
そこでサキュバスの生態について調べた。やはりサキュバスの幼生は人の精気を吸わないらしい。成熟してから精気を吸う快感に目覚めるらしい。ちなみにサキュバスが成熟するまでには七十年かかるらしい。
「サッキュン、フツウニ、ゴハン、タベル」
そうだろうそうだろう。
「よし! これでさっきゅんも俺たちの仲間だな」
「ちょっと待ちなさいよ! なんで私がモンスターの……」
「セスカ、声がでかい」
「(もんすたー)の仲間にならなきゃならないのよ」
「旅は道ずれ。さっきゅんも魔法が使えるって書いてあるぜ」
「その『さっきゅん』ってのはなんなの。センス悪いわね」
「ほら見ろよ、第三サークルまで使えるみたいだぜ」
「人の話を聞きなさいよ!」
「聞いてるって、セスカ。さっきゅんを弟子にしたらどうだ?」
「詐欺師の?」
「とぼけるなよ。魔術師のだよ」
セスカの目が泳いだ。なぜか動揺している。
「わ、わかったわ。特別に弟子にしてあげる。特別によ……」
「よかったな、さっきゅん。これで俺たちは仲間だ」
セスカは両手をあげて怒りはじめた。
「仲間にするとは言ってないわよ。一時的に一緒にいるだけよ! それだけよ!」
「ナカマ、ナカーマ」
今後さっきゅんとは長い付き合いになる気がする。セスカもツンデレなだけでさっきゅんのことを気に入ってるふしがある。この調子で仲良く過ごすことが出来たら楽しそうだ。
図書館の帰り道、俺はセスカにファンタジーの常識について講釈を受けていた。
「俺の必殺パンチをガードした奴がいたんだけど、俺ってホントはもっと強いんじゃないの?」
「たしかにシーフは軽戦士ともいえるけれど、パンチはちょっと……。レオナって実はDEXに全ふりしてるんじゃないの? STRは全く上げてないんじゃないの?」
「まれによくあるケース?」
俺は何かの間違いでシーフのレベルだけ高い状態なわけだ。STRとかDEXとか、基本的なステータスはゼロに近いのかもしれない。
「まあ、筋肉がつくと体重が重くなって『クライムウオール』の邪魔になるかもしれないわね」
「それでも、レベル千六百万のパンチだぜ。ダメージゼロなんて納得できないよ」
「そいつ、ひょっとすると人間じゃないかもしれないわ。世の中のモンスターの半分くらいは魔法の武器じゃないと傷ひとつつけられないのよ」
「え、町の中にモンスターがいていいものなのかよ」
「じゃぁ、さっきゅんはどうなのよ。人間社会で生きる必要のあるモンスターは、人間に化けてるもんなんじゃないかしら」
「そういやそうだな。バンパイアとか?」
「バンパイアは昼に活動できないから街にはいないんじゃないかしら。ウォーウルフとか食人鬼とかかしらね」
「こわいな、おちおち道も歩けないよ」
「どうした千六百万レベル。街中でモンスターなんて、そうそう会えるものじゃないからだいじょうぶ」
「いや、でもいざという時の備えは大事だよ。俺も魔法の武器が欲しいよ」
「魔法の武器より、シーフのツールが先よ。モンスターからは逃げればいいけど、ツールがなくっちゃ『ロックピック』も『リムーブトラップ』も使えないわよ」
「おっしゃる通りでございます。で、ツールはどこに売ってるんで?」
「シーフギルドよ」
「どのへんにある?」
「え? シーフギルドはシーフしか知らないわ。あたりまえでしょう」
「たしかに。盗人のギルドが看板かかげてるわけはないわなぁ。どうやって探せばいいんだ?」
「シーフしかわからない手がかりとか暗号とかがあるんじゃないの?」
「うーん。そんなの知らないなぁ」
俺達はしばらくあれこれ考えながら歩いていた。さっきゅんはそんなこととは関係なく「ミルクミルク、エールエール」とうるさい。
とりあえず、俺は街中でシーフギルドを探し、セスカはさっきゅんと一緒にご飯を食べることになった」




