S7 トライアングルハット 一号館
食事を終えた二人は少し村の中を探索してみようという話に落ち着いた。
レミングスの酒場から短い木道を抜けると花畑が二人の視界に広がる。その女神像前の花畑を横目にその奥へと伸びる砂道を歩んでいくと、垂れ幕の掛かった囲い木が見えてくる。
そしてその囲い木の向こうには、青空と緑々しい木立の下に、藁の三角帽子を被った小屋が一、二、三と並んでいた。
「あれ何だろう。何か看板が出てるよ」
「うむ、ショップの可能性が九割かな」
そう返すパピィの顔を見つめ返すククリ。
「残りの一割は?」
「ただの藁小屋。もしくは公衆便所」
それを聞いてがっくりと肩を落とすククリ。
「聞いたわたしが悪かったよ。その発想は一体どこから生まれるんだか」
そして二人はその藁小屋の中から一番左の小屋へ足先を向ける。
小屋の入り口前には木造の階段が在り、小屋は一メートル程の高床になっていた。二人の歩みに合わせて緩やかにしなる板。入り口前には木彫りの装飾がなされており、二人は暫しその装飾の前で足を止める。
「なんていうか、いよいよファンタジーだね」
そんなククリの発言を聞いているのか、無視して建物の中へと進入して行くパピィ。
中へ入ると、そこには円錐型の高い屋根の下に小さな円形状の空間が広がっていた。その空間には幾つもの木製の台座が並んでおり、台座の上にはガラスのように透き通ったショーケースに包まれた様々な武器が並んでいた。
小型の短剣、短剣と比べて刃先が伸びた長剣、突貫性に優れていそうな槍、短い柄に太い刃のついた見た目にも破壊力がありそうな片手用の斧、それから柔らかな弧を描いた弓と、いずれも銅製品と見られるそれらは所狭しとショーケースの中に並べられていた。
「うわぁ、すごい。こんなの見るの初めて」
パピィはつかつかと店内を見回り、その中身を確認し始める。
「武器屋さんなんだね、ここ」
ククリもまたショーケースの中の銅製の槍に輝いた目を向けていた。
ふと辺りを見渡しながらククリが呟く。
「ここにも店員さん居ないけどどうやって買うのかな」
そんなククリの疑問にパピィがPBを開きながら指差して見せた。
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購入品-買値(検出品種:5)
□×1 銅の短剣 49 ELK <E>
□×1 銅の剣 87 ELK
□×1 銅の槍 111 ELK
□×1 銅の斧 143 ELK
□×1 銅の弓 99 ELK
●購入する
●設定クリア
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「ここもPBで買うんだ」
ククリは納得したようにパピィのPBから視線を戻すと、自らもPBを開く。
「でもどれも高くて買えないね。短剣なら買えるけどもう持ってるしね」
「よし、クーちゃんお金ちょうだい」
そう言ってククリに向かって手を差し出すパピィ。
「なんで、やだよ。自分の使えばいいでしょ」
「いつからそんなわがまま言うようになったんだクーちゃんは。クーちゃんのものはわたしのもの。わたしのものはわたしのもの。これって常識だぞ」
無言で視線を送るククリ。
「どっちがわがままだ」
そうして、金額が足りない事を認識した二人は武器屋から出ると自分達の目的を認識する。
――それはまずお金を稼ぐ事――
二人の意識はここで初めての一致を見せ、そこには村の外へと洞窟へ姿を消す二人の姿があった。
▼次回更新予定日:12/12▼