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S5 船着場

 木漏れ日の丘を抜けたパピィ達はその足で村の北側へ向っていた。

 美しい木々に囲まれた幻想的な空間を抜けると、そこにはまた新たな世界が開ける。草地の先に広がるは広大な海原。海へと続く細い砂道の先には、丸太で組まれた小さな船着場が。そこにはまさに今蒸気を巻き上げて入港してくる一隻の小型の汽船の姿が見えた。


「見てみて、船だよ」


 歓喜の声を上げるククリ。


「たかが船だよ」とパピィ。

「夢の無い発言するな」


 そんなやりとりをしながら入港してきた船を間近で見ようと丘を下り船着場へと歩を進める二人。

 船着場に停船したその船へと続く、虹色のアーチが掛かる渡し板の入り口までやってきた二人は改めて空を仰ぐ。


「大きいね。もっと近くで見てみようよ」


 ククリの手を引かれておずおずと渡し板に足を掛けるパピィ。二人が渡し板に掛けられたアーチ型の入り口をくぐろうとしたその時だった。

 突然、二人の前に虹色の波紋が浮かび上がる。


「うわ!」


 見えない何かによって後方へ弾き飛ばされる二人。

 何事かと二人が正面を見つめると、そこには空中に浮き立った虹色の波紋が揺らいでいた。


「いたたた……なにこれ」


 ククリが当惑する傍らでパピィはその波紋の前へと近づき指でつんつんとつつき始める。


「見えない……壁?」


 ククリの言葉に腕を組み正面の波紋を見つめるパピィ。

 二人が状況に困惑してその時、ふとそんな二人の様子を見つめていた通行人が二人へと声を掛けてきた。


「お嬢ちゃん達、どうしたんだい?」


 白と青を基調とした美しい羽織物を纏ったその青年。

 そんな青年に視線を向けた二人は状況を説明し始める。


「あ、なんかわたし達……ここ通れないみたいなんです」


 ククリの言葉に微笑を携えながら頷く青年。


「うん、それはね。君達がこのオラクルゲートの通過条件を満たしていないからだね」

「オラクルゲート?」


 聞き返すククリに青年が丁寧に説明を始める。


「このアーチ型の門はオラクルゲートと言ってね。冒険者達をある条件に選別する言わばふるいのようなものなんだ」

「ある条件?」


 聞き返すククリの傍らで青年の説明に対してパピィが不満の声を上げる。


「勿体ぶった説明しないでくれんかね、お兄さんや」


 そのパピィの言葉に不意を突かれた青年は一瞬驚いた表情を見せてパピィに再び笑顔を向ける。


「ああ、ごめんよお嬢ちゃん。でもその条件というのはオラクルゲートによって内容が変わるんだ。その内容はオラクルゲートの前でPBを開けば確認出来るよ」


 そう語ると青年は二人に優しい笑顔を向ける。


「それじゃ、急いでるので僕はこれで失礼するよ。もっと丁寧に説明してあげたかったんだけど、悪いね」

「いえ、ありがとうございました」


 ククリが丁寧なお辞儀をする横で、「ご苦労」と一言告げるパピィ。

 青年が立ち去ると早速二人はPBを開き、オラクルゲートのその条件を確認し始める。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


 ●オラクルゲート通過条件


 ギルドクエスト:「聖獣の洗礼」のクリア


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 通過条件を見つめているククリは首を傾げながら呟く。


「んっと、せい……じゅう、でいいのかな? のせんれい?」


 パピィはPBを見つめながら腕組みをしたままだった。


「何だよこれぇ。これじゃどうしていいか全然わかんないじゃんか」

「どうする? やっぱり初心者講習とか受けた方がいいんじゃ」


 先行きを不安に思ったククリに対して首を振るパピィ。


「まぁ、なんとかなるよ。そんな事よりお腹空いたぁ。なんか食べようよクーちゃん」

「え……そういえば確かにお腹空いたかも。でもどこで食べるの?」


 ククリの言葉に首を傾げるパピィ。


「女神像の右っ側に何かあったよ」

「それは女神像をどっちの方向から見て右と言うか」


 ククリの突っ込みに怪訝な表情をするパピィ。


「細かい事気にするなよぉ。ほら行くよ」

「あ、ちょっと待って。走らないでよ。ねぇ、待って」


 そうして駆け出す二人の少女。

 船着場では今真っ白な蒸気を上げて汽船が出発して行く。

▼次回更新予定日:12/6▼

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