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S17 試練の洞窟

 今二人の前には波に打たれる岩礁に口を開けた薄暗い洞窟がその目に映っていた。

 突き出た岩礁に囲まれた洞窟の入り口には海水が浸水している。二人は海水の浸水を免れた壁際の足場を選んで洞窟内へ。薄暗い洞窟内に入ると、洞窟特有の冷たい空気の中に二人は包まれ、ふと足を止める。それは外気との空気の変化に戸惑ったわけではない。

 眼前の光景にただただ言葉を失う二人。

 そこは一面に広がる青の世界。浸水した海水は紺碧の輝きを放ち、その輝きは洞窟全体を青く照らし上げていた。その純正な青色は、今まで二人が目にしたどんな色よりも美しく、そして神聖だった。そのあまりに美しく神秘的な光景に二人は言葉を失ったのだ。

 時が暫く経過すると、少女達の困惑は純粋な感動へと移り変わってゆく。


「なんか……夢見てるみたい」


 そう呟いたククリは洞窟内の水面へと近づき、そっと水面をその手ですくう。

 指先から零れ落ちる青色の雫が舞い、地表に落下し溶け込んでゆくその様子をただククリは言葉も出さずに見つめていた。

 初めて訪れた冒険者は誰もが、この美しい光景を前に言葉を失う。そしてこの美しい光景を瞼の裏に鮮烈な記憶と宿して旅立ってゆくのだ。

 いつしか、この洞窟は冒険者達の間で、二つ名を持つ事になる。

 一つは『試練の洞窟』、そしてもう一つは……


 『青の洞窟』


 そう呼ばれるようになった。


 それからどれ程の時が経過したのだろうか。色褪せる事の無いそんな神秘的な光景を前に、二人は我に返ると洞窟の奥を目指して歩き始める。

 美しい青の水面みなもは奥へと続いていた。水面からの反射を受けて青く照らし出された壁面に沿いながら、二人は約一メートル半程の足場をゆっくりと踏みしめる。石灰質の洞窟の壁には、人為的に設置されたランプが取り付けられており、ここが少なからず人の目の行き届いた土地である事を示していた。

 青い色彩の中に浮かび上がる淡いランプの白光にただ導かれて行く二人。


「パピィ、おとなしいね。普段なら茶化してるところじゃない」

「うむ……正直少なからず感動した」


 そんなパピィの言葉にふっと笑みを零すククリ。


「なんだ、素直なところあるんじゃない」


 その言葉に当然と言わんばかりに頷くパピィ。


「この景色をポストカードにでもすれば売れそうなのだが」

「前言撤回」


 段々と狭まってゆく洞窟の通路には、水が絶え間なく水面上に跳ねる音が響いていた。

 いつしか、足場は完全に浸水していた。足首まで浸ったその水場を、二人が歩くその音が洞窟内に反響しているのだった。


「今のうちに装備とステータスをもういちど確認しといた方がいいかな?」


 ククリの言葉に二人はPBを開き、それぞれのステータスを確認し始める。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


〆パピィ ステータス


レベル 3

経験値 ------------ 0/100

ヒットポイント ---- 110/110

スキルポイント ---- 16/16


物理攻撃力 -------- 12(+1)

物理防御力 -------- 10(+5)

魔法攻撃力 -------- 14

魔法防御力 -------- 10

敏捷力 ------------ 11


ステータス振り分けポイント----- 0

→ポイントを振り分ける

※再分配まで<0:00/24:00>



〆パーティ所属中


▽Kukuri


〆装備 


武器 -------- ファイアロッド


頭 ---------- なし

体 ---------- 旅人の服

脚 ---------- 旅人のズボン

足 ---------- 旅人の靴

アクセサリ --- なし


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


〆ククリ ステータス


レベル 3

経験値 ------------ 0/100

ヒットポイント ---- 110/110

スキルポイント ---- 16/16


物理攻撃力 -------- 12(+1)

物理防御力 -------- 12(+7)

魔法攻撃力 -------- 11

魔法防御力 -------- 11

敏捷力 ------------ 11


ステータス振り分けポイント----- 0

→ポイントを振り分ける

※再分配まで<0:00/24:00>



〆パーティ所属中


▽Puppy


〆装備 


武器 -------- ウォーターロッド


頭 ---------- 旅人の帽子

体 ---------- 旅人の服

脚 ---------- 旅人のズボン

足 ---------- 旅人の靴

アクセサリ --- 兎石の首飾り


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


 今それぞれの想いを胸に青い水面の先に続く暗闇を見つめる。

 周囲を包む空気はいつの間にかはっきりとした冷気へと変わりつつあった。

 パピィは足元の水面に指を浸しその水温を確かめる。ククリはそんな様子をただ無言で見守っていた。もはや、二人の間に会話は存在しなかった。

 次第に高まりを見せる二人の鼓動。そして唐突にその瞬間はやってきた。

 突然二人の前に開ける空間。狭かった洞窟が広がりを見せたその時、二人の身体が強張る。

 青い水面上に広がる薄暗闇の先で、そこには今ゆっくりと蠢く影が在った。


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