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S15 魔法特訓

 二人は名も知らぬ親切な青年から手渡されたカードをそれぞれPBにしまいこむと、その内容を確認する。


「ファイアロッド」とパピィ。

「こっちはウォーターロッド」とククリ。


 二人はPB上でそれぞれ装備を変更すると、色鮮やかな鉱石のついたそのロッドを取り出してみせた。


「でも、これどうやって使うのかな?」

「空にかかげて拝むのだよ」


 適当な言い回しをするパピィに冷ややかな視線を浴びせるククリ。

 二人はその場でロッドを振り回しながら色々と試行錯誤を始める。

 だが一向に何も起こらないロッド。


「ちょっともう一回カードの説明よく読んでみようよ」


 そうしてククリがPB上でウォーターロッドの説明を読み始める。

 すると、そこには通常のアイテム説明の他にさらに詳細リンクが張られていた。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


●ウォーターロッド


 ▽Water Sphere (消費SP:5)


 印言 Water Sphere <ウォータースフィア>


 刻印 WS


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


 画面の表示を見ながら首を傾げるククリ。


「何だろうこの印言いんごん刻印こくいんって」


 それを聞いてパピィもまたククリのPBを覗き込む。


「ほうほう」


 パピィはそう言いながらふと自らもまたPBで詳細リンクを辿る。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


●ファイアロッド


 ▽Fire Ball (消費SP:3)


 印言 Fire Ball <ファイアボール>


 刻印 FB


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


「意味わかったの?」

「うむ、わからん」


 パピィの返答にがっくり肩を落とすククリ。

 その隣でロッドを振り回し始めるパピィ。


Fireファイア Ballボール!! Fireファイア Ballボール!! Fireファイア Ballボール!!」


 それはパピィがファイアボールと連呼し始めて数秒後の事だった。

 突然パピィのロッドから飛び出した火球がククリの真横を通り砂利地の上で炎上する。


「おお、出た」

「おお、出たじゃなーい! ちょっと危ないでしょ!!」


 本気で危機を感じたのか、珍しく顔を真っ赤にして激怒するククリ。


「なんだよクーちゃん、出たんだからいいじゃんか」


 まるで反省していないパピィを前に諦めたククリは、静かに自らを抑え始める。


「それでどうやって今の出したの?」

「うむ、ロッドを振りながら魔法の名前を発音したら出た」


 それを聞いてククリは自らのロッドを見つめる。


「じゃあ、わたしはWaterウォーター Sphereスフィアって言えばいいのかな」


 そうしてロッドを構えたククリは絶壁に向かう。


「行くよ、Waterウォーター Sphereスフィア!」


 ククリの発音と同時に振り下ろされたロッドの先から小さな水の流れが発生する。

 水の流れは次第に収縮し、それは水球を象って行く。


「うわ、これどうしようパピィ!?」

「クーちゃん気合だ! 気合で撃つのだ!」


 パピィの掛け声に身体から遠ざけるように外へロッドを向けるククリ。

 そして、次の瞬間水球はロッドから離れ、崖に向かって緩やかな弧を描く。


「撃てた!?」


 二人が見守る中、水球は村前の崖に接触すると大きく弾けて辺りに飛沫を撒き散らした。

 その飛沫を受けて、呆然とする二人。


「これが……魔法」


 初めて自らが撃ったその魔法という神秘の力に二人は顔を見合わせて満面の笑みを浮かべる。

 ククリが幼い頃から憧れていた夢、その一つが魔法使いだった。


「わたし、魔法使えるようになったんだ」


 感動するククリの傍らで何やらロッドを構えて海に向うパピィ。

 パピィはそのまま海岸際に立つと火球を放ち始めた。


「何やってるのパピィ?」

「うむ、この魔法の発動時間と射程を調べてるのだよ」


 そう言ってパピィは口元に手を当てると少し悩んだ表情で目測を口にした。


「大体、発動にかかる時間が一秒で、射程が八メートルくらいか」

「すごいね、見ただけでわかるの?」


 感心するククリに首を振るパピィ。


「いや、ただの勘だが」

「そうですか、聞いたわたしが悪かったよ」


 そうして、二人が新たに得た魔法という力。

 そこにはきたる守護獣との戦いに備えて、着実に力を備えていく二人の姿があった。

 

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