交通事故
すいません。前回のタイトルにミスがありました。
なんだよ交通事故って。と思った方々正常です。安心してください。
俺の目の前には赤い何かが広まっていた。
その赤い何かはまだまだ広まっていく。
そしてその出所は人からだっだ……
それも俺の幼馴染の体から……
それは赤い液体……つまり……血だ。
俺はあまりのことに動けなかった。
現実感がわかなかった。
駆け寄って幼馴染の様子を確認する余裕すらなかった。
いや、俺は諦めてしまったのだ。
幼馴染の体から赤い血が見たこともないような量出てきてしまっていたから、もうどうしようもできないと、もうただ彼女が死ぬのを見ているしかできないのだと……
ただ座り込んでいることしかできなかった。
少しすると警察やら救急車やらが到着した。
誰か近寄って来て何か俺に話しかけている。
だが俺はそれを意識できない。ちゃんと認識していない。
俺の中にあるのはただ幼馴染の風花が倒れているという
一つの認めたくない真実のみ。
気が付いたら病院に居た。
そこには、俺の他に風花の両親、俺の両親、そして数人のナース、ナースたちは慌ただしく動き回っている。
俺の心は少し落ち着いていた。
そんな時、手術室から医師とナースが出てきた。
そして俺は改めて自覚する。
風花が俺を庇ってトラックに轢かれた事実を―――
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
耐え切れず悲鳴をあげた。
周りの大人たちが一斉に振り向き、何事かと俺を見る。
悲鳴を上げたのが俺だとわかると、母さん、父さん、風花の両親まで俺の近くに来て、落ち着かせようとしてくれた。
でも俺の心は乱れ、ざわめき、動揺している。
俺は気が狂い過ぎたのか、自分でもわからないうちに意識を手放した。
目が覚めたらそこは真っ暗な空間だった。
辺りを見回しても何もない。人っ子一人見つからない。自分の身体すら見えない。そんな暗闇だった。
俺は訳もわからずとりあえず歩き出す。
なのに歩いている感じがしない。歩いているつもりなのにそれを感じれない。
もしかしたら頭で歩いているつもりになっているだけで歩いていないのかもしれない。
「大地」
誰かに俺の名前を呼ばれた。
すぐに振り返る。そこには誰もいなかった。
俺はまた歩き出す。
しばらくすると光が見えた。俺は無意識のうちに光へ向かって歩き出す。
光のもとまで近づくと俺の体は光に飲み込まれた。
「!?」
俺は目を覚ました。
辺りを見回すと自宅の見慣れた自分の部屋だった。
一応まだ変な空間ではないのかを確認するため、人を探す……までもなく俺の膝に頭を乗せている母さんがいた。
一人ほっとして肩を下ろす。
どうやらさっきのは夢だったようだ。
でもその割には記憶もしっかりと残っていて妙に現実感があった気がする。
「もしかして風花が死んだのも!」
急いで隣の風花家へ走る。
玄関でチャイムを鳴らすが応答がない。
もしかして夢ではなかった? いや、まだ結論を出すのは早い。
「そうだ母さんに聞けば!」
急いで家に戻って母さんを少々強引にたたき起こす。
「おい! 母さん! 母さんてば!」
身体を激しくゆすっているのに母さんは一向に起きる気配がない。
「そうだ携帯! 携帯で風花に直接連絡を取れば!」
ポケットというポケットを漁るが携帯が入っていない。
どうやら、母さんが他の場所に移したようだ。
俺は自分の部屋のどこかだろうと見当を付け、辺りを見渡す。
机の上、ベットの上、引き出しの中、思い当たる場所を探しても全然見つからない。
「ちくしょうどこだよ!」
俺が部屋中を荒らしているとようやく母さんが起きた。
「どうしたのよ大地!?」
母さんは俺の行動に驚き大声を出した。
でも、そんなこと今は気にしていられない。
早く風花のことを、風花の生死を聞かないと。
「母さん! 風花は! 風花は生きてるか!」
俺がそう聞くと母さんは困ったような顔をして俺から顔を背けた。
その行動が俺に結果を教えてくれた。
あれは決して夢ではなく、ましてや幻でもない現実の事実だということを……
「そうか、風花はやっぱり死んだんだな」
「そう。風花ちゃんは死んだのよ」
俺が確認のために口に出すと、母さんは観念したように答えてくれた。
「俺が……俺が風花を……」
「ちがう! 大地のせいじゃない! 悪いのは信号無視をした相手の運転手よ!」
母さんは俺を慰めようと俺を弁護してくれた。
でも、今そんなこと言うのはやめてくれ、そんな言葉は今の俺にはただのきれいごとにしか聞こえない。俺は自分の過ちを他人のせいにしたくないんだ。
確かに、法律で言えば悪いのは100%信号無視をした相手の運転手だ。
だけどそれは俺がもっと周りに気を張っていて、信号だけでなく左右もちゃんと確認していれば回避できたはずの事故だ。
責任すべてを相手に押し付けるのは簡単だが俺はそんなことはしたくない。
大切な幼馴染を殺してしまった罪は俺もしっかりと背負うべきなんだ。
それから父さんが帰ってきて俺たちを止めるまでの間、何時間か母さんとの口論は続いたが、結局俺は自分の意見を変えることはなかった。