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最強先生  作者: 兎原 月彦
通り魔編 表
11/15

あっさりと


 阿田内は、大曽根慧おおぞねけいに会うために、例の、保健室前にある花壇のところにやって来た。


 が、花壇は散々な荒らされ方をしていた。

 土が掘り返され、ほとんどの花は、土に埋もれている。


 保健室の方の入り口から、女性保険医である山神が現れた。


「どうしたんです? これ」


 阿田内は慌てて説明した。


「ぼ、ぼくのせいではないです。

 来たときにはこうなっていました」


 山神は笑う。


「分かってますよ。でも水を上げてた子が悲しむわね」


「それは、大曽根さんですか?」


「ご存知でしたか、そう、大曽根慧さん。

 花が好きな子なんですよ。

 わたしも花言葉を教えられたりしました。

 でも一年前とは雰囲気が変わってしまって、思春期の子は、心境の変化が激しいのかしら」


 阿田内としては、通り魔について慧に聞いておきたいことがあった。

 ならばと、山神にも尋ねることにした。


「山神先生は、通り魔について何か知っていますか?」


「通り魔ですか?

 噂されてる程度のことしか知りませんけど。

 あぁそっか、先生もしかして避けられてます?」


 阿田内の心にぐさっと来たがその通りだった。

 山神はけらけらと笑う。


「仕方無いですね。

 阿田内先生に警戒してる先生も多いみたいですし。

 何より、通り魔事件は学校側もあまり触れたがりませんから。

 分かりました、説明しましょう」


「…お願いします」


「通り魔事件というのは、通り魔が生徒を襲っている事件のことです。それが先生まで襲いかかったのは、今年が初めてかな」


「今年? 去年もあったんですか?」


「ええ一時期だけ。ちょっとした事件で、新聞にも載ったんですよ。

 そのとき、真っ先に、大曽根さんが疑われてましたね」


 阿田内の脳裏に思い浮かぶ言葉があった。


--でも、それは伝統で、昔から行われてることだよ。


「まさか、大曽根さんもイジメを?」


 山神は頷く。


「部のこととは言え限度を超えてたとか」


 阿田内は、これまで得た情報で概ね理解を深めることが出来た。


(知れば分かりやすいピースの配置だ。

 その配置を導く、中心となるのは、おそらく)


 ちらっと阿田内は花壇を見る。

 すると、まだ花の中に押しつぶされていない花があるのを見つけた。

 紫の花である。


「山神先生、この花は?」


「リンドウですね。花言葉は確か」



 * * *



 弓子は、学校の二階にある廊下を歩いていた。

 するとスマホの音楽鳴り取るとメールが届いていた。非通知だ。

 

 ”窓の外”


 とある。

 窓というと廊下の窓しか無い。

 恐る恐る見下ろすと、フードを被った人物が、駐車場に立っている。


 瞬間、弓子は走っていた。

 あの子に会わなければならないと確信していたからだ。

 階段を急いで降りて、靴を履いてから外に出て、駐車場まで回り込んだ。


 駐車場には、フードの人物の姿は見えない。

 さすがに悠長な足取りだったか、と思った矢先、フードの人物の背後が遠くに見える。

 フードの人物は、学校の校門とは別にある、入り口から出て行った。


「待って!」


 追いかけて、学校の外へと向かう、そしてまた見失う。

 更に先の十字路で、姿が見えて、これを追いかける。


 先へ先へと誘われる。

 

 いつの間にか、人気の無い、雑草が生える公園にやって来た。

 錆びついた鉄棒が異様に気味が悪く、弓子は寒気を覚えた。


 ただそれよりも、立ち止まるフードの人物に注目する。

 フードの人物は被っていた覆面を取った。

 出てきた顔は、大曽根慧であった。


 弓子は大して驚いていない。

 

「どうしてこんなことするの?」


 そう先に口走ったのは、慧であった。

 あ、となり、弓子は口を閉ざす。

 その様子に不満気なのは慧である。


「分かってる。あの男のせいでしょ?」


「男ってぇ、荒井先生のこと?」


「あたしも同じだった。あたしも、あの男に教えられたの。

 おかげで強くなれた。

 あたしをイジメていた連中を排除できて、せいせいしたよ」


「どうしてぇ、わたしに酷いことをしたの?

 先輩だって同じようにイジメを受けて、

 痛みが分かるはずでしょ?」


「痛みが分かる? 分かるわけないじゃない。

 被害者でも加害者でも、どっちにしろ他人なんだから」


「……」


「怒ってるの? 待ってよ。

 もうちょっと話しさせて。

 こっちはさぁ、邪魔なやつを排除して、やっと立場が変わったの。

 被害者なんて損な役割じゃない。

 あたしがリーダーだ。

 なのに、やって来たあんたはメキメキと成長していった。そりゃ焦るよ。

 また逆戻りの被害者になるんじゃないか、て」


「わたしはぁ、何もしなかったよ」


「猫被らないでよ!

 あんたがどんだけ才能あるかぐらい分かってる。

 だから怖かった。

 追い出したかったの。

 もしあの男が加担したらどうしよう、そう思いながら追い込んでて。

 案の定、あの男が加担して、この有り様だ」


「……どうしたいの?」


「ふふ。そんな怖い顔しないでいいよ。

 敵対ってわけじゃないの。

 そう、協力って方向もある。

 あたしは分かったの、この状況を生み出したのは、あの男ただ一人だって。

 あたしたちでいがみ合って戦うのは損でしょ?

 だったらあの男を倒す方が筋じゃない?」


 弓子は、ふぅと吐き出しながら下を向いた。

 それから顔を真上に持ち上げ、見下すような目をする。



「それは無理」


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