ノノミヤアカネ
シロとは別視点になってます
「おい、野々宮テメェさっさとヤレヨ」
「うわっタクひでぇの」
「早くファミレス行こうぜ」
耳障りな声が遠ざかり静寂な夕暮れの教室。少しやせ細った体躯に長い前髪、怒ってるように見えることがしばしばある釣り眼。お世辞にも可愛いとは言いがたい容姿それが私だ。
他に女子がいない時や真面目な奴がいない時は私は良く男子達に苛めを受けていた。切欠はわからない。
適当に学級委員に選ばれてそれらしい行動をとっていたら一部の男子の癪に障ったのか、こうして苛めを受けている。
私が美少女だったらきっとイジメがおきてもイケメンが助けてくれたかもしれないだろうけど現実は非常だ。幸いにも女子の間ではさほど悪い扱いはされていなかった。もっと苛められる対象がいたからだ。
女子間の苛めは度を過ぎていてうつ病になったり自殺する子も全国的にみたら少なくは無いだろう。
直接的だけど陰湿さが少ないだけマシだ。
土日はアキバに出向いて漫画やゲームを買う日々、BLやGLまで幅広くジャンルを買いあさってる私は現実の男なんてクソだと思いつつ家で読み漁りゲームをして過ごす日々。
夏休みなんてずっとゲームし続けてて友達から遊びの誘いなんてきたことがない。そもそもメールアドレスなんて交換したことも殆どない。両親は海外出張で家には私しかいないやりたい放題である。
ただあの日、ネット通販があるのにわざわざ買いにアキバへ出向こうと思ったのか今となっては分からない。
ファンタジーモノの小説を買いに出かけて横断歩道の前に立っている私。イヤホンをつけ好きなアニメのOP効きながら雑音を消す大衆の中にいるのにシャットアウトできるイヤホンという発明は素晴らしいと思う。ふと視線を横に向けるとクラスメイトの男子達が近づいてくる。
夏休みのこんな時にアキバに通ってるのを知られたら嫌だし早く信号が青に変わるのを待っていた。
ここの道路は中々変わりづらい車の交通量も多く先月も事故があった位だ。
不意に、そう不意にだ。
何かが後ろからぶつかり私は前に押し出される。
あ、っと声がもれる、どうやらクラスメイトの肘が私にぶつかったのだ。
倒れこみそうになるのを踏ん張るけど視線の先にはトラックが――
そこから私の記憶はない、ただ最後に聞こえた言葉は
「お、俺達見てましたこいつ自分で前に出たの」
気づいたら私は人間辞めていた。吸血鬼ではなく竜人だけど。
転生とかいう奴?ちゃんと把握できるようになるまで3年はかかった。
言語が日本語じゃないせいでまずは聞き取るところから始まった。リアルスピードラーニング状態で過ごしてたら、この身体の脳みそは幼女らしく飲み込みが速く共用語と竜人種族語を直ぐに覚えれた。
リアルにいたら引くくらいの赤紫色の髪に金色の瞳、そして人間じゃないと分かる竜の角に尻尾が生えてる。3次元から3次元に転移したというより2次元の世界に着たような感じでアニメキャラをみてるようなフィルタリングされた感じでありがたい。
お世辞でもなんでもなく幼女でもこの身体の可愛らしさはぱないのう。
言葉を覚えてから知った事はここが竜人種族が統治してるアーレス帝国。
東の大陸タカマガハラ全土を治めてる大国の一つだ。タママガハラって高天原の事なの?
この国に生まれてよかったと思うのは日本文化が広く伝わっている点だ。服も和風が多く武器も日本刀とかもあるし城も日本の城に通じるものがある。何より日本食がある、ご飯がうまい。
だけど日本風過ぎて異世界にきたってのもあって物足りなくなることもあった。まぁ自分自身がもろファンタジーなんだけどね。
しかも自分の立場が仰々しいもので第三王女にして第七位王位後継者らしい。冴えないJCがお姫様になっちゃうんだから驚きものよ。
身体能力も物覚えもいいから才色兼備、文武両道の美少女お姫様の誕生だ。中身は14の子供だけど主観時間は17を越えるむしろ大人びてて処世術も備えてるから色んな人に愛されていた。
ただやり過ぎた事には気付いてなかったけどね。
私は野々宮茜改め、アカネ・ロートフェルト。
エルフとか吸血鬼とか獣耳っ娘とかとお近づきになりたい元14歳女子中学生だ。
私の家族は沢山いるが実兄といえば第四位王位後継者のレイヴン兄である。
堅物を絵に描いたような人物であり年齢のわりに老けてる気がする。私の事を大事にしてくれてるのし私も好きだけどね。ショタにお兄ちゃんされると変な意味でぞくぞくするわぁ。
レイヴン兄が10歳になり学園に通うらしい。学園…学校……うっ頭が。
「学園って帝国の学院?」
「いや、中央大陸のクロノス王国の学園だ」
どうやら中央の学園って可也優秀なのが入るとこらしい多種族国家らしいから色んな種族が集まるとか…学校ねぇ。今の私なら下手にいじめなんてしてくるやつ少ないだろうし気になるかな。
優秀な一般生徒枠もあるけど大抵金をつんで貴族とかの社交場にもなってるらしい。今のうちに外界のコネをつくろうって事だ。
「レイヴン兄、私もついていっていい?国外みてみたいし」
トラウマが若干残るけど見学位ならしてみてもいいかな?他にも日本テイスト以外のファンタジーをみたいわけでして、あっさり承諾をえたのは驚いたけど……。
王族二人もなるとレイヴン兄に分け与えられてる第四騎士団の団長と数人の付き添いがついての旅になった。私?第七騎士団はまだ未編成なのよ。
炭鉱都市のドワーフにミスリス製の武器を作ってもらってから王国内にいくため本来のルートとは別のヴァイスカルト領の港に船を停泊する事になった。
船も前の世界に比べて古くて遅くて更に揺れたけど今の身体だと船酔いとかならずにすんだ。三半規管がしっかりしてるからかしら?
2週間近くの船旅に少々飽き飽きしたものの、第四期師団長のトールマン直々に手合わせしてもらったりしてたから結構時間は潰せた。シャワー浴びたいけど水がない!と嘆いたら水氷魔法の魔法使いが水を補充してくれる魔法って便利だわぁ…。
おー、なんというか海外ーって感じ、白い建物だらけじゃないエーゲ海な所だった。この世界じゃ汚水垂れ流しとか少ないからどこも海は綺麗だし観光名所って程でもないのかな。
そこから馬車を手配してさほど時間がかからない距離にここの領主が住んでる屋敷に到着した。
三階建ての庭付きでファンタジーを感じる洋風なお屋敷。玄関にはずらーっとならぶメイドの姿。
(おぉ、MEIDOさんだ生メイドさんだアーレスじゃ家政婦さんって感じでメイド服いないんだよねーああ、アキバの象徴メイドさんしかもこっちはガチだし若い子もいるしグッジョブ。)
蜥蜴人科の庭師もいた。トールマンの古い知り合いだそうで後で伺うと言ってから作業を再開する。自分、不器用ですからとか言いそうな人だなあ。
「ようこそ、我がヴァイスカルト領へ」
眼鏡のインテリ風だけど身長190cm位はあるかな?飄々としてるけど可也がっちりとしてて絞り込んでる感じの筋肉、人間の身で男できる、と思う。
他愛もない社交辞令が続く中退屈そうにしてる私を見てインテリ眼鏡ことクロノワールがメイドに何かを伝えたらしくメイドが部屋を出る。
「お姫様が退屈してらっしゃるようなのでうちの長女を呼ばせていただきました」
女の子か、可愛いかなぁ、でも普人種族の女の子はちょっと期待外れかなぁ。
こう、もっとファンタジーなのを見たいしね。
コンコン
と控えめなノックを響かせ鈴の音のような可愛いらしい声で『失礼しますのです』とおそるおそる女の子が入ってきた。
あ、可愛いなーと思ってたら私と対面する形で父親の隣にちょこんと座ってやっと気付いた。
フオオオオオ!?エルフ!?エルフナンデ!?
恥ずかしがりやさんな感じの銀髪碧眼の真っ白お肌の可愛いエルフっ娘がでてきたじゃないですかー!
この時は私はハーフエルフって全く気付いてなかった。この世界のエルフはもっと耳長いらしく後で奥さんみてやっと気付いたし。
私の事じーっと見てる。もじもじしてて可愛いなー顔がほっこりしちゃう。
にこにこしてエルフっ娘ちゃんみてたら照れたのか顔赤くしてお父さんのズボンを指でつまんでる。
まったくようじょは最高だわっ。
パパさんに自己紹介されたのでフレンドリーに挨拶してみたった。
あっちは精一杯丁寧にたどたどしく挨拶してる仕草が更に可愛さ引き立たせてるいいわー和むわー。
言葉きいてて気付いたシロエールちゃん、ですっこだ!なのです可愛い、どこかの駆逐艦みたい!
思わぬ出会いに私の尻尾は有頂天!シロエールちゃんの視線が私の尻尾の動きに追従してた。御譲ちゃん尻尾に興味あるのかい?
恥ずかしさというか慣れてなさが出てたし個々で堅苦しい所から出してあげないとシロエールのパパさんにちらっと視線をむけたら微笑んできた。これはOKということですね。
「ね、シロエールさん私とお話しよっ」
私の提案にびくっとするシロエールちゃん。おろおろしてるとパパさんの援護射撃もあって
もじもじしながら承諾してくれた。私くらいの年齢の子だったら普通生意気というかやんちゃなのが多いかなーと思ったけどさすがお嬢様な感じでむしろ引っ込み思案さんに見える。
部屋から出るとどこでお話すればいいのかな?って感じでうろうろし出した。
あー、癒される~。よし、私が選んであげよう!たしかここの庭にテラスあったはず。
ぐいぐいーっと戸惑うシロちゃんを尻目にれっつごー。
対面にすわる?とんでもないこういう時こそスキンシップ!お隣にぴとーっと並んで座っちゃう。
さーってエルフ幼女をどうやって口説こうか、彼女は殆ど屋敷から出たことがないらしいからうちの国の事とかこれまでの旅の事をラノベ風に物語化して話してみた。前世じゃラノベ読み漁ってたし作文は得意な方だったから結構面白おかしく話せたとおもう。
すっごい食いついてきてる。眼輝かせながら次は?次は?と絵本を読んでもらってる子供のように少しエルフおみみが動いてるくらい食いついてきた。無垢でかわいいなあもう!もうすりすりしちゃうー。
幸せ絶頂タイムの最中に私の意識は途切れた。
眼が覚めるとどっかの倉庫みたいな感じの密室におしこまれてた。周辺は木造で火の変わりに蛍石のカンテラがぶら下がってる。全体的に揺れているのを察するとここは船の中だ。
シロちゃんが心配そうに此方に声をかけてくるこの子を不安がらせないようにしないと。
試しに薄い木造なら私でも壊せると思って思い切って壁を蹴ってみた。すると木造の癖に金属ばりの硬さで私の蹴りを跳ね返してきた。ナニこれ魔法?
ここって幽閉とか投獄に使う場所ってのは間違いないわ。
どうやらスタンガンみたいに魔法つかわれて気絶させられたみたいシロちゃん目ざといね。
ああ、体育座りしちゃったよこれ絶対怖がってるよね?不安がってるよね?
ここはお姉さん(中身的な意味で)が落ち着かせないといけないわね。それに、これ絶対私が目的だよね迂闊だもしかしたら他の王位後継者の差し金もありうる。私類稀な才女でーすアピールしまくっちゃったからなあ……。
とりあえずぎゅーしちゃおうぎゅー、落ち着くといいけど。
そんな事してたら扉があいて、ファンタジー溢れる二人組みがきた悪い意味の。
豚頭人科と狼頭人科とか…エ○同人誌ご用達の生物じゃないですかぁ。
いやいや、流石に5歳児いくかいかない位の幼女相手にそれは―――
その考えは即却下した、あの豚の眼はガチだあれはロリペド変態野郎の眼だ。
こっちは刺激せずに狼の方に話しかけよう。
「知らねぇなぁ、俺らは旅費と小遣いを貰ってるだけだからなぁ」
あ、こいつアレだゲームとかにいるよくベラベラ喋るモブ雑魚だわ。
聞いて無い事すら簡単に喋ってくれるからとりあえず仲間は依頼主あわせて10人って所か。
まいったなぁ、海の上だとすると逃げるのは中々難しそうね。
「ブヒヒイッソロソロイイカ?」
あ、この豚ヤル気だ良く分かってないあどけないシロをみて興奮してやがる。
コイツ純粋無垢な子に乱暴してレイプ眼とかにさせるのが絶対好きな下種だ。
幸い狼にはそっちの気はなかったので部屋をでていった。
え、大事な商品だから手をつけんじゃねえとかそんなフラグ一切なし?
がちゃがちゃとズボンを脱ぎだすオーク。同人誌とかエロゲとしてみる分には良いエロ材料だけどやれる身になりそうだとここまで醜悪で絶望感を感じるとは。
パンツ一丁になってさらに肩パッドとか外してる時にシロちゃんも違和感を感じたのか直感的に何かを感じたのか怯えだした。この子を絶対護ってあげなきゃ!
チャンスは一度キリせっかく最大の弱点曝け出す気なんだから之しかない。
私のマナを脚部に、足の裏に集める。この際この危機を抜け出すのが最優先だありったけ注ぎ込んでやる。
「我が盟約に従い、炎よ我が足に集え、全てを焼き尽くして、灼熱よ喰らいつくせ」
豚野郎がパンツをおろした瞬間に私はいわゆるヤクザキックの要領で前かがみで脱いでたからぎりぎり届く高さの股間にめがけて足を蹴り出した。
「業炎脚!」(醜悪な汚物を曝け出すんじゃないよこの豚ぁ!)
ぐしゃぁ! と足から柔らかいような硬いような物体を潰す感覚があった。
追い討ちをかけるように ぐりゅう! と足を捻らせてゴールデンボールも片方つぶしてやった。この靴後で廃棄処分だわ。
アヘ顔になって泡ふきながら ぶひーぶひー と泣き喚き悶えてる。流石男の最大急所今の隙にシロちゃんを連れて逃げよう。
ここで油断しきってたのがいけなかった、オークを舐めきってたんだ○ロ同人誌でもそうだったじゃないか凄いタフで女騎士を捕まえて襲ってたじゃないか。
気配に気付いて振り向いた瞬間髪の毛掴まれてた。眼が完全にアレだ人殺しの眼ってこんな風な感じなんだなとすんなり思うくらいの殺気だった。
瞬間、目の前が真っ暗になって身体が吹っ飛ぶ、膝を顔面にくらったんだ。
最初は何がなんだかわからなかったけど行き成り感覚が遅れてやってきたかのように襲い掛かる
痛い、痛い痛い痛い痛いイタイイタイ
上手く呼吸ができない。鼻血がどばどば出てて口の中もきったみたい。
血が呼吸を遮るそれ以上にこんなに痛いと思った事は初めてだ。
一方的な暴力は加害者にも有る程度ストレスを与えるものだ、よほど切れてる奴くらいしか本気で殴ったりはしないだろう。だけどこの豚は別だ自分の急所を燃やされ潰されたんだ殺す気満々だったんだろう。これ以上にないってくらい本気で膝蹴りを喰らったんだ。いくら丈夫な身体だからってこれはきつい、追い討ちくらったら死ぬかも…まだ…転生して間もないのにここで私の冒険は……。
あれ?痛みが殆どなくなった。呼吸もしやすくなってて身体が軽いもう何も怖くない?
眼を開けるとシロちゃんの手から暖かい光が溢れてて私の傷を癒してくれてる。
あ、これ回復魔法だ。怯えながら少し泣きそうになりながら私を癒してくれるやばい天使だわこの子。
話しをきくとどうやらあの後豚野郎は声に集まってきた仲間達に連れてかれたらしい。
一難はさったけどまたここから脱出する手がなくなった。どうしようか…。
このままだと奴隷とかにされてどっかのくそ貴族とかの慰みモノというルートもありうるし。
さっきの豚のせいでシモネタばかり浮かぶわね…。
「大丈夫ですよ」
シロちゃんが単なる励ましや慰めじゃない何かを決意したかのように私にいってきた。
何だろうこの子の自信は、出られる術を知ってる確信してるどういうことだろう。
「帰れるの?」
私の簡単簡潔な問いに彼女は頷き一つの鍵を取り出した。
鍵?確かのこの世界って鍵魔法とかいう珍しい魔法があるらしいけどここには鍵穴なんて
『汝、我が刻印を刻みし地への扉を開かん』
彼女の手には錠前があった、違和感あふれる錠前に鍵を差し込むと
私達の前に扉があった。
しろえもーーーーん!?
アイエエエ、○コデ○ドア!?ドコ○モド○ナンデ!?某青狸が私の脳裏に浮かんだ。
シロちゃんが錠前をカチンッと開くと扉が音も無く開いた。
なにこのチート魔法ぱないわーと思ってたらシロちゃんがくいくいと裾をひっぱり
「内緒…です」
指をお口にあててしーっとしてる仕草がイチイチ可愛いな
扉をくぐると其処はシロちゃんのお部屋だった。
アカネは異世界人でした。
煩悩全開だなぁ