ロードアクティビティ
あれからというものの私は既に光霊魔法中級までマスターしてしまったのです。
中級というと一般的な冒険者で食い扶持が見つかるくらいの能力があるって事だそうでそろそろ自重すべきか悩むのです。
力は大いに振舞い誇示し上に立つのが世の中らしいのですが色々面倒事が多くなるから必要な時以外はこっそりしておくのが一番だと知識が教えてくれる。
偉そうにふんぞり返ってる人より普段大人しく優しい人がここぞという時颯爽としてるのが受けがいいというけど其れは計算でやったらダメなんじゃないかなあ……。
街並みを眺めていると通りからこちらを見ている同年代の子がいたので手をふってみる。
此方を見てたのか大きく手を振り替えしてくれます、元気がいいなあ。
実のところ今 屋敷内で話題なのは第二子が産まれるということなのです。
まぁあれだけしていればというものでお腹ですぐ分かりました。
当初気付かなかったママは一人産むとどんどん太っていくという話しを鵜呑みにしてショックをうけてましたです、その後すぐに妊娠だとわかったのですが。
やったねシロちゃん家族が増えるよ。
お昼を過ぎた頃に破水がはじまったのです。そろそろ産まれるらしいので私も皆のいるリビングで待つことにしました。ただ待つというのは時間の流れがゆっくりしてる感じになりますね。
一応私は本を読むことで時間を潰していますのですが。
『ワールドマップ 世界の名所』
昔の知識では補えない部分を補うのが私の勉強なのです。
特に気になるのは南の大陸西側にある森守種族の国、アルテミス大公国。
世界樹と大森林におおわれた自然の要塞。世界樹からは世界が一望出来るほど高いんだって。
人々は世界樹の中に居住区があって木の中なのに幻想的な光で輝いてる。
エルフは女性しかおらず男性の居住は認められていない。
但し理由あり認可を得て許可証を発行して貰えば宿をとっての滞在は許可されている。
本を読んでるうちに産声が聴こえましたが2度目の出産は予想外な出来事でした。
「オギャア!オギャア!」
「産まれたか!?」
「「オギャア!オギャア!」」
一つの産声が聞こえ産まれたと立ち上がった時もう一つの産声が聞こえたのです。
「声が二つです?」
部屋の前まで行くとやっぱり声が二つあるのがわかったです。
一瞬錯覚かと思われたけど、どうやら双子だったのです。
「旦那様、男女の双子で御座いますよ」
助産婦が清潔な布で巻いた二つの赤ちゃんを抱えながらパパに見せている
男の子と女の子の両方というのはある意味嬉しい気もするけど
だらしなく笑う父親は遺憾なく『親馬鹿』っぷりを私に見せ付けてくる。
急に私から二人へ好意が移った気がして少しだけむっときてしまったのです。
だけどその考えは悪く無いと直ぐに思いなおし首をふるふると振るのです。
私は今からお姉さんになるというのになってないですね反省しませんと……。
男の子の方はゴルディ、女の子の方はシルヴィアと名付けられました。
家族が増えるという事が大変なのを知ったのはそんな遠くない事だった。
昼夜問わず二人はわんわん泣くのだ、お願いして部屋を遠くにしてもらう程です。
魔法に集中できないし真夜中に泣かれると眠れもしないのです。
周囲曰く二人いっぺんは可也大変だそうな。
家族が増えてから数ヶ月
早朝、欠伸を堪えながら私は庭に足を踏み入れるのです。
パチンパチンと庭に響く鋏の音。
我が家の庭を整備している青いフォルムで2m近い蜥蜴さんが私に気付き軽く会釈をしてくれる。
うちの庭を管理している庭師の竜人種族の蜥蜴人科、ローエンです。
はっきり言うと初対面だと正直怖いです亜人知らない子供なら泣くよきっと。
ぎょろっとした爬虫類の口大きくあけたら私の頭くらいばぐっとできそうだし、パパの後ろに隠れてこそこそ見てる私の姿は両親とローエンにとってはむしろ微笑ましいものだったとか。
わふー(和風)テイストという格好で片方の眼は眼帯をしてるのです。
パパとママのパーティメンバーだったらしく居合いの達人らしいのです。
最初に会ったときどうして冒険者を辞めて庭師になったのか聞いたらこう百人が聞いたら百人がそう答えるだろうイケメンで渋いおじ様ボイスで一言答える。
「膝に毒矢を受けてしまってな……」
毒が塗られてるのに気付かず、気づいた時には解毒魔法でも完治する事はできなかったらしいのです。何故か知らないけどローエンが言うには膝に矢をうけて引退する傭兵は可也いるとか。
どんだけ傭兵さんは膝に矢をうけるのですか。
余り喋りたがらないと思うけど話しかければ受け答えはしてくれるし色々教えてくれる良い人ですよ。
朝、朝食を食べてから初めてのお出かけをする事になりました。
ゴルディとシルヴィアの『マジカ』を作りに役所に行くことになったのです。
実を言うと屋敷の外に出るのは私は初めてだからドキドキです。
あ、赤ん坊の時に作りに出てるのかな?二度目?
マジカ、正式名称『マジックカード』はるか昔に開発された身分証明とお金の支払いを可能にした今となっては一般市民にも普及されているアイテムです。
お店にマジカを読み取る水晶を通して登録されている口座から引き落としされるシステム。
マジカは登録者のマナの波形を記録する(総ての人種のマナは同一波形は存在しない為持ち主以外が使うことが不可能)為、他者の不正利用は出来ない。
ちなみにシロエールはクロノス王国銀行本店の口座がある。(クロノワールが開設しておいた)
お小遣いと称してある程度まとまった金額ははいっているので足りなくなる心配はない。
この優れたマジカ、人工アダマンタイト製だだからこそ可能である。
人工アダマンタイト、遥か昔ガーランドの仲間の錬金術師が彼と協力して開発このカードを作成したのが起源とされている。本当のアダマンタイトとは強度は遥かに劣るらしいけどマナを記憶、通すといった点では本物に近い性能を発揮し低コストで作れるため今にいたる。
玄関前に用意された馬車は貴族向けの箱馬車で白い馬が特徴的。白いものを見るとちょっと嬉しい。
間近で馬を見るのも初めてブルルと息をはきしなやかな体つきをしているです。
「お馬さん撫でてもいーです?」
「構いませんよお嬢様」
お馬さんが頭と下げて撫でられる位置まできてくれる。おお、凄いおりこうさん。
さらさらでぽかぽかして乗ってみたいけど叶わずパパに抱えられ馬車の中へと運ばれる、無念です。
御付のメイド2名と家族で馬車の旅(近距離)
二人はママに抱き抱えられ私はパパの膝の上に座りながら窓の景色を眺めている。
街並みを見ると綺麗な感じで活気に溢れてる。パパの働きでこういう街になってるんだとしたら少し鼻が高くなる。馬車を見かけて手を振る子供と眼があったので笑顔で手を振り替えしてみる。
何故か顔が赤くなってたけど何でだろう。
「おぉ、これはこれはクロノワール様グレーシア様お待ちしておりましたよお嬢様もお元気そうで」
「やぁロギュー今日はこの子達のカードを作りにね」
お役所に到着すると仰々しく役所の偉い人が直々に迎えにきて挨拶をしてくる。
恰幅の良い男性で名前はロギューさん人は良いらしく部下からの信望も厚いらしいです。
他人と会話するのは緊張するしまだ怖いので後ろに隠れてこくこくと頷くだけの私。
VIP待遇で個室に移動する事に周囲の視線がふりかかってくる。な、慣れるといいなぁ……
専用な魔法具と人工アダマンタイトのカードで登録を開始しマジカの作成が始まるのです。
仰々しいかと思ったけどあっさり登録完了して発行を開始したのです。
カードをせっとしてゴルディの指を押し当てるだけで読み取り完了。
あっさりしてたので拍子抜けなのです……発行しあがるのが少し時間がかかるだけだとか。
ゴルディとシルヴィアのほっぺを小突いたり指を差し出して握ってもらったりしながら時間を潰してたら急にざわつきが聞こえてきたのです。
何やら役所のロビーでなにやら揉め事があったみたいです
ゴロツキ達が滞在の不受理に文句を言ってるらしい。
きっと犯罪スレスレか軽犯罪程度を犯してるんだろうなぁと予想がつくくらいテンプレな悪人面とその態度と言動でした。
「▲■▲▲▲▲◆◆◆―――!」
何言ってるか分からないけどきっと罵声なのはまちがいないですね。
メイド二人に私達を預けパパとママが階段を降りて騒いでる
「やぁやぁ、君達余り騒ぎを起こすのはやめてくれないかな?」
「あぁ?誰だてめぇ、エルフなんて連れやがって何様のつもりだ」
半獣種族の狼頭人科が眼クレしながらクロノワールに近づく
「俺か?俺はここの領主だけどな。ま、話し聞かずともこういう対応取る奴をうちに入れたくはないね」
大げさなジェスチャーを取りながら煽るクロノワール。
血管を浮き上がらせながら巨体の豚頭人科が襟元を掴もうとした時、豚の頭は床につきささってびくんびくんと痙攣してた。
多分みただけで200キロくらいありそうな物体を簡単に宙に浮かせて沈めちゃったのだ。
「あちゃー、床に穴あけちまった。すまん、後で修理頼んでおくわこいつらから」
ますますゴロツキ達を煽ってくクロノワールにごろつきたちは縮み上がりつつちらちらと周囲をみる。
周囲は既に警戒し武器を何時でも抜けるように構えてる警備隊がいる。無駄な抵抗と悟ったのか、お手上げだといわんばかりに手を上げていくゴロツキ達。
終わったかな?とあっけない幕切れにほっとしているシロエールの予想とは裏腹に、山刀を取り出し近くにいたグレーシアに向かって人質にしようと襲い掛かった中肉中背の普人種族の男の姿が映った。
あっとなって身体を強張らせ声をあげようとしたシロエール。
「あらあらまぁまぁ」
だけど、軽々と優雅にワンステップで男の横へと位置をずらし、レイピアを抜こうと動作をしたのまではわかったのですが其処からはまるで映像が途切れたかのような一瞬の出来事でした。
トンッ
と一突き耳の穴からレイピアを突き刺してました。
ビクンビクンッと痙攣して眼は上へ裏がえ汚いアヘ顔を浮かべながら泡をふいている。
スッと抜いた瞬間、まるで糸切れた人形のように膝からすとんと折れて床に伏せる。
少し困ったようにだけど可愛らしい笑顔を向けるグレーシアを見て手を上げてまいったフリをしていたゴロツキたちは本当の意味で敗北したのか全員膝をついた。
全員御用となったゴロツキ達は警備隊の馬車に乗せられ檻へと移動する事になる。
周囲の大きな歓声に応え悠然としてる両親の姿は安堵と興奮を私の心に与えドキドキさせる。
私の両親はこんなにも強いんだと、私みたいな子供じゃまだまだ出来ない事が多いんだと分からせてくれる。
特に魔法使いは魔法だけではダメだと良くわかったのです。
後、子供の私には人の死体は刺激が強すぎて当分の間お肉が食べれなくなりましたとさ。
シロエの活躍はまだ先になりそうですね 親はつよし