表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/59

こんなに月が綺麗なのだから~the third day~

少々R-15成分混じってます。(グロ的な意味で)

何気に40話になりました

 ホテル2日目に入り誰もが寝静まっている深夜――。


 吸血種族ヴァンパイアはホテルの屋上から空を見上げる。

 この間、何時もより多めに飲んでしまった血のせいか身体が火照っている。

 血と今宵で感覚が非常に敏感になり普段の何倍もの範囲を感じ取っていた。

 すると、ホテルのある岸辺とは逆方向、離れた海岸に異質な気配を察知した。


「この地域は平和じゃときいたのだがのう?」


 どうやら招かれざる客が来たようだ。

 すぐ下にある部屋へ戻り、ズシリと重量のある棺桶は抱えなれている。

 犬耳メイドの耳がピクンと反応した。

 気配で私と分かると元に戻った。

 皆の寝顔を確認してから、ベランダの手摺りの上に立ちホテルから身を投げ出した。

 

 蝙蝠の様な何かが彼女の周りに集まりマントを形成し滑空する。

 

 風を切りながら空を舞い、対岸の上までたどり着く頃にソレ等は海から這い出るように現れた。

 ソレが上陸すると同時に棺桶から手を離しドスンっと砂浜に棺桶が突き刺さる。


 ギャギャギャと、一緒に這い出てきた魚に手足が生えた様な生物『サハギン』達が唸り声をあげる。

 ソレが棺桶に気づき歩みを止めると同様にサハギン達も歩みを止めた。

 吸血種族ヴァンパイアの少女は棺桶の上に着地し、ソレを見据える。


「なんじゃ、セイレーンがこのような場所におようとは、船を沈めるのが御主等の手法じゃろ?」

「ヴァンパイアフゼイガ、ワタシノジャマヲスルノ?」


 深海歌姫セイレーン

 彼女から発せられる妖艶な歌声は船乗りを惑わし無抵抗になったところを船ごと沈め虐殺する。

 一見、人間とも思える風貌だが肌の色が青く、黒白目の紅い瞳である。

 魔と人の違いは精気マナとは相反する陰気オドを内包している点だ。

 

「御主がここに来るって事は魂目当てなんじゃろう?」

「ソレイガイニナニガアルトオモウノ?」

「なら話しは早い。早々に立ち去るが良い」


 彼女の言葉にセイレーンは思わず笑いだす。

 グギャギャギャと周囲のサハギンも不快な笑い声を上げる。


「ワラワセルデハナイカ」

「ウミニハイルダケデシンデシマウヴァンパイアガ、ワタシヲトメルトイウノ?」


 ガンッと言葉を遮るようにヴァンパイアは足場にしていた棺桶の上を蹴る。

 棺が開き二重底の蓋が落ちる。中からはライフルとブレードが融合した銃剣が出てきた。

 そして少女は天を指差した。

 雲ひとつ無い満天の星空に、丸く、美しく、紅い月が大きく照らしていた。



「今宵……こんなに月が綺麗なのだから」


 彼女の真紅の瞳が輝く。砂浜に着地すると同時に銃剣を掴む。

 元来、大型の銃剣は片手で扱うような武器ではない。

 だが、ソレを軽々しく振るい少女は一瞬で間合いをつめていた。

 

 ブオンッ!――銃剣を振り降ろして豪快な風斬音を鳴らし。

 グシャァ!――サハギンの肉が裂け、千切れ。

 バキベキィッ!――骨が砕かる音が響いた。


 ビチビチと震え、噴水のように穢れた血を撒き散らしながらサハギンの頭が真っ二つになった。

 一瞬で懐に入り込んできた吸血種族ヴァンパイアをサハギン達は襲い掛かる。

 サハギンの持っていたモリや爪は彼女に届かず、逆に首や胴体を吹き飛ばすように切裂かれていく。

 ぐるりと体を回転させ、剣も勢い良く回らせた。

 10数体いたはずの取り囲んだサハギン達は一瞬で肉片となってしまった。


 幼い少女に後ずさりする残るサハギン達。

 すると、一際甲高いゲスな鳴き声があがる。

 サハギンより一回り大きく全体がおよそ3m程の大きさだ。

 上位種『サハギンロード』が姿を現した。 


「サハギンロード……上級じゃな」

「ヤリナサイ!」


 セイレーンその言葉を発した瞬間。

 

 轟音――。

 

 

 凶悪な破壊の音が浜辺に鳴り響く。

 刃の間からシュウシュウと煙が立ち上る。

 鱗が砕け、肉片を飛び散らしながら悶え苦しむサハギンロードの身体に深く銃剣を突き刺した。


 ギャギャギャアと鳴き叫び、身悶ながら暴れるサハギンロードを尻目に抉る様に銃剣を動かしていく。

 キィキィと彼女の身体から構成された蝙蝠のような物体が彼女のポケットの中から銃剣の弾を取り出す。

 

 カシャン


 蝙蝠?が器用に弾薬を銃剣に再装填する。


「爆ぜるがよい」


 再び、トリッガーを引く。

 魔法式が施された弾薬がサハギンロードの内部で爆発した。

 肉の焼けるような音が響きながらサハギンロードの身体が内部から燃え上がる。

 焼き魚の香ばしい匂いと魔物臭い異臭が入り混じり、酷い臭いを撒き散らしながら炭と化した。


「な、何なのよ吸血種族ヴァンパイアの分際でっ」


 セイレーンの指示で無理やり動くサハギンたちが一斉に囲みだしモリを投げつける。

 一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、七つ、八つ、九つ、四方八方、串刺しになっていく。

 串刺しのオブジェが完成しゲラゲラと笑うサハギン達。


 だが、平然とした顔で突き刺さったモリを抜いていく。

 血の一滴も流れず、平然とした顔をしながら持ち主へとモリを投げ返した。

 帰ってきたモリはサハギン達の頭部に、腹部に突き刺さる。

 不快な魚介類らしい眼が飛び出て臓物を撒き散らしながらサハギン達は果てていく。


「今宵はこんなに美しい月じゃと言ったろう」

「それでも普通の吸血種族ヴァンパイアじゃありえないわっ」


 傷口は蝙蝠?が其処に集まり塞いで身体へと変化する。

 服がボロボロになってるのに気付いて避ければ良かったと少し眉を顰める。

 少女は銃剣を揺らしながらセイレーンへと歩み寄る。


「まだ名乗っておらんかったか……妾の名はヒュッケ・ノクターン・シュバルツ」

「ノクターン・シュバルツ……キュウダイメシンソッ……『フウイン』サレテイタンジャ!?」


 ヒュッケは首をかしげる。

 はて、自分は偶然あのような状態になったわけじゃないらしい。

 『封印』という事は誰かがやったという事になる。

 そして、何故魔族が知っているかという点だ。

 つまり竜骨を突き刺したのは人外かはたまた従属する存在ということだ。


「では、それを誰から聞いたのか教えてもらおうかのう?」

「ズイブンヨユウソウジャナイ!」


 セイレーンは弱くない、むしろ強敵として扱われる部類だろう。

 彼女の討伐の為に中級クラスの小隊規模、約43名もの部隊を派遣するケースもある。

 しかし、ヒュッケは笑う。


「だってのぅ、セイレーン如きが妾に楯突こうとしておるのじゃからな」


 それ以上に満月夜に出会う真祖の吸血種族ヴァンパイアは圧倒的に恐ろしい存在だ。

 弱点を突けばいくら満月でも吸血種族ヴァンパイアに勝つのは難しくはない。

 逆に、弱点を用いなければ筆舌し難いほど凶悪だ。


「のう?」


 笑顔でセイレーンの目の前にヒュッケは立っていた。


 トンッ


 セイレーンは何が起きたのか理解できなかった。

 銃剣ではなく手刀が無造作にセイレーンの腹部に突き刺ささっていた。

 ドクドクドクとセイレーンの青い血が溢れている。


「アッアッアッアアアアアアア!」

「う~む、妾はやはり赤い血のほうが好みじゃのう」


 グシャァッ


 ヒュッケは無造作に近くにあった手頃な臓器を握りつぶした。

 セイレーンの絶叫が響く。

 無理やり引き抜き距離をとるセイレーン。

 ヒュッケは手に付いた血を払うように手を振る。


「どうしたのじゃ?歌うのがセイレーンじゃろう?」

「チョウシニ……ノルナァ!」


 セイレーンは歌う。

 滅びの歌を、全てを飲み込む歌を、破壊の歌を。


「クラエ、シズメ、スベテヲノミコム、ウズノナカヘ、ワレハ、ミズヲシハイセシモノナリ!『メイルシュトローム』」


  水柱が周囲に立ち上り、うねりをあげてヒュッケ襲い掛かる。

 砂を巻き上げ、岩を砕き、ヒュッケを追い続ける。

 メイルシュトロームは通常のマナを用いた魔法ではなくオドを用いた魔族の魔法だ。

 逃げつつ、再び間合いを詰めて今度は一撃で仕留めようとセイレーンの方を向いた。


 巨大な海水の塊がセイレーンの後ろで宙に浮いていた。

 更に海水は集められ、一回り二回り大きくなっていく。

 何らかの魔法か魔法具で集めているのは分かる。

 問題はそれ自体がただの海水である事だ。

 冷や汗をかきながらメイルシュトロームから逃げるヒュッケ。


「カイスイニオシツブサレナガサレタラドーナルノカシラ?」

「其れはちと予想外じゃな」


 メイルシュトロームから逃げつつ、あの海水の範囲外まで逃げるのは難しい。

 特攻をかけようとも考えたが途中で海水を叩き付けられてもヒュッケにはアウトだ。

 銃剣でメイルシュトロームの一つを弾きながらヒュッケはある事を思いついた。


「ナイテワメイテユルシヲコイナサイ、ソシタラモウスコシラクニコロシテアゲル」

「余裕そうじゃのう」


 腹部を抑えながら傷口を塞いでいくセイレーンは勝ち誇った笑みを浮かべていた。

 ふと、ヒュッケがぶつぶつと何かを言っているのに気づく。

 しかし3つの作業を同時に行っているセイレーンにはそれ以上作業を追加するような真似は出来ない。

 そろそろ海水が限界値まで溜まりそうになった。

 これで吸血種族ヴァンパイアを仕留めて契約を続行できる。

 既に勝った気でいるセイレーンに不意に痛みが走る。

 下を向くとサハギンだったモノの牙が尾に突き刺さっている。

 死体達が起き上がりセイレーンの手や腰にしがみ付き噛みついてきた。


「ナニヲシテイルノ!?ヤメ、ギャアアアア」


 ブレーキの壊れたサハギン達はセイレーンの身体に噛み付いていく。

 集中が途切れたせいで海水は落下し飛沫をあげて元に戻り、メイルシュトロームも消えていった。

 それでも死体達はセイレーンから離れない。


吸血種族ヴァンパイアは大抵、闇纏魔法サタンを使うと覚えてなかったのかのう」


 死体操作系魔法。

 闇纏魔法サタンの真骨頂であり使い手によって操作できる死体の種類や強さが変わる。

 今のヒュッケは魔物の死体すら操れたのだ。


「コンナコトデ……ガッ」


 砂から黒い何かが槍の用に飛び出しセイレーンを突き刺し宙吊りにする。

 ヒュッケのマントが砂の中に潜り込んでいたのだ。


串刺公ヴラドと命名しておるが魔法ではないぞ」


 抵抗出来ず、魔法も唱える余裕のないセイレーンを確認してから歩み寄る。

 長い時があればそのうち身体も復活すると思われるが、現状見るに耐えない姿を化しているセイレーン。


「まだ殺しはせぬ、早速知ってる事洗い浚いはいて貰おうかのう?」

「ワカッタ、ワカッタカラ、タスケ……ヒューヒュー」

 

 喋ろうとした瞬間、不意に風のざわめきが聞こえたかと思えばセイレーンの首が取れた。

 綺麗な切り口で血も殆ど出ず、だらんと力が抜け砂場に崩れ落ちる。

 何も喋らぬままセイレーンは絶えてしまった。


「今のは何じゃ?」


 周囲を見渡すが誰もいない。

 砂場に足跡もなく、ただ風が少し強くなっていた。

 セイレーンが持っていた道具も壊れている。

 どうやらレプリカに近いモノだったらしい。

 結局、セイレーンが何を知っていたのか、何が目的だったのか分からず仕舞いとなった。


「……帰るかのう」


 再び魔法で死体を操作し海へと帰す。

 吸血種族ヴァンパイアの満月の宴はこれで一幕を閉じる。

吸血種族は弱点だらけだけどその分凄い強いですね。

ヒュッケも作中で可也強いです、シロエールは別の次元にいると思うと怖い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ