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試験

試験パートは初日のみです

 天気は快晴、雲ひとつ無い蒼穹の空から日差しが世界を照らしている。

 とうとうこの日がやってきてしまった、学期末試験だ。

 この日の為に僕は必至に訓練を重ねてきた。

 今の成績は中の中、せめて上の下まであげて臨海学校組に入れればきっと良いギルドからスカウトを貰えたりするはずだ。

 武芸科魔法複合学部は実戦試験からとなり、籤引きによって対戦相手が決まる。

 そして僕の対戦相手はと言うと……。


「君が対戦相手かな?よっろしっくねー」


 彼女の名はアカネ・ロートフェルト。

 僕達初等科1年のアイドルの一人にして上位組中の上位だ。

 自分の籤運のなさを呪った。

 開始の合図が始まったと同時に僕の意識は途絶えてしまった。

 ちなみに僕は彼女のファンクラブ会員番号72である。



 今、一人の少年が圧倒的実力差のもとにボコボコにされてしまった。

 今回の実戦試験、籤運も実力のうちとされ、最終的に5回戦う仕組みになっている。

 アカネは既に4回勝ち進んでいた。


「んーっ、身体動かすのはいいけど待ち時間がなぁ」


 今の所アカネは全戦瞬殺で終わっている為、他のグループが終わるまで始終暇を持て余していた。

 エクレールも同じく全戦一瞬の決着をつけていたが彼女は空き時間をある人間の観察にまわしていた。

 

 ダイキ・トゥーサカ。

 彼の魔法の使い方はシロエールが以前ノートに書き込んでいた仮説の一つ、無属性マナを属性に変化させて全ての属性の魔法を使用する人間であるからだ。

 主人の言いつけ通り彼の様子を観察していたが、彼もまた剣技だけで勝ち進んでいる為成果は挙げられなかった。

 最後の一組の籤が決まる、アカネは結局最後まで面白みのある相手とは巡り合わなかった。

 ふと、エクレールの方をみると面白いカードとなっていた。

 対戦者の名前はダイキ・トゥーサカ、2人を抑え込み武芸科代表となった少年である。


「うおっ、メイドさんが相手かぁ、よろしくな!」


「………宜しくお願いいたします」


 ダイキのフレンドリーな態度に対して、エクレールは無愛想な態度でお辞儀をすると開始位置に立つ。

 彼はやれやれと大げさなジェスチャーをしてから子供用のサイズの剣を構える。

 これは学園側から希望者に配給されるそこそこ質の良い武器だ。

 対するエクレールはミスリル製のナイフを二つ、どちらも十分一級品と呼ばれる代物である。

 20cm近い伸長差によりリーチ差は余り無いといってもいい。


 ゆらゆらと自然体のまま身体を揺らすエクレール。

 ダイキの構え方はアーレスの剣術の一つに近い構え方をしている。

 大抵の人が見れば少しアレンジしただけのものに見えるがアカネだけは彼の構え方に心当たりがある。

 それは日本の武道である剣道の中段の構えだ。


「………」


 何かしらエクレールがぼそぼそと呟いている。

 唇の動きを最小限に、

 ナイフの切っ先をダイキのほうに向けると剣先からバチバチッと音が鳴った。


『雷鳴の槍となりて相手を貫け ―ライトニングスピア― 』


 細い紫電の槍がダイキへ襲い掛かった。

 エクレールの雷鳴魔法シヴァは第三種魔法学部でも十二分にその力を発揮できるほどにまでシロエールが育て上げてある。

 飯綱神威イヅナカムイを初めとする秘術の類を制限しているとはいえ自分達を抑えて代表となったダイキに対して真っ向から挑むよりも魔法で対抗したほうがデータが取れると判断した。

 それに対し、彼も回避体勢をとりつつ初撃を剣で打ち払い2撃目を身体を捻らせて回避し3撃目を炎の壁を舞い上がらせ槍を逸らせる等、全ての雷槍を見事に回避しきってみせた。

 エクレールは手を抜いていない、しかしダイキは見事に避けきって見せた。

 彼の魔法を調査する命をシロエールから受けているエクレールだが軽々と避けられのは予想外だった。


「うっわ、あっぶねぇなあ……」

「……随分余裕をもたれているようで御座いましたが」

「冗談、ぎりっぎりだったぞ」


 エクレールは眉を顰め、言葉の割りに平気そうな態度で再び剣を構えているダイキに対して往来の性格と子供さ故に簡単に感情を逆立てて苛立ちを感じてしまっていた。

 それをアカネは悪い癖としてエクレールの様子を見守っていた。

 一方ダイキの方はわざとおちょくるような態度をとっている。

 

「……次は外しません」


 エクレールが片方のナイフを逆手もちに切り替えつつ次々と詠唱を唱えていくと、先程の数倍の数の雷槍が宙に浮かびあがっていく。

 こればかりは周囲もダイキも驚きを隠せない。

 どう考えても上雷鳴級魔法師クラスのマナと魔法を1年生のしかも武芸科の生徒が唱えだしてきた。


「おいおい、ちょっとまてよおかしいだろそれっ!?」

「……ライトニングスピアファランクスでございます」


 第一波と一緒にエクレールも切り込む、誰もがダイキが敗北を浮かべていたがダイキもかがみ合わせのように周辺にもエクレールと全く同じライトニングスピアファランクスを造り出したのだ。


「こっちもお返しだぜっ!」

「!?」


 彼の能力は無属性のマナを他属性に変換させるだけではない。

 固有特性ユニークスキル-ラーニング-

 ダイキ・トゥーサカ最大かつ反則級のスキルである。

 一度見た魔法を再現できる為、本人は全属性を使えマナは空気中から使用するため彼の技量次第では殆どの魔法をカバー出来ると言えるだろう。

 魔法が相殺し電気が弾きあう中、二人の刃が斬撃音を交し合い他の試験とは別次元を作り上げる。


「ちっくしょっ…ええいっ白蛇のメイドは化物かっ」

「そっちこそ!出鱈目じゃないですか」


 バチバチとエクレールの身体に静電気が走る。

 ダイキが一旦距離を置くと更にエクレールの周囲に電流が走り、バチバチと音が大きくなる。


「エクレールッ」

「ッ……」


 アカネの声にエクレールが反応し、周囲の電気の流れは静まり深呼吸をしてからナイフを仕舞う。

 本気で飯綱神威イヅナカムイを使いかけてしまったエクレールは主人の約束である使用禁止を破りかけた事も踏まえ自分の不甲斐無さに溜息をつく。


「今回は私の負けで構いません」

「ソレせめて使って欲しかったかなぁ」

「ご冗談を」


 

――――

 

 教養科錬金学部、マナと魔法によりこの世界の錬金術は別次元の進化を遂げている。

 フレイヤ・ブラウニーは頭を抱えていた。

 手は休めず問題を解けてはいるがヤマを張っていた場所がことごとく外れていたのだ。

 錬金学部は学年150名、上位陣に入らないと居残り組になる。

 ペンを走らせる音だけが響く教室内で焦燥感を煽られながら回答欄を只管埋めていく。

 上位には入れなかった時を考えただけでフレイヤの胃がキリキリする。


(まだ問題なく解けてはいるんだからケアレスミスさえしなければ……)


 錬金術に関しては負けない自信があるのに一般教養に関する問題が足を引っ張っている。

 彼女は好きな事にはものすごく熱中し、苦も無く出来るのにそれ以外は辛いと感じるタイプだった。

 中盤以降から徐々にペンが所々止まりだす。

 時間が刻々と過ぎていくのに問題が解けない、フレイヤは直ぐに次の問題へとシフトする。

 錬金学部の1位の生徒は彼女の視界内にいて、悠々と問題を解いているのがわかる。

 自分の勉強を見てくれた皆、年下なのに自分より出来る武芸科の姫とかを思い出すとこれで上位いけなかったら更に恥ずかしい思いをしてしまう。

 それだけは避けたいと願う彼女は頭を小突いてから再びペンを走らせる。

 何だかんだで、何時もよりも集中できていた。



―――


 そして魔法科組の3人はというと……。


 シロエール・ヴァイスカルトは眠っている。

 ペンを走らせる音に掻き消される位、瞑想しているかのような雰囲気で静かに寝息をたて両手を膝に添えて穏やかに眠っていた。

 机の上には既に書き終わった問題用紙が置いてある。

 光霊魔法ルミナスの筆記問題は彼女にとっては知識から好きなだけ取り出せてしまうせいでただ書き込むだけの作業と化していた。

 開始してから然程時間が経っておらず、彼女がペンを置いたことに気づいた生徒達に戦慄が走る。

 特に彼女を追い抜こうと必死に勉強していた生徒の心から折れた。

 その生徒はまだ3分の1を解き終わったところである。

 夜の睡眠時間も大幅に削って彼女を出し抜いてやろうとずっと頑張ってきたのに彼女は悠々としていた。

 彼女がミスをしている可能性と自分が全問正解すればいいという考えで何とか立ち直りつつ問題を解いていく。

 シロエールの隣の席のミルクは彼女の凄さを実感しつつ自身も彼女から勉強を教えてもらったせいもあるか大分ペンが走っている。


 


 第四種魔法学部、水氷魔法イシスを専門とするこの学部の初等部2年に在籍しているリーゼロッテ・アクア・ヘルブラウ。

 彼女も2年の魔法科の頂点に立つ存在で、ゆっくり正解を書き記していく。

 ゆっくり書いてはいるもののペン先が止まる気配はなく単純に書くのが遅いだけであった。

 彼女はこのスタイルで今まで1位の座から落ちたことはない。

 故に誰も彼女の事を気にするものはおらず、2位の座の奪い合いとなっていた。




 ヒュッケ・ノクターン・シュバルツ。

 第六種魔法学部、闇纏魔法サタンを学ぶこの学部は少し特殊である。

 まず、実習を行う事が困難なのだ。

 人間の骨等を操る事が出来るこの魔法は実際にやろうとすると色々と問題がおきてしまう。

 例を挙げるなら戦場跡地でやる場合、遺族からの苦情がきた事がある。

 その為一部の魔法で審査となる事が多い。

 教室はカーテンで締め切られ、薄暗さを保っているためヒュッケも普通に試験を受けられる。

 薄暗いが故によからぬ手法を使う輩が後を絶たない。

 カンニングである。

 無論、先生に見つかれば最悪な結果になるが見つからなければ問題がないのがこの学園ともいえる。

 ヒュッケは体の一部である蝙蝠を散らし他の生徒たちを観察しながら問題を解いていく。

 然程問題なく問題を解けるのだが、ここ数年の話には完全に疎いため1~2問空欄が出来ただけで問題なく終了前にペンを置いていた。




 一部を除いてほぼ全員悠々と問題を解いていた『清楚の白蛇』のメンバーは結果をいうと、

 1位が3名、上位の上が2名、上位の下が1名だった。


「ふ、ふん私が頑張ればこれくらい当然なんだからねっ」


 先生の温情の△が無ければ中の上で止まっていたフレイヤは部屋に戻ると他の部屋に聞こえるくらい大きな声ではしゃいでいた。

フレイヤ「楽勝」(ぎりぎり

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