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試験勉強する?

 暖かな日差しは徐々にジリジリと照らす光へと変わり始め、熱を帯びていく石畳の道。

 そこに打ち水のようにかけられる水氷魔法イシスと風により、涼やかな温度へと変わっていく。

 木々は新緑を帯びていき、虫達の声が心成しか増えている気がする。

 この国の春が終わりを告げようとしているウェヌス(5)の月の末。

 もうすぐ、マルス(6)の月に変わろうとしていた。


 マルスの月の最後には学期末試験がある。

 学科順位から学園順位まで変動の起こる試験時期になると、徐々に学園の雰囲気が変化していく。

 将来の為、学園での地位の為と様々な思惑が渦巻き、ライバルを蹴落とす為の暗躍まで起こりうる時期。

 そんな中でもマイペースを貫く人たちは少なからず存在する。

 シロエール率いる『清楚の白蛇』の面々もそうである、一部を除いてだが。


「あんた達っ、勉強位しなさいよねっ!」


 一人、テーブルで教科書と睨めっこしながらノートに書き込んでいるフレイヤ。

 フレイヤは錬金術師としては目を見張るものがあり戦闘に関しても優秀なのだが、

一般教養科目にやや難があった。


「私はメイドですから」


 エクレールは全員の食事を作るためキッチンで調理をしている。

今日のお昼はシロエール希望のクリームソースがけのオムライスらしく、

器用に片手で卵を割っていき牛乳を少し加えてオムレットの準備をする。

メイドとして教育を受けた彼女は自分の成績が悪ければ主人に皺寄せが来るとして、

上位成績をキープ出来るよう勉強はしっかりとしている。


「だって無理にやる必要ないし」

「ま、なんとかなるじゃろう」


 アカネとヒュッケはテーブルでチェスをしている。

 2人ともソコソコ出来るのか今の所2勝2敗と一見拮抗しているが、

 ヒュッケの方が優勢で経った今アカネのクイーンを奪い取っていた。


「わざわざテストの為の勉強なんて必要なのでしょうか?」

「問題ないのです」


 シロエールはリーゼロッテの要望で耳かきをされていた。

 大分彼女に慣れてきたのか、シロエールは大人しく撫でられながら耳を掃除してもらっており、段々と目を細めてリラックスしている。

 

 全員の余裕ある態度にグヌヌとするフレイヤ。

自分を除く全員が成績上位者の中でも一桁台をキープしている集団であり、

リーゼロッテ、シロエールは初等部2年と1年の魔法科トップだ。


「今年もバカンスに参加出来ない何て嫌ー!」


 ディアナ(7)の月にある臨海学校と言う名のバカンスに参加するには、

 各学科の上位成績者に入らないといけない。

 一般人からすれば豪華絢爛の高級ホテルを学校行事で宿泊する事が出来るイベントであり、貴族等上流階級には格好の社交場ともなるイベントなのだが、


「一度行けば何時でもいけるのですよ?」

「そうだよね~……あ、夏休み何処か行く?」

「私は去年いきましたし~皆さんと一緒なら参加したいかなぁと思います」

「よく考えると、海なんて行ったら妾死んでしまうしのう」


 ここにいる全員さほど興味がないと言う状態だった。

 それでも自分以外は問題なくいけるだろうし、そうなった場合。

 一人お留守番という事態だけは絶対に避けたいフレイヤはますます焦燥し勉強に励む。


 すると、チェクメイトとヒュッケに止めを刺されたアカネがフレイヤの方へやってくる。

 フレイヤが勉強していたのは数学だった。

 年齢のわりに、はなかなか難しい数式をといているのだが、


「どんなのやってるのー?」


 アカネは数学の教科書を覗き込み軽く目を通し、フムフムと教科書の内容を確認する。

 フレイヤはアカネに対し流石にわからないでしょ?という視線で彼女の様子をみていたら。


「あ、フレイヤ此処の計算間違ってるよ」


 アカネがフレイヤの間違いを指摘してきたのだ。

 彼女からすれば、中学1年位に習った程度の数学だったので、特に問題なく解けた。

 フレイヤの勉強を手伝おうと乗り出したのだが、年下で脳筋すら言われる武芸科所属のお姫様のアカネに数学で負けてしまったフレイヤの目からハイライトが消えていた。

 



 マルスの月に入ると、段々とお店の数が減っていく。

 アルバイトやお店を開いている生徒が試験期間に向けて休みをとりだすからだ。

 試験期間1週間前になると迷宮探索もバイトも前面禁止になるので街は緩やかに静かになっていく。

 業者のお店だけしか開かない状態になると自炊していない生徒には少々厳しいものだ。


 各教室でも、徐々に試験ムードが漂ってくる。

 少しでも順位を上げたいもの、既に諦めているもの、順位を死守しようと復習に専念するものと、

 生徒によって対応は様々であるが、何かしらのアクションをとっている。

 シロエールは特に気にせず何時ものように試験とはまったく別の本を開いていた。



 彼女の余裕は周囲から卑屈や嫌味とは思われず、彼女なら仕方ないという程にシロエールの実力は露呈していたのだった。


「あの、シロエールさん。ちょっといいかな?」


 そんな彼女に声をかける人物がいた、隣の席の猫耳娘事ミルクである。

 彼女は本を手に口元を隠すように持ちながら上目遣い気味にシロエールをみている。


「どうかしたのです?」

「あのね?その、勉強みてほしいなーって」


 ミルクの目をみつつ、そのゆれる尻尾に視線が移動してしまうシロエール。

 シロエールは何気に尻尾をよく見ている気がする。


「別に構わないのですよ?明日からで良いですかね?」

「うん、全然構わないよ、ありがとうっ」


 尻尾がぴんっと立ち本当に嬉しそうにするのでシロエールも少し嬉しく思う。

 そこでチャイムがなり授業が始まる。

 試験範囲をさり気なく教える教師達を尻目にシロエールはアカネから聞いた色々な話を纏めていた。


 鍵による変身や召還、またはそれに近いものの話。

 アカネの見解では鍵魔法の最低限の定義を行えば可能ではないのかと。

 異世界ではそういった空想の産物を本や絵にするのが盛んらしく、世界中に溢れかえっていたらしい。

 創造力に関しては、この世界とは次元の違いを感じていた。


 ミルクはそんな事を纏め、整理しているシロエールを横からチラチラと見ている。

 窓辺の彼女はとても絵になり、とても綺麗だと思ってしまう。

 見惚れていると、教師の範囲に出る宣言を聞いて急いでメモをとる。

 ミルクの成績は悪くはなく中の上といったところか、臨海学校に行くには少し成績が届かない。

 でも目の前の少女は当然、臨海学校組み確定だろう。

 折角友達になったのだから一緒に行きたいと思い、彼女に勉強を見てもらうという考えが浮かんだ。

 



 昼休み、何時も通りに拠点での食事を摂る。

 フレイヤは相変わらずサンドイッチを摘みながら教科書と睨めっこを続けている。

 シロエールもサンドイッチを摘みながら皆に一種の爆弾を投下する。


「そうそう、明日から当分の間お昼を別に摂らせていただくのです」

「!?お嬢様私の料理に何かご不満が」

「ありゃ、何かあったの?」


 エクレールを除くメンバーは然程驚かず不思議そうにしている程度だが、

 彼女は小さく震えまるで解雇通告を食らったかのような顔をしていた。


「クラスメイトに勉強を教えてほしいと頼まれたので昼休み等を使って教えようと思うのです」

「へー、なるほどー」

「それは良いことだと思いますよ」


「あの泥棒猫か……消そうかな」


 全員がシロエールがクラスメイトと交流を持つことに賛成なのであったが。

 しかし、エクレールが小声でさらっと何か呟いた気がしたが多分気のせいだろう。

 不満そうに見つめるエクレールをシロエールはまたかと思いつつ髪を撫でてあげる。

 機嫌が悪いときは大抵撫でてあげれば直るのだが、それでもエクレールの表情は曇ったままであった。



 何時ものように迷宮を探索する午後。

 今現在40層、リーゼロッテは前回106層まで進んでいる。

 道順を把握しているリーゼロッテのおかげでスムーズに移動できた。

 試験勉強期間になると迷宮も閉鎖になるので少し混雑している。

 迷宮での成果は成績に反映されるので少し不安がある人間は迷宮で稼ぐのである。


 エクレールはずっとミルクという猫耳娘の事を気にしていた。

 一度猫派になると犬に愛想をつかすという都市伝説を何度も耳にしているからだ。

 もし、本当にそんな事が起きる様なら全力で阻止しないといけない。

 しかしシロエールがそんな事をするわけがないと心が訴え板ばさみになっていた。


「しかし、本当にシロエールちゃんがいると敵が近づいてきませんんね」

「妾の見立てじゃ恐らく100層くらいまではろくに戦闘できぬとみておるのじゃよ」


 時間の限り効率よく進む事で迷宮探査は44層まで進めた。


 迷宮探査を終えると定番と化しているお風呂の時間だ。

 人数が増えても大きなお風呂はぜんぜん問題なく皆では入れる。

 お風呂に入っているとエクレールとリーゼロッテの胸と自分達の胸の差が分かりやすくなってしまう為に一部の人間のハイライトが消えてしまった。


「なんでこう神様ってのは人間をここまで不公平に作ったのかしらね」

「平等じゃないからこそ人間だと思うけどねー」

「全部同じなら個を放棄して折るのと同じじゃのう」


 黒髪、銀髪、赤紫髪、金髪、茶髪、青髪と全員が別の髪色をしており、

 各自のマナの属性もバラバラであるのである意味綺麗に纏まっているともいえる。

 そうなるとあと一人、風乱魔法ハスターが足りないなと、アカネが思った。

 この流れだとつまりあと一人増える可能性があるとフラグをびんびんに感じ取っていた。


(あまり増えすぎても困り者なんだよねぇ~)


 シロエールの後ろに回り込んでむぎゅっと抱きしめるアカネ、シロエールの真っ白な肌はお風呂の熱でほんのり赤く、艶々している。

 彼女は若干暑苦しそうに困った反応を示しつつもアカネを拒むような事はしなかった。

 その様子をみたエクレール、ヒュッケ、リーゼロッテとシロエールに抱きつきいも荒い状態となり、

 抱きつく勇気のなかったフレイヤ以外全員のぼせてしまった。

 全員に塗れたタオルを頭にのせてあげながらため息をつくフレイヤ。


「あんた達バッカじゃないの?」

勉強(迫真)

月日はオリンポス十二神から

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