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とある錬金術師の卵と鍵魔法師

今回はフレイヤ視点です

 私を救ってくれたのは半森守種族ハーフエルフの女の子。

 シロエールの戦いをみてハラハラしたけど高等部のキュリディーテに勝ったのだ。

 アカネという女の子がいうにはシロエールは本気を出してないそうだ。

 あれだけでも強かったのにまだ全力じゃないってどういうことなのだろう。

 折角良い所なのに、周囲の女の子とベタベタしちゃっているのを見ていると何か胸がざわついて、つい誑しエロフなんて叫んでしまった。

 私の馬鹿、死にたい。


 シロエールが寝込んでいる。

 私を助けるために苦手な大衆の視線の前で戦ったからだそうだ。

 本当に見も知らない私の為に頑張ってくれた健気な彼女の事を想うと胸が熱くなる。

 何かしてあげたいけど私は料理も出来ないし、エクレールが全部やっていた。

替わろうかと聞くとエクレールはそっぽを向いた。


「お嬢様の身の回りのお世話は私の仕事なので結構です」


 私は何となく分かった。彼女も私と一緒でシロエールに救われてシロエールの為に何かをしたいって思っているのだって。

 そう思うと何もできずにただシロエールの様子を見ている位しか出来なかった。

 私ってヘタレなのかしら……。


 ある日、寝室でアカネが膝枕をしているのを目撃した。

 すやすやと寝息を立てるシロエールの耳を擽っていたりして少し悪戯もしていて、ちょっと羨ましい。

 そんな二人を眺めていたらアカネがいきなりシロエールの事好きなのと聞いてきた。

 余裕のある彼女をみて気恥ずかしくなってきて逃げちゃった。

 私ってダメダメだわ。


 リーゼロッテの事は知っている。

 アルテミス大公国の公爵家の令嬢で常に上級生の警護が既に居るほどの存在だ。

 彼女と話す機会はなかったし、助けを求めるなんて選択肢もなかった。

 だって私は裏切り者の妹と蔑まされていたから。

 雲の上の様な存在だった子が今一緒に住んでいる。


 アカネもアーレス帝国第三王女というリーゼロッテ以上に雲の上の存在で、ヒュッケは真祖の吸血種族ヴァンパイア、助けてくれた当のシロエールも伯爵令嬢だった。

 メイドのエクレールを除くと私って何か場違いじゃない?

 私だって有名な鍛冶師の娘で今は剥奪されてるけど名誉貴族だったのよ。

 それでも、ここの住人と比べると圧倒的格差社会を感じるわ。



 私の部屋は錬金術の器材だらけで実験室と化していた。

 ベッドは皆で一緒に寝ているから問題ないし、特に趣味らしいものもなかったからだ。

 女の子らしくない部屋だと自覚はしているけどしょうがないじゃない。

 金属や薬品の臭いが漂い部屋をノックする音が聞こえる。

 誰だろうと思って開けたらシロエールがいたのだ、私に何のようだろう?


「フレイヤさんにこれを渡そうと思って」


 3つの金属プレートを私に手渡してきた、何だろう?触ったことがない金属だ。

 不思議な感じ、まるでシロエールが使っていた銃やレイピアの素材みたいだけど。


「きっとお役に立ちますのです」

「え、あ、ありがとうも、貰っておくわ」


 にこりと笑って自室に戻っていっちゃった、これ何なのだろう。

 早速実験にとりかかってみる。

 硬度やマナの流れ、を確認する。

 一つの金属はマナの通しが劣悪だけど強度が尋常じゃない。

 もう一つはミスリルを遥かに上回る性能の金属。

 最後は強度はかなりあるけど、マナの流通がほぼ100%通る。

 どれも恐ろしい位凄い金属で実験のし甲斐があったわ。

 で、私がこの金属が三大金属である事に気づいたのは1週間位過ぎてからだ。

 

「何で三大金属全部持ってるのよ!」


 開けるなり叫ぶ私に少しびっくりしてきょとんとしていた。

 あのプレートだけでも一体幾ら値段が発生すると思ってるの?


「お役に立たなかったですか?」

「凄い役に立つどころか長年の夢のひとつだったけどっ」


 ならよかったじゃないですかとにこにこするシロエール。

 何というかつい彼女の頬をむにーっと引っ張ってしまった。


「いひゃいいひゃいのです」

「だーかーら、何で持ってるのかって聞いてるのよ」


 こうなったら徹底的に聞き出そう、ぐいぐいと引っ張っていく。

 ほっぺが柔らかくてふにふにしてる、ちょっと涙目なのが少しゾクゾクさせてもっと近くで見ようと体を寄せてみると、体重がかかってしまったせいか躓いてしまってソファに押し倒す形になってしまった。

 きょとんと此方を見てるシロエール。

 顔が近くてこれじゃ私が押し倒してキスしようとしてるみたいじゃないっ。

 柔らかそうな唇だとは思うけど、べ、別にちょっとしてみたいなんて思ってないわよ。

 自分自身は気づいていないが頭から湯気がでていて顔が真っ赤になっている。


「あ、いや、これはそのちょっとした弾みでね!?」


 何とか起き上がり心臓の高鳴りを押さえようと胸を抑える私。

 良く見ると睫毛も長いし眼もぱっちりしてて何より綺麗な白い肌でって何考えてるのよ私。

 炭鉱種族ドワーフは基本的に体格のよい人を好む傾向がある。

 故に、男色を好む比率が高いのだ、だけど私に至っては年下で線の細い女の子相手にこんなにドキドキしている。

 決して女の子を好きになるのは変じゃない、可愛い女の子を好きになったって問題は無いんだけど素直に好きっていえない自分がもどかしい。

 それにこの子には王族クラスの人が近くにいてべったりだもの、側室位なら……って私何かがそんなことできるわけ無いでしょ落ち着いきなさい私っ。


 一人で百面相をしていたらしい私を見てシロエールがくすくすと笑う、やばい恥ずかしい。

 ぽんぽんと自分の座っている隣をたたき招いてくるシロエールにしたがって大人しく座る。


「持っている理由でしたよね?」

「う、うん」


 鍵をだしてガチャリとナニカを開けた。

 この使い方は本でも見たことが無い、彼女は特別なんだと思うたびに想いが募っていく。

 目の前の空間に穴が開いた、ぽっかりと何も無い変な穴に彼女は手を突っ込んだ。


「確かこの辺りに」


 ごそごそと何かを探している。

 多分、決闘の際にも銃を出したのも多分これなのだろう。


「そういえばフレイヤさんって怪力だってマハさんがいってました」


 確かに私は周囲でも可笑しい位怪力だったけど、マハの奴、後でぶん殴ってやる。

 仕方なく肯定すると、なるほどといった反応で今度は別の空間をひらいて、奥から取り出したのは巨大な金属の塊。


 分厚くて、硬くて、重きく、私達の背丈を超える双頭剣だった。

 軽量化のためなのか先端が割れていて、途中から広がり刃の中が空洞となっていた。

 一種のソードブレイカーとも言えるこの武器は不思議と私の眼を魅入った。


「『リントヴルム』アームブレイカーといわれるヒヒイロカネ製の武器です」


 持ってみます?と言われ、私の鼓動は高鳴り、手にしてみる。

 ずしりとくる重さ、確かにこれをまともに振るえるのはそうはいないと思う。

 さすがに部屋の中じゃ振れないけど軽く動かしてみる。

 この双頭剣は柄はそれほど長くはなくあくまで片手運用がメインになる。


「私はこれ使えないので宜しければフレイヤさん使ってください」


 一瞬間があく。

 自分が使えないからって理由で神話級の武器を私に渡すといっているのだ。

 普通ならありえないし、いや、この子は出会ったときから普通じゃない。

 シロエールは常識の範囲外の存在なんだ。


「いいの?」

「構わないのです、フレイヤさんにはきっと必要になりますから」


 普段から使える武器としてミスリル製のレプリカも貰ってしまった。

 それではと手を振りいつの間にか私は外にでていた。

 これ、早く色々試してみたいと研究欲にかられて足を踏み出そうとした所で思い留まる。

 あれ、何か煙に巻かれた?


「そうじゃなくって!」


 再び彼女の部屋のドアを開ける。

 シロエールはあ、駄目だった?という顔でいた。

 少し、んーって首を傾げ悩んでいたかと思っていたら思いついたように言ってきた。

 

「では、それは口止め料という事で今はノーコメントでお願いします」


 そう言われると結構痛い。

 どう考えても私のようなのが三大金属に出会えるなんて一生無いかもしれない。

 でも、シロエールに内緒といわれると寂しい気がする。

 普通ならここは黙ってうなづくべきだけど、冗談じゃない!


「じゃあ、これ返すからちゃんと教えて!私は貴女の事知りたいのっ」


 言っちゃった、一世一代のチャンスを棒に振ったかもしれない。

 でも、私はシロエールの事を知るほうが大事だと思った。

 おそるおそる彼女の方を見ると、眼をぱちくりしてた。


「フレイヤさんって凄いですね」

「いや、ぜんぜん凄くないしっ」

「普通の人だったらきっと頷いて次の機会を待つと思いますよ?」

「へ?」


 シロエールはは確か今はノーコメントって……。

 つまり、今は教えられないけど何時かは教えてもいいって事じゃないか。

 私ってやっぱり大馬鹿だああっ。

 ひざと両手を地面に付いて、うな垂れながら自分の馬鹿さ加減に嘆く。


「そんなフレイヤさんにちょっとだけ私の秘密教えてあげます」


 シロエールがしゃがんで私の頬に手を沿えてくいっと眼と眼を合わさせてくる。

 やばい、またドキドキしてきた。

 シロエールがフレイヤさんは可愛いですねーと言いながら撫でてくるからますます恥ずかしくなってくるじゃない、私のほうがお姉さんなんだからねっ。


「私は、ある歴史上の人物の秘蔵の倉庫に鍵魔法で入れるのですよ、だから色々なものを持ってます」

「それって盗掘っぽくない?」

「大丈夫ですよ、私にしか入れないですし」

「それってどうい――」


 シロエールの指が私の唇にふれる。

 内緒ですっと耳元で囁いてきて立ち上がり、私に手を差し伸べる。

 流石にこれ以上は教えてくれないってことかぁ。

 私がもっと親しくなれば教えてくれるかな?

 それでシロエールからもっとセシリアの事知りたいなって言わせて…

 って、何考えてるの私ってば!


「ま、また今度きくからねっ!」


 私は自分の部屋へ走りこんだ。

 多分、私絶対変な人って思われてるだろうなあ。

 ううん、まだ何年もあるんだから之から頑張ればいいのよ、他の仲間には負けそうだけど。 

 それに、折角貰ったこれ大事に使わせてもらわないとね。

 

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