プロローグ
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簡単にこの世界を説明すると『ヴァルハラント』には基本七種族が存在する。
普人種族 森守種族 炭鉱種族 竜人種族
半獣種族 吸血種族 有羽種族
五つの大陸に幾つもの国を立ち上げて生活していた。
実は大昔に大戦争が起こっており、そのせいで各種族の人口は激減。
追い討ちをかけるように疫病も発生する大混乱が発生してしまった。
7種族の内、2つの種族が壊滅的打撃を食らってしまった。
森守種族は総ての男が、炭鉱種族は女が死に絶えてしまうという事態が発生してしまったのだ。
森守種族は他種族の男と子供を成すと一部例外を除き男側の種族の子供が産まれてしまい森守種族は絶滅するしか他ならない状況になりつつあった
炭鉱種族は多種族間での交配では子が中々産まれない性質を持っていた為に此方も絶滅の危機に瀕していた。
他人事と言っていられなくなった国々は一時休戦。
疫病の対策と種族保存の為の研究が行われる事となった。
結果、幸いにもとある魔法師と錬金術師の研究により新魔法『祝福』が誕生したのだった。
『祝福』は同性でも子供を成す事を可能にした魔法でこれにより二つの種族は絶滅の危機を乗り越えたのだ。
しかし、『祝福』を用いて他種族の女性と子を成しても森守種族が産まれなかった。
男性の森守種族復活は完全に絶たれ森守種族は閉鎖的な国になっていった。
しかし数百年前に多種族の男との間に稀に産まれる半森守種族と黒森守種族と子を成した場合は確実に純粋な森守種族が産まれる事が発覚した。
これにより、それまで男性への生理的嫌悪レベルだったが態度は有る程度改善したものの今現在、尚も森守種族の国『アルテミス大公国』は男子在住禁制の国となっている。
炭鉱種族は今現在、普通に女性の炭鉱種族も存在し人口も安定化しているのだが未だに男同士で子供を成す者が多い。
筋肉至上主義が多いのか、筋肉の素晴らしい者同士で子供を作る事で更に素晴らしい筋肉になるという風潮が今現在も続いているらしい。
―――
ある島で十代の子供達が戦っている、学園内対抗攻城戦とよばれる大規模戦闘だ。
複数の砦が存在し、城のどこかに設置したオーブを死守し、逆に敵のオーブを破壊する事で最終的に残った砦が勝者となるルール。
一つのチーム達がある砦内に入り込む。
斥候を勤めた竜人種族の青年が駆けていく。
階段前の通路には容易なトラップが張り巡らされており、周囲を警戒しつつ其れを解除していく。
彼の手捌きは可也のもので、此方を向いてハンドサインを出した瞬間。
カチリッ 錠前が開く音がした。
不意に竜人種族ドラグーンの青年は自分が宙に浮く感覚を感じた。
自分にはトラップを見抜き、解体する才能には可也自信があった。
地面には何もなかったはずだ、なのに今自分の身体は落ちている。
一瞬、階段の上に映ったその姿を見て青年はしまった。と、ここの砦を選んだミスを悔やみながら、一言も声を発する暇も無く穴の開いた地面は一瞬で青年を飲み込んだ。
彼の消失に気づいたメンバーの緊張が走る
「くそっヘンリーがやられたっ」
誰かが重々しく口走る。
今年の砦に地下は存在しない、なのにヘンリーの奴は落ちていった。
大地魔法で穴でも掘っていたのか?
そんなわけがない、ヘンリーがいた場所は綺麗に埋まっている。
むしろ最初から穴なんて無かった用にしか見えない。
ああ、ちくしょう多分ヘンリーは別の場所に飛ばされたんだ。
こんな芸当してくるのは鍵魔法師位だが扉なんて見えないし相当の使い手なのだと想像がつく、うちの学園内だと多分彼女だろう。
階段の上に銀髪碧眼の少女が立っている。
人間より長く森守種族より短い耳が特徴的だ。
彼女の姿をみるや否や、先手を打とうと後衛の仲間達がすぐさま矢を射り、風乱魔法で攻撃を仕掛けたのだ。
リーダー格の青年は彼女がここにいる時点で逃げる事を事前に打ち合わせしていたはずなのに手をだしてしまった仲間達に少々舌打ちしながら攻撃にあわせて自分達は間合いを詰めようと前にでた。
カチリッ 彼女の方から鍵を開ける音がする。
矢と風の刃は的確に彼女へと向かっていた、向かっていたはずなのだ。
なのに彼女に届く前に虚空へと消えていくように消失した。
不意に後ろから仲間のうめき声が聞こえた。
リーダー格の青年が振り向くと一人は矢が当たりもう一人は風の刃を喰らって倒れていた。
多分、伏兵とかではなく仲間が先程攻撃した奴が後ろから飛んできたのだろう。
彼女は攻撃を無効化しながら自分達の後ろに繋がる門を作りだして攻撃に転用したのだ。
彼等は決して弱くはない、前衛後衛バランスの取れたメンバーだった。
それが何も出来ずにこうも手玉にとられてるのだ。
今は逃げるしかないと悟った所でもう遅かった。
彼女が一人でいるという理由は何処にもなく、ここに彼女一人しかいない理由もなかったのに、彼女の存在だけで思考が一杯になってしまった時点でこのチームは詰んでいたのだ。
気がついたとき彼等は全員リタイア地点に倒れていた。
一仕事終えた彼女はチームメンバーとハイタッチして戻っていく。
彼女は比較対象となる学園内の鍵魔法師達とは一線を越えた鍵魔法を使い、既にトップクラスの仲間入りをしてるであろう彼女を魔女やら大鍵魔法師の再来だの色んな呼称をつけて畏怖と尊敬の眼を向けられている。しかし当の本人は余り興味はなかった。
まだ半分も本気だしてないんだけどなぁ…。
この鍵魔法師シロエールは真面目にやっているものの、鍵魔法に関しては本気を出していない。
彼女にとっては今使ってる鍵魔法も中級程度に応用をかけたに過ぎないのだ。
何故、彼女はここまでの力を持っているのか?それは彼女の産まれた時からの秘密にあった。