転生者な幼馴染みと大人になった俺
他の作者の方の小説を読んでいて勢いで書いてしまいました。
第3弾。
テーマは『転生』『幼馴染み』『男の友情』『感動』です。
ファンタジー要素はほとんどありません。
あいつは、年に合わない苦みと優しさを含んだ微笑みで言う。
「世界はね、おまえが思っているよりほんの少しだけ、ファンタジーにあふれてるんだよ」
そんな事を言ったおまえは、もうこの世界に居ない。
……なぁ、誠。
俺はもうお前に謝る事も出来ないんだ。
あいつは、小さな頃から写真が好きだった。
「ねぇお父さん。何をしているの?」
「写真を撮っているんだよ」
「ぼくもしてみたい!!」
「それじゃあまこ!ぼくをとってよ!」
幼馴染みはカメラを構えた。
俺は自慢げにポーズをとった。
「まこはカメラ好きだよな!」
「うん。サイがかけっこで一番になるの誰よりも上手に撮るんだから!」
「まかせとけ!運動は得意だからな!」
幼馴染は運動以外が得意だった。
俺は運動だけが得意だった。
「なぁ。誠」
「何だ?サイト」
「昔っからおもってたけど、お前最初から今とほとんど変わんねー位、写真撮るのうまいよな」
「なんだそれ?写真を撮るのがうまいとほめているのか?それとも、全く上達しないな、とけなしているのか?」
幼馴染みが時々大人びた笑い方をする事に気づいた。
俺はそれが小さい頃からだと気づいた。
「…サイトの母さん、再婚したんだって?」
「……あいつとだ、どうして母さんはあんな奴と……」
「サイト、何が会っても俺が生きている間はお前の見方だからな。
なんたって、生まれた時からの幼なじみで親友だからな!」
幼馴染みはたった一人の味方で親友だった。
俺はそれがどうしようもなく嬉しかった。
「んだサイト、髪染めたのか?」
「あぁ、って誠お前!何写真撮ろうとしてやがる!」
「今は恥ずかしくても、大人になれば良い思い出になるさ。あははは!」
「てめっ、カメラ渡しやがれ!!」
幼馴染みとの他愛無いこのやり取りが好きだった。
俺はこいつを一番知っていると信じて疑わなかった。
「なぁ、お前高校何処にする?」
「……誠と一緒で良い」
「俺もサイトと一緒が良い!」
幼馴染みはずっと一緒に居たいと言った。
俺はずっと一緒に居られると疑わなかった。
「バイトするのか?」
「……自分で大学の学費稼げ、だとよ」
「そっか。頑張れよ」
「あぁ」
「サイトは絡まれやすいんだから帰り気をつけろよ!」
「分かってるって!お前は俺の母さんか!!」
幼馴染みはそれでも良いと笑った。
俺は何となく恥ずかしくてうつむいていた。
「喧嘩、したのかサイト」
「あぁ、勝ったから気にすんな」
「けどボロボロじゃないか……あんまり無茶、するな」
「うっせぇよ」
幼馴染みがおかしい事に最近気がついた。
俺はどうしたら良いか分からなかった。
「どうしたんだよサイト、最近変だぞ」
「うっせぇな」
「なぁサイ」
「うっせーっつってんだろ!!!!」
「幼馴染みだからって金魚のフンみてーにずっとくっついてんじゃねぇよ!」
「……先、行くな」
「………………おまえの方がどうしたんだよ。……バカ誠」
幼馴染みと初めて喧嘩をしてしまった。
俺は心がえぐられた様に痛かった。
「なぁ、一緒に行こうぜ!」
幼馴染みは何事も無かったかの様に毎日俺を迎えに来た。
俺は毎日無視した。
幼馴染みは毎日俺が帰る時、家の窓から俺をを見ていた。
俺は毎日お前が帰る時、学校の窓からお前を見ていた。
「お前、学校は良いのかよ」
「今日は絶対に、嫌がったってサイトと一緒に行く」
「……好きにしろ」
幼馴染みは無言だったが嬉しそうだった。
俺はごめんを言い出せなかった。
「サイト!!行ってきます!!」
幼馴染みは信じられない大声を轟かせた。
俺は驚いて部屋からあいつを見ていた。
どうしたものか。
今日は電話がやけにうるさい。
苛ついて早々に学校に行く事にした。
通学途中で人混みが出来ていて、パトカーの音が五月蝿かった。
学校につくとあのゴリラ体育教師が、こちらに向かって走って来る。うぜぇ。どうした物かと迷っていると、大声で名前を呼ばれた。何かいつもと様子が違う。
「なんでお前、学校に来てるんだよ!!!!」
「は、はぁ?いっつも来いっつってんのお前だろ?」
「あぁもういい!俺が送ってやるからすぐ病院行くぞ!!」
「ちょ、引っ張るな!どういう事だよ!」
なかなか変わらない赤信号にイライラして
ゴリラ教師が人差し指でハンドルをたたいている。
「……いきなり何なんだよ」
「いいか。落ち着いて聞けよ」
俺の心臓が、胸を突き破ってしまいそうな位鼓動するのを止められなかった。
「おばさん!」
「……あぁ、サイトちゃん?久しぶりね」
「おばさん、誠は……?」
「まだ……あそこに居るわ」
誠、誠、誠。
まだごめんって言えて無いだろ。早く帰ってこいよ。あんなに元気だったじゃないか。
あんなに……あんなに……………っ
最後に見たお前は、今までで一番奇麗な笑顔で笑っていた。
お前が写真が好きだったから、そっち関係の仕事に入った。知ってるか?今時、ほとんどの写真が修正済みの加工品なんだぜ。誠。ひいき目なんかじゃなくて心の底から思うんだ。どんなに有名な写真家も、お前ほどに奇麗に景色を切り取れる奴は居ない。
ピーンポーン
「はい」
「斉藤誠さんから宅配便です」
「…すみません。誰からって言いましたか?」
「斉藤誠さんです」
幼馴染みから届け物が来た。
俺はお前を置いて体だけ大人になっていた。
大切な幼馴染みで親友へ。
この手紙は西都が二十七歳になった時に届く様にしてあります。まずは、突然死んでごめんなさい。きっと驚き、困惑したことでしょう。もしも俺の事を忘れて幸せに過ごしていたのなら、今更掘り返すようなまねをしてごめんなさい。
俺の一番の秘密を明かそうと思います。
俺は、転生者でした。生まれる事と死ぬ事を繰り返しながら、いろんな世界を巡る役割を与えられてる。
ほんの少しだけ未来をのぞく力とかもあったりします。
だから俺は自分が何時死ぬのかを知っていました。
俺は最後にサイトに会う時に奇麗に笑えていただろうか?
サイトの記憶の中にある俺が笑っている事を祈ってる。
一緒にアルバムを送りました。俺が撮った写真で作ったアルバムです。
あと、喧嘩した事俺は気にしてないからお前も気にするなよ。
違う世界の空の下で、大人になったお前の幸せを祈っています。
ありがとう。西都のおかげで俺の人生幸せだった。
一番の幼馴染みの誠より。
アルバムをめくる。
三歳、初めて撮った写真。自慢げな西都。
めくる、めくる。
八歳、体育祭。一等賞をとって喜ぶ西都。
めくる、めくる、めくる。
十二歳、俺にからかわれて恥ずかしげな西都。
めくる、めくる、めくる、めくる。ぽたり。
十五歳、髪を染めたせいで生徒指導の先生に起こられる西都。
めくる、めくる、めくる、めくる、めくる。ぽた、ぼたり。
アルバムに映っているのはどれも俺だった。
十七歳、喧嘩をして疲れて寝ている西都。
めくる、めくる………………
俺と西都
「……ごめん。ごめん、なさい。誠」
様子が変だったのは自分が死ぬと分かっていたからだ。
なのにお前を突き放したりしたりして、ごめん。
すごくつらかったはずなのに。ごめん。
「………ありがとう。誠」
俺もお前のおかげで幸せだった。
きっと世界で誰より幸せだった。
ぽた、ぽた、ぽた、ぽたり。
どこかで生きているお前に、笑って顔向けられる様に、俺も……。
その日夢を見た。最後に見たあの日、あの場所で、あの時と変わらない姿をした幼馴染みが、あの日の俺に笑っていた。
「サイト!!行ってきます!!」
「おう!行って来い!!」
俺は誠に精一杯誠に笑いかけた。
「誠!!」
去っていこうとする誠に声をかける。
「俺も……行ってきます!!!」
誠は振り返ると手がちぎれそうな位、手を振ってきた。
「行ってらっしゃい!!」
叫ぶ俺もあいつも泣いていて、けど最高の笑顔で互いを送り合ったのだ。
転生領地ものは書けないと思っていたので友情物。
ゴリラ教師との同窓会での会話を書いて短編をあげました。
感想お待ちしております。
おまけ
消える前に、一瞬だけあいつの姿が変わった。
どこか俺の知る誠の面影を残した、茶色の髪と目の奇麗な10歳位の少年。今のあいつ。
俺もさっきより目線が上がっていた。俺もきっと今の姿なのだろう。
転生者な幼馴染みと大人になった俺。