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雨やどり   作者: 大晴
3/3

後編 

「半田…。」


今、学校の友達に会ってしまったことを少し後悔した。


これで、また心残りになる出来事が増えてしまうかもしれないから。


「出発、明日か?」


「うん」


とりあえず、今思ってることを隠して平然と話すように努める。




半田とは中学になってから知り合いになった友達の一人だ。


去年の6月頃からだったか。


席替えで前後同士の席になり、話し始めたことがきっかけだった。


半田とは本当によく気が合った。


夏休みが終わるころには、一番の友達になっていた。


でも、友情は長く続かなかった。


10月の中ごろ…。俺のノートが落書きされ、さらに破られる、ということが起きた。


結局犯人はわからなかったし、それ以後同じことをやられたわけでもない。


だからあまり気にしてなかった。


でも、一つ思いだしてしまった。


半田が以前言っていた言葉を。




「ねえ高木、こないだの授業のノート見せて」


「いいよ、はい」


「まあ、お前のものなんか大切に扱わないけどね」


「どういうことだよ」


「たとえば、この場でブレークしたりとか…」


「もの使いが荒い井岡も人のものは大切に扱ってるぜ」


「はいはい」





これを思いだしたとき、ふいにこんな考えが頭を横切った。


やったのは、半田じゃねえのか…?




勿論、半田は否定した。


でも、俺はずっと「お前だろ!」と言い続けていた。




それ以来、俺たちはしばらく絶交状態だった。


12月頃に少しは回復したけど、せいぜい大人数のグループで一緒になった時に少し話すくらい。


以前のような関係には結局戻れなかった。




別にいいと思っていた。


理由は説明できないけど……。あきらめがつく、というか…。




そんなことをなんとなく思いだしていた。


雨はまだ止まない。


早く晴れてほしいと思った。


このままいても何も話すことはないと思ったから。




「高木。」


「……。」


何で話すんだよ。


なんて言っていいかわからないじゃないか!




そう思ったが、言葉にならない。


「俺、本当はお前とあの後も仲良くしたかった。」


「……。」


「勿論俺はやってないけど、さ。」




「いまさらんなこと言ったって!もう時間は取り戻せないだろ…。」









「人はね、悪い記憶はいつまでも忘れないんだ。」


「?」


いきなり何を言い出すんだよ。




「逆を言えば、楽しかった記憶はすぐに忘れてしまう…。」


「何が言いたいんだよ」


「お前に疑われたとき、本当に悲しかった。そして怒りもわいてきた。「もう絶交だ!」ってね。でも………。

ふとその前の楽しかった記憶を思い出したんだ。でも、時間がたつにつれて怒りと悲しみでだんだんかすんでいくようで…。」


「……。」


「だから、悪い記憶を取り除きたかったんだよ、俺は。」




半田…。


「ごめんね、俺の個人的な気持ちだから、」




確かに、その通りだと思った。


あの一件以来、それまでの思い出を俺は一度も思い出してなかった。


負の感情と記憶に飲み込まれてしまったかのように……。





最初に話した日。


趣味も合っていて、たくさん話すようになっていったこと。


夏休み、2人で出かけたこと。




仲たがいしてからも、半田はたまに俺によって来ていた。


テストでひどい点を取った時、「気にすることないよ」と言ってくれた。


筆箱を忘れたとき、何も言わずにシャーペンを貸してくれた。




半田は、あんなにひどいことを言われても俺を見限らなかった。


それなのに俺は、一方的にあいつを避けてたんだ。





気が付いたら、涙がこぼれていた。


半田を突っぱねてた後悔と、あいつの優しさで。


「半田……、ご…、めん…。」




「何だよ、いまさら……」


半田は笑っていた。無垢の笑顔だった。


そして、あいつも俺と同じように、涙をこぼしていた。


「ありがとう…こんな俺と、仲良くなってくれて…」


「気にすんなよ……」





気が付くと、雨は上がっていた。


「また、会えるよ…ね。」


「うん。」


そう言葉を交わし、俺たちはそれぞれの帰路についた。





俺の心のわだかまりは、まるで雨が洗い流してくれたかのように消えていった。


そして、新しい土地での生活の自信も、少しだけついたような気がする。




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