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雨やどり   作者: 大晴
2/3

前編

3月も終わりに近い。


少しずつ暖かくなった町を、俺は歩いている。


少しずつ遠ざかっていく、記憶。


友達と教室でふざけ合った。


同じ空の下で遊んだ。


先生に怒られた。


親友と喧嘩して一人で帰ったあの日。


「秘密だよ」と連れて行かれたあの秘密の場所。


一つ一つの思い出が重なり合って、できた記憶。


でも、このままの状態であるわけではない。


この世界で生きている限り、新たな記憶がどんどん積み重なっていく。


今までの思い出がどんどんかすんでいく。




俺は、4月から別の学校に行く。


親の転勤が理由だ。


ここは、見渡す限り住宅が広がる郊外の小さな町。


俺は今までここで育ってきた。


でも…先月、父から聞かされた言葉。



和登(かずと)…すまんな…。」


なんで転勤になったのかはわからないけど、両親の話からおそらく父は「左側の人」になったのだろう。


この近くには親戚はいない。俺も引っ越すことになった。


出発は明日。


今日でこの町の景色は見られなくなる。


今とおっているのはみんなでいつも下校した坂道。


この町に残っていたい…。


でも、今の仲間たちとは別れなければならない。


これも運命のいたずらというものか。


でも、中1最後の授業のとき、みんなに「今までありがとう」と言ってもらえた。


クラスの友達からも。


部活の仲間からも。


だから、みんなに対する心残りはない。


はずだった。


理由はわからない。


どこか、心の隅っこにわだかまりがあるような気がする。


なぜだろう…。


答えは何度考えても出なかった。




ビュゥゥゥ…。


風が強くなる。


空には雲が広がる。


雨か……。


そう思っているうちに雨が降ってきた。


雨脚はだんだん強くなる。


「雨やどりしよう…。」


俺は、閉店した店の入り口の前で雨やどりすることにした。


…もう雨が降る季節になったのか…。




「…高木?」


「!!??」


いきなり自分の名前を呼ばれ、びっくりした。


目の前にいたのは…。


「半田…。」


中学生になってから仲良くなった友達、半田健人(はんだたけと)だった。

後編は4月6日までに掲載したいです。

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