【雨】
「やー、雨だねー。心が滅入るねー」
「レイニーブルーってやつですか」
「マリッジブルーともいうね」
「ボケをかぶせないで下さい! 名雪さんレイニーブルーってほどブルーじゃないじゃないですか」
「や、さすがに徳永さんのデビューシングルまでは守備範囲じゃないよ」
「わかってるならツッコんで下さい!」
さすがに今のボケは自分でもわかりくかったと若干反省した。というか、冷静に考えたらボケになってない気がしてきた。
「パーフェクトブルー」
「もう連想ゲームですね・・・」
あの作品、夜中に一人で見たけどかなり怖かったから、ちょっとトラウマになっているのは秘密だ。
「ブルーもしくはブルー!」
「もうやめましょう!ブルーがつく作品ってなんか怖いの多いんですもん!」
まぁ、ブルーに明るいイメージ求めるなって話だけど。
「それにしても、雨ってなんで憂鬱になるんだろうね」
「うーん、でも雨の日も雨で良いっていう意見もありますよね。いつもと違っているっていうか」
「じゃあ、茨木くんは雨好きなの?」
「正直、晴れてる方が好きです」
「だよねー、私も」
俺の場合は自転車が趣味なところがあるから、雨だと走れないのでっていう理由もある。
「んー思うんですけど、雨が憂鬱なんじゃなくて太陽が凄いんじゃないですかね?」
「ほう、というと?」
「太陽ってすごいエネルギーじゃないですか。太陽の光にあってた方が健康的だったり、なんとなく気分も高揚してくる気がしますし」
「んー、つまり人間は本来根暗で、太陽の力で明るくなれるってこと?」
また、この人はすごい要約したな。でも、自分の言おうとしてることはそういうことか。
「俺、性善説より性悪説派なんですよ。ほら、性悪説って良い人間なるために、みんな努力してる、人間ってすばらしいって事ですもんね」
「つまり、それは努力しだいで雨の日でも明るくなれるってことじゃない?」
それは、そうだろう。別に雨だからといってテンションが全く上がらないわけではないのだし。
俺が頷くと、名雪さんは顔に笑みを浮かべる。
「じゃあ、今から外でて鬼ごっこしよう!!」
「はい?」
唐突になにを言い始めたんだこの人は。
「鬼ごっこだよ!鬼ごっこ!」
「嫌ですよ。濡れるだけですし。良いこと無いじゃないですか」
「テンションあがるよ!」
「上がりませんよ。むしろ、テンション下がりますよ」
窓の外は凄い勢いで雨が降っている。あんな中で走ったら靴の中に雨が侵入するのは避けられない。たぶん、気持ち悪くなるにちがいない。
「でも、雨の中走り回るのって、青春って感じしない?」
「どっちかっていうと、小学生って感じしますけど」
「でも、アオハルって感じじゃない?」
「そんな漫画雑誌みたいな言い方しても無駄ですから! なにが悲しくてこんな土砂降りの中、走りまわるんですか……」
そんなことしても、服がぐちゃぐちゃになって気持ち悪くなるだけだ。
ん? まてよ? 服が濡れる?
つまり……。
「ふっふっふ、気づいたようだね、茨木くん。そう、いま外にでれば濡れ濡れのわたしが見れるのだよ」
「名雪さん! なにをしてるんですか! 早く行きますよ!」
「うわ、変わり身はや」
名雪さんが呆れているが関係ない。もともと名雪さんから言い出した話なのだ。俺に非があろうか、いやない。
や、それにしても雨は今まで大嫌いだったけど、いいところもあるじゃないか。見なおした。雨を好きになれるかもしれない。
「よし、じゃあ行こうかー。って、あれ?」
名雪さんが窓から外の様子を伺っている。まったく、あの人は今更なにをしてるのだ。外の様子なんて、部室を出れば一発でわかるのに。
「雨やんじゃった」
え? 何を言っているんだ。さっきまであんなに降っていいた雨がやむ訳ないじゃないか。
うん、そうだ、そうに決まってる。窓の外は確かにやんでるっぽいけど。
雨足が弱まって、見えないだけで降ってるに違いない。
「まじですか?」
「うん、まじ」
「本当にですか?」
「神に誓って」
「エイメン?」
「アーメン」
「……ちくしょうぉぉぉぉおおおおおおおお!!!」
やっぱり、雨なんて大嫌いだ。