表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

2月14日

「げらげらげらげら!」

「どうしたんですか、名雪さん。そんな漫画みたいな笑い声をあげて」

ちなみに、名雪さんは漫画を思っきり真剣な眼差しで読んでいて、目どころか口すら笑ってない。

「人間って笑いたい時に笑えないことってあるよね」

「まぁ、確かにそうですね」

例えば、電車の中とかコンビニの立ち読みで漫画読んでて、吹き出しそうになっても耐える事がある。

公衆の面前では思うように笑えないこともある。恥ずかしいし。

「だから、せめて声だけでも笑ってみた!」

「ここでやった意味は!?」

ぶっちゃけここには俺と名雪さんしかいない。大学のサークル室の中なので、知らない人に見られる心配は無い。べつに、思っきり笑っても大丈夫だ。つか、名雪さんはよく漫画読んで爆笑してる。

今更恥ずかしがる必要もない。

「ゲラゲラって名前はよく入れようと思ったよね。スタッフのセンスがすごいよね。ちなみに私は無難にムックル派」

「華麗にスルーして次の話題に行かないで下さい! ちなみに名前両方共微妙に間違ってますからね! どんなだけうろ覚えなんですか」

ちなみに、あの人間に懐いた猛獣につけられる名前はゲレゲレとプックルだ。

「うろ覚えウロボロスもびっくりだね」

「あの作品連載になったら、技増やすの難しそうですよねぇ……」

なにしろ体勢が限られすぎてる。

「そういえば、カポエラってほんとはカポエイラっていうのが正しいらしいね。省略された『イ』の気持ちを考えると悲しくってくるよ」

今日は本当に話題が飛ぶな……。

「でも、カポエイラっていうとなんか『本場の発音してます!俺!』って感じがして、なんか恥ずかしくないですか? ほら20って日本語英語だとトウェンティーって言いますけど、実際の発音はトウェニーって感じですし。なんか日本語独自の発音っていうのはありますよね」

「うーん、なんでなんだろうね。日本人って英語しゃべる時って日本語的な発音することが多いよね。これ小説だったらローマ字じゃなくてカタカナで表現されてるんだろうなーって感じの」

確かに、それはあると思う。なんでそういう人が多いのかというとやっぱり。

「間違ってる事をやるのは恥ずかしいって気持ちがあるからなんでしょうね。いや、正確に言うと正しいことをやってるつもりで間違っているという状態が怖いんでしょう。カタカナ発言しておけば、最初から間違えているわけだから、変で当たり前ですし」

「予防線を張ってる訳だね。なんとも後ろ向きな予防線だけど。はやぶさを見習って欲しいよ。個人的には間違ってても、『間違えちゃった、てへぺろ☆(・ω<)』くらいの気持ちでやればいいと思うんだけどね」

名雪さんはてへぺろがマイブームなのだろうか。できれば使うのはメールとかだけにして欲しい。

「日本人はみんなと一緒っていうのが好きですからねー。英語の発音に関してはみんなが英語喋れるようになれば、カタカナ発言とかしなくなる気はしますけどね」

「だから、みんなと一緒じゃつまんねーって言って何か率先してやり始める人は凄いんだろうね。リーダータイプというか、そういう人の後に人間はついていく訳だ」

とはいえ、個性があればいいものでもない。そのまま孤立していく人だってたくさんいる。その違いは何かというと。

「その後に続く最初の一人がいるかどうかも重要ですよね。誰かが後に着いていくと安心しますし」

「そうなんだよ。何かをやり始めた人も凄いけど、それに続く最初の一人も同じくらい凄いんだよね。一人では決して現象には成り得ない。2人、3人と続くから現象足りえる」

「このサークルだって、俺がいなかったら単なる名雪さんが一人で漫画読んでるだけですもんね」

「はいはい、感謝してますよ、後輩君。というわけで」

名雪さんが漫画を置いて、立ち上がった。

そして、自分のカバンの中をがさがさと漁り始めた。

「なにか探しものですか?」

「ほい、キャッチ」

その声と同時に、カバンから取り出した何かを放る。わりかし綺麗な放物線を描いて、それは俺の手の中に収まった。

「……?」

「日頃の感謝の気持ちを込めてね。義理か本命かは自分で判断してねい」

ん? 義理? 本命?

あ、そうか今日はあの日か。完全に忘れてた。まったくいつもどおりの活動だったから、そんな気配全くなかったし。

名雪さんから貰えたのは、素直に嬉しい。嬉しいのだが。

「つーか、普通に義理ですよね、これ」

だって、アルフォートだし。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ