一ページ目
前書き
短い!!
ただ、それだけ。
いつからだっただろう・・・。
「うわっ・・・アイツ、鬼島!?」
「マジ!? 同じクラスとか、カンベンして欲しいぜ〜」
「バカ!! 聞かれたらどうすんだっ!?」
他人から、そういう風に見られるようになったのは・・・。
いつからだっただろう。
「テメエが鬼島かぁ?」
「最近よく聞くぜ〜、ハデに名前が売れてるってなぁ?」
「中学生のクセに高校生(俺ら)に喧嘩を売るとかナメてるとしか言えねぇよなぁ?」
歩いてるだけで他人が寄ってくるようになったのは・・・。
いつからだっただろう・・・。
「鬼島、コレで何度目だ・・・なんだ、その目は? フン、もういい帰っていい」
「また鬼島ですか・・・」
「ええ、全く迷惑な生徒です・・・いっそのこと、この前の騒ぎで鑑別所にでも入ってれば良かったんですよ」
「先生、言い過ぎですよ、まぁ気持ちはわかりますがなぁ〜」
他人に、そう言われ始めたのは・・・。
いつからだっただろう・・・。
「えっ? アンタ中坊!? 若さが憎い・・・」
「何? アンタ停学くらったの? ならヒマでしょ、ちょっと手伝ってよ」
「アンタね〜、その仏頂面、なんとかしなって〜」
他人が居るコトが楽しく思い始めたのは・・・。
いつからだろう・・・。
「おっ!? なんだ〜、アンタちゃんと笑えるじゃん、うんうん、そっちのが、ずっといいよ」
「グスッ・・・今時のアニメ侮れね〜〜〜〜、ちょっとティッシュ、ってアンタも泣いてんのかいっ!!」
「おっ美味え〜〜〜、アンタ料理美味いんだ? よし、アンタはコレから私の専属料理人ってコトで!! ってなんだ、そのアホを子を見る目は!! 何? だから結婚出来ない!? 射殺するよ!!」
その友が居ると何時も以上に笑ったり泣いたり怒ったり出来るようになったのは・・・。
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『ミーン、ミン、ミン、ミーン』
「元気だね〜」
今日も今日とて元気に鳴く蝉の声を聞きながら、アスファルトを歩く。
「ンッ・・・やっぱ美味えな〜ミ○ミ○」
片手にアイツから進められて飲み始めたミ○ルミ○。
その反対側の手には、花束・・・まぁ束って程じゃねぇけど。
「寧ろ酒持ってこいとか言われそうだな・・・」
というか言うだろうな・・・ったく。
そのまま目的地まで行ってもよかったんだが、後でブー垂れられんなぁめんどくせぇしな。
「しゃーねぇ、買ってくか」
独りごちり酒屋へと足を向けて歩く。
『ゴトリ』
何時ものクセでビール六本が一塊になっている賞品を置いてから。
「しまった・・・悪い、おっちゃん、一本で良かったわ」
そんなに数は要らなかったコトに気付き、酒屋のおっちゃんに謝りながら、ビールを戻そうとした所で、おっちゃんに呼び止められ。
「いいよ、いいよ、そのまま持ってきな、きっと一本じゃ足りねぇーって言うぜ〜、値段は一本分でいいからよ、後は俺からだって言っといてくれや」
おっちゃん、俺がコレから行こうとしてるトコが分かってるようで、苦笑しながらも、そう言ってくれた。
まぁそうじゃなきゃ中坊に酒は売らんわなぁ〜。
つっても、殆ど常連みたいなモンだけどジジイにも買いに行かされたトキがあったしな。
少しだけ、そう考えつつ、おっちゃんの言葉に俺も。
「だな〜、あの飲ん兵衛は、わあった、伝えとくわ」
笑いながら、そう答えた。
酒屋を出て、再び目的地へと向かって歩き始める。
目の前をコノ辺りの近所に住んでるだろうチビ達が走り抜けていった。
今は夏休み真っ只中。
肩からは水着が入ってんだろうバックが見えた。
「今からプールにでも行くのかね〜」
もしくは海か?
どっちにしろ気持ち良さそうだ。
「俺も明日辺り行くか?」
誰か誘って? 今なら一人くれえは乗ってくれる・・・と思いたい。
核心が持てねぇのがちと悲しい。
まぁそれでも以前に比べりゃ大分マシではあるんだが。
ぼんやり考えながらも足は目的地へと近付いて行く。
目を懲らせば、既にその目的地は見えはじめていた。
『ミーン、ミン、ミン、ミーン』
蝉の鳴き声。
「ホントに元気なこって・・・」
元気に鳴く蝉。
その元気さの裏には一週間という短い、本当に短すぎる程に短い時間を精一杯に生きてる、そんな強さと輝きがある。
「よお、久々・・・って程でもねぇか?」
目的地に到着し、軽く花束を上げながらアイサツをする。
花束はヒマワリ、何となくコイツのイメージに合ってる気がしたから、育ててみた花だ。
コイツとの付き合いも短かった、一週間という短かさじゃないが、俺にとっては短すぎる程に短く・・・そして、その短かさとは裏腹に強く輝いていた。
「ほれ、一本は俺から、残りは酒屋の、おっちゃんからだ」
『さっすが、気がきくじゃん!! おっちゃんもにもサンキューって言っといて』
「おう!!」
弾むような声。
声は聞こえなくても・・・。
嬉しそうに笑う顔、だが、目線は持ってるビールに集中している。
姿は見えなくても・・・。
「飲み過ぎには注意しろよパー子?」
『ハッハッハ、バカナリ君、死人に何を言うのやら』
プッ、そりゃそうか?
思わず吹き出してしまう。
聞こえはしない声が面白く、見えはしない笑い顔が嬉しくて。
『香田家之墓』
そう書いてある場所の前で、俺はひとしきり笑っていた。
後書き
一瞬、誰コイツと書いてる人も思った。
でも一応はマサです。