第1章:銀幕の少女、迷い込んだ迷宮
登場人物
冴島 結衣:かつて「100年に一人の清純」と呼ばれた若手女優。
黒鉄:冷酷な大手事務所社長。結衣を「商品」としてしか見ていない。
ジャン・クロード:世界的なフランス人監督。芸術を免罪符に結衣を「開拓」する。
美織:結衣のライバル。嫉妬に狂い、罠を仕掛ける女優。
真壁:結衣を純粋に愛し守ろうとする若手マネージャー。
初夏の日差しを反射するカメラのレンズ。その中心にいた冴島結衣は、誰もが息を呑むほどの透明感を放っていた。彼女が笑えば世界が輝き、彼女が泣けば雨が降る――。それが、この残酷な物語の始まりだった。
「結衣、次の映画は世界的な巨匠、ジャン・クロード監督の新作だ。これはビジネスじゃない。お前の『使命』なんだよ」
事務所社長の黒鉄は、煙草の煙を吐き出しながら冷たく告げた。19歳の結衣には、その言葉の裏に潜む毒が見えなかった。彼女にとって、主役を勝ち取ることは夢の実現であり、育ててくれた黒鉄への恩返しでもあった。
撮影のために渡った南仏の古い城。そこで待っていたのは、芸術という名の暴力だった。
「君の体は、まだ未完成だ。この映画を撮り終える頃、君は本当の『悦び』を知る女になっている必要がある」
ジャン・クロードの野卑な視線が、結衣の震える肩を舐めるように動く。密室での「演技指導」という名の儀式。結衣は抵抗した。しかし、彼女の周囲にいたスタッフは、誰一人として彼女を助けようとはしなかった。彼らは皆、監督の狂気と、黒鉄から受け取った裏金の「共犯者」だったからだ。
「やめて……。お願いします、こんなの……」
彼女の叫びは、防音の効いた壁に吸い込まれ、代わりに耳鳴りのような快楽の疼きが彼女の意識を支配し始める。これが、後に「まわされる」ことになる彼女の地獄の入り口であり、同時に彼女を「エクスタシー」の深淵へと誘う最初の開拓だった。
その頃、日本ではライバルの美織が、結衣を奈落へ突き落とすための準備を着々と進めていた。 「清純なんて、ただの皮よ。それを剥いで、中から泥を引き摺り出してやるわ」
美織は不敵な笑みを浮かべ、週刊誌の記者へと一本の電話をかける。結衣がまだ知らない、組織的な「陥落」へのシナリオが動き出していた。




