[7話]腹の探り合い
怨霊を倒したことを感謝されるイシュディア。実際は自分が連れてきただけなので、とても罪悪感を感じてしまう。そしてなぜか領主邸に招待されるイシュディア。イシュディアはとても緊張しながら領主邸の領主の元へ向かうのであった。
「ようこそ、おいでなさりました。イシュディア様。」
そう言って私は領主に迎え入れられた。
領主の部屋はとても質素で、領主が座るであろう椅子と仕事机が1つ、長椅子が2つとテーブルが1つしかなかった。
「とても質素な暮らしをしているんですね。」私は辺りを見ながらそう言った。
「仕事場が豪華だとどうも落ち着かなくてね。さぁそこに座ってください。」そう言われて私は椅子に座った。
領主は女性で綺麗より、かっこいいが似合い人な気がした。けど何か裏があるような気がしてならなかった。
「率直に聞きます。私が領主邸に呼ばれたのでしょうか?」
「私は、領主のシャルイースと申します。今回は、怨霊討伐の御礼をしてくて領主邸にお呼びさせていたただきました。」
私はシャルイースさんはそう言ってるが本心ではないような気がしてならなかった。
(ルヴァンシュ、聞いてる?なんかこの人、裏があるような気がしてならないんだけど。)
私は小声でルヴァンシュに相談した。
(変な感じはするけど、危害は加えられないと思うよ。この人が怨霊だったら僕が気づいているし、戦っても僕たちが勝つと思うから変に思わなくていいと思うよ。)
(分かった。ありがとう。)
「いえ頭を下げないでください。私はアウムに戻る最中で交戦してしまって、こちらまで連れてきて、危うく住民を巻き込むところでした。」
私は戦いのことはルヴァンシュのことを話さないで押し通ることにした。
「いえいえ、こちらに被害がなかっただけでもありがたいですし、怨霊の進行方向的にこちらに来ることはわかっていたので、こちらの被害を出さずに討伐してくれたのはこちらとしてもありがたいことです。何かお望みのことで我々にできそうなことはありますか?」
そう言ってシャルイースは頭をもう一度下げてきた。本当に私たちに恩を感じているようだ。けどなんだろうこの違和感は……
「御礼、ですか…そうですね。私はこれから王都へ行きたいと思っているんですが、王都の騎士団に私の推薦状のようなものを送れませんか?お恥ずかしい限りなんですが、職がなくて…王都の騎士団に入団したいと思っているんですよ。」
私は相手がギリギリ許せるようなラインのお願いをした。
「推薦状ですか…怨霊を倒したという真偽不明の情報を確定させようってことですね。」
私は驚いた。わかりやすいとはいえ、私の思考を読んでくるなんて。
「そうですね。怨霊が落としたアイテムなどは何もなかったので。今のままではホラ吹きと思われそうで。」
シャルイースが不思議そうに尋ねてきた。
「ところで、その狐のお面は外す気はないんでしょうか?こちらへいらしてからずっと付けていますが?」
「これ呪いの装備なんですよ。能力上昇のバフがあるけど、外せなくなるっていうデメリットが。」
私は正直に話した。
「そうでしたか。聞いた私が野暮でした。大変失礼しました。」
そう言った話をしているとドアの方からコンコンという音が聞こえてきた
「失礼します。お紅茶と茶菓子をお持ちしました。」
そう言ってお菓子が運ばれてきた。
「少し休憩したところですし、本題に入りましょうか。」
私が紅茶を飲んでいるとシャルイースさんが真剣そうな顔で、こちらを見ていた。
「イシュディア様、あなたのその強大な力をこの街に使うことはありますか?」
私は呆気に取られた。まさかそんな質問が来ると思っていなかったからだ。
「私はこの街に手は出さないと思いますよ。私の大事なものを傷つけられたら怒り狂ってたかもしれませんが、今はもう失うものが何もないので。」
私はもう大切なものを失っている。私からしたらもう守るものも大事な物も何もない。
「そうですか、、その返事が聞けただけでもこちらとしてもとても安心しました。」
シャルイースがホッと胸を撫で下ろした。
「けれど、私の邪魔をしようとしたら、少し怒って"お仕置き"してしまうかもしれませんが。」
私はそう言ってシャルイースを見つめた。
「たとえば扉の外にいて、殺気を放っている人とか。よくこんな殺気を客に向けられますね。」
私はこの館来てからずっと感じていた殺気の事について話した。そうするとシャルイースがガタッと机を鳴らし、扉の外へ出ていったと思えば、1人のボディーガードのような人を連れてきた。
「すみません。うちのバカがあなた様に不敬を働いてしまって。」
「いいですよ、けどもし次があった場合はそのボディーガードの首を飛ばしますので。」
私はそうってバカの方を指さして言った。
「それでは、推薦状の件よろしくお願いしますね。あと紅茶とお菓子ありがとうございました。」
私はそう言って領主邸を去った。
「あー緊張した〜。」
私はそう言ってルヴァンシュに話しかけた。
「お疲れ様、余計な情報を出さずにいい取引ができたんじゃないかな。」
いい取引ができたと思ったけど、なんだんだろうあの違和感は…何か腹の中を探られている感じがしたのは。
「うんいい取引ができたと思うし、今日はとりあえず明日ここを出るから歩くための保存食と、今日から冷えるらしいか上着を買いに行って、明日ここを出る準備をしよう。」
「オッケー。もっとこの街にいたかったけどね。僕は」
ルヴァンシュは不満そうにそう答えた。
「仕方ないじゃん。街を歩くたびに英雄様だ。とかかっこいいっていう目で見られたらちょっと嫌だからね。」
私はそう言ってキラキラした目で見てくる子供達に手を振った。
「じゃぁ買い物に行きますか。"英雄様"」
ルヴァンシュを今すぐ投げ飛ばしたくなったが、なんとか堪えて私は買い物に向かった。
私は宿に帰っている途中に親衛隊を名乗る人たちに絡まれた。
「はー疲れた。まさか親衛隊までできてるなんて、本当に明日この街を出ることができると思う?」
私はルヴァンシュに尋ねた。
「なんか妨害されそうだよね。まぁ別に僕は絡まれている君を見るのは面白いからいいけど。」
ルヴァンシュはとても面白そうに答えた。
「はぁ今日はぐっすり寝たかったんだけど、夜中に起きて、抜け出そうかな。」
私はぐったりした口調でそう伝えた。
「いいと思うよ。けど門番がいるのかっていう問題と、門が開いているのかっていう問題があるよね。それはどうするの?」
ルヴァンシュは不思議そうにこちらを見ていた。
「あーそっか、そういう問題もあるのか。どうしよう何かいい案ある?」
(門を破壊する?いやダメダメ音が大きすぎるし、印象が悪くなっちゃう。じゃぁ壁にルヴァンシュを刺して登る?いやいや時間がかかりすぎるからダメだと思う。)私は悩んでいるとルヴァンシュが
「僕って君に憎しみで身体能力強化ってやり方教えた?」
「いや、確かルヴァンシュに憎しみの力を乗せる方法しか教わってないはず。」
「あーそうかじゃあ憎しみで身体能力強化する方法と、呪いを使って身体能力強化をする方法を教えようかな。」
そういってルヴァンシュは1人でに浮き上がった。
「まず君は憎しみを僕に乗せる方法を覚えたって言ってたよね。憎しみで身体能力強化する方法は簡単でその乗せる対象を変えるんだ。」
「たとえば、ルヴァンシュから私の腕とか手ってこと?」
「そう。こうすることで失敗のリスクはあるけど、腕や手にすごい力を加えることができる今回だと門を越えたいから足に乗せるといいと思うよ。」
「じゃあ呪いで身体能力強化する方法は?」
私は憎しみを力に変える練習をしながら聞いた。
「これは強化っていうよりかは体のどこかにデバフをかける代わりに何処かを強化するっていう方法。足を強化したい場合だと腕の力を半減させる代わりに、脚力を2倍にしたりすることができる。呪いと憎しみを両方使うことで掛け算になるんだ。たとえば憎しみで大体5倍くらい脚力が上がってるとすると呪いだと大体2倍が限界だから2*5で10倍かな。10倍の力が出る。」
「じゃぁ訓練するればもっと出力をあげられるってこと?」
「そうだけどデメリットもある。体の負荷に耐えられない強化をすると普通に戦闘不能に陥るよ。」
ルヴァンシュは呑気そうに答えた。
「じゃあ今日はその両方を使って出てみよう。」
「深夜に出発するといいと思うよ。意外と音が大きいかもしれないから。」
深夜
「ちゃんと道具とか持った?」
ルヴァンシュはそう質問してきた。
「大丈夫ちゃんと全部背負ってるし、宿屋にもお金を置いてきたから。」
「オッケーじゃあ行こうか。僕は呪いをつけるから君は憎しみを力に変えてね。」
「分かった合図は『起きろ』でいい?」
私はそう確認をした。
「起きろでいいよ。じゃあまず呪いをかけるね。」
そう言った後腕の力が抜ける代わりに足に力が入るのを感じた。
「それじゃあ行くよ。『起きろ』!」そう言って私はジャンプをして、無事城門を飛び越えて街から抜け出す事に成功した。
「ちょっとこれどうやって着地するのぉぉぉぉ。」
私は落下しながら叫んだ。
「頑張ってみてよ。僕は応援してるからさ。」
ルヴァンシュは面白そうにこっちを見て言った。
「じゃあ力を貸して!『起きろ』!」
そう言って私は地面にルヴァンシュを叩きつけて勢いを殺した。
「着地成功!。」
私はルヴァンシュを引き抜いてそう言った。
「次からは許可を得てから使って欲しいな。びっくりするからさ。」
「あなたが煽るのが悪い!」
「いやいや、君の力を試すためだよ。
私たちは喧嘩をしながら次の街へ向かった。
NOCHESです。次回からはついに新しい街という事で、楽しみにしておいてください!頑張って投稿頻度を落とさないようにするので、ぜひ応援していてくださいね。




