[63話]復讐ではなく希望を継なぐために
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私の目の前には魂を統べる王がもう影も形も残ってないただの化け物が目の前にいた。体は黒く光り、体は王都を簡単に踏み潰して壊すことができるくらい大きくなっていた。
「なんなの……この化け物……私が倒せるの……?」
私は目の前にある"絶望"を直視できずにいた。どれだけ私が強くなろうとも、あの敵には敵うわけがない。そう思わせてしまうほど目の前にいる敵は強大で、そして圧倒的な威圧感を放っていた。
「今……この王都には戦えるのは君しかいない!君が戦うことをやめてしまったら……この王都は滅んでしまう!だから……君が戦うのを諦めるのは……絶対にダメだ!」
ルヴァンシュが私を励ましてくれた。そうだ。戦える人は私が全て殺してしまった。だから私が戦わないと、また被害が出る。私はもう悲しまないと決めた。もう悲しまないために私は、戦うのを諦めない。
「主人……私も最後までお供させていただきます!あなたが最大限の力を発揮して戦えるように私がサポートします!」
セイバーが私に希望を与えてくれた。とりあえずこの王都から住民を逃させるために少しでも時間を稼がなければ。私はそう思い大きく息を吸った。
『みんなー!この化け物は王様の成れの果てだ!この化け物はこの王都を全て破壊しようとしている!私が時間を稼ぐから王都の人は避難してほしい!』
私は大声で全ての人に聞こえるように叫んだ。私の声が届いたのか辺りから『逃げろ』や『先に行け』などの声が聞こえ始めた。どうやら私の声を素直に聞いて避難を始めてくれたらしい。
「イシュディア……南側の人たちはもういなくなってる!あっちの方はもう避難が済んでるみたい。戦うなら南で戦わないと、今非難している人たちにまで被害が出る」
「わかった。セイバー……ルヴァンシュ……力を貸してくれる?」
私は目の前に私が旅を支えてくれた武器を掲げた。私はどれだけこの2人に助けられてきたのだろうか。生きる希望をもらい、私が死にそうになった時には私を助けてくれて、いつでも力を貸してくれるこの2人に。
「君のためなら僕はいつだって力を貸すさ!」「主人がそれを望むのなら!私はそれを叶えて見せましょう!」
私はこの2人の声を聞いていると少し希望が生まれてくる気がした。私は勝てないかもしれない。けれど気持ちでは負ける気はない。私はそう思いながら、2人を鞘の中に収めた。
『私は望む……全てを破壊し、全てを飲み込む気流よ……全てを守り……我が敵を滅ぼすために!我の前に顕現せよ! 呪憎大気龍』
私は刀を鞘から引き抜いた。その瞬間に刀の鞘のところから二頭の龍が現れた。ルヴァンシュの方からは真っ黒に染まった黒龍が、セイバーの方からは真っ白に染まった大気の龍がその二頭の龍がぶつかった瞬間あたりに強風が吹き荒れた。
私は憎しみの力を少し消費しすぎたようで肩で息をしていた。けれど私の目の前にはあの化け物にも敵うかもしれない龍がいた。体に真っ黒なオーラを纏い、大気を操り、化け物を南側に押しやっていた。
「お願い……時間を稼いで……!」
私はある一つのある作戦を思いついていた。私は過去の世界でルアタイルの母親を助けるために体を修復した。その力は現実世界になっても使えるのではないか。私はそう思いながらある場所へと向かっていた。
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「着いた……お願い……あと少しで龍も負ける……そうなる前にさっさと助けないと……」
私は今は誰も住んでいなかった私たちがもらった昔の家に戻ってきた。ここで私はずいぶん涙を流しただろうか。そんなことを思いながら私は扉を開けた。
私の前には氷の棺の中で眠る1人の少年がいた。私はこの少年を奪われたことで物語が一気に進んだ気がしていた。けれど私にはフェンが絶対に必要だと思い、生き返らせるために私はここへやってきた。
「もう……いつまで寝ているの……?もう起きる時間だよ……だからもう起きて!」
私はそう言いながら棺の蓋を開け、中にいるフェンに治療を施し始めた。フェンの体はコールドスリープされていたみたいに腐ってる場所はなく、死んで時間が経っていないような綺麗な状態が残っていた。
「お願い……お願い……」
私はそう言いながらずっと治療を施し続けた。やはり誰かが呼ぶ声が必要なのだろうか。過去の人たちも誰かがその人のことを願いそれが奇跡となったように再生を始めた。私は奇跡が起きることを願って治療を続けた。
「フェン……お願い……イシュディアが困ってるでしょ!早く起きて!もう朝だよ……だから……起きて」
氷織が私が背負っている鞘から抜け出してフェンの腕に収まった。その瞬間フェンの下半身が光り始めた。だんだんと失われていた下半身が再生を始め、ものの数十秒で体は修復した。けれど起きる気配ない。フェンの体が治ったからといって魂が抜けていたら意味がない。
「フェン……あなたにあなたの魂を返すから……さっさと起きて私に元気な顔を見せて……お願い」
私はそう言いながら体の中にある魂をフェンへと返すためにフェンに近づいた。私は仮面を無理やりあげて
フェンにキスをした。
その瞬間私の中にあった魂はなくなり、フェンの体の中に戻っていた。フェンの体の中に魂が戻って数十秒した後にフェンの瞼が開いた。
「うーん……ここは……?戻って……きたのか?」
私はその言葉を聞いた瞬間にフェンに抱きついた。私が本当に守りたかった人が戻ってきてくれた。私はその事実だけで満足だった。
「おっ……おい、イシュディア……ははっ魂の部屋でも現実世界でも泣き虫だな……」
そういってフェンは私の頭を撫でてくれた。私はそれが嬉しく、ただ泣くことしかできなかった。
「おかえり……おかえり……」
「泣くのもいいけどよ……外の様子はどうなってるんだ?もう避難は終わったのか……?」
私は今は戦いの最中だっていうことを思い出し、すぐに涙を拭って今の状況を話した。
「今は避難している最中。今は私の権能で相手をしている最中だから長く持つかわからない。だからフェンにこれを渡しておかないとね。」
私はそういって背中に背負っていた炎織をフェンに渡した。フェンはそれを受け取り、腰につけた。私が本当に取り戻したいと思っていた『断罪者』フェンが私の目の前で完全復活した。私がそのことを嬉しく思っていると爆発音のような音が聞こえた。
「グガァァァアァァァア」
そう言いながら私が召喚した龍は私たちの家を突き破り、墜落してきた。私たちが再会を嬉しんでいると私たちの目の前にもう化け物が近づいてきていたのだ。
「おーあれが、王様の成れの果てか……すげえ顔してるな……」
フェンは呑気にそんなことを言いながら逃げる準備はしているようで背中から翼を生やした。私も翼を生やし、空に飛び立った。
「さっさとケリをつけねえと、被害がとんでもないことになりそうだな……さっさと一番攻撃力が出る技で殴らないと王都が消えるんじゃねえか?」
「久しぶりに2人で戦うね。最近はずっと1人で戦ってたから少し嬉しいな」
私はそう言いながらルヴァンシュとセイバーを鞘から抜き、技を構えた。
「私から攻撃するね……」
『時空を裂き、命運を逆巻くものよ…我が二つの刃に宿れ、
風と憎しみの力!全てを喰らい尽くし、残すは勝利のみ。
我の力を、喰らい全てを吹き飛ばせ…
ここに示すは最強の証、起きろ!…ルヴァンシュ!セイバー!』
『神よ、我に今一度、この剣に力を与えたまえ…我に…力を…万物を切り裂け。
「雪華一閃」』
私とフェンの攻撃は途中でぶつかり合い、とてつもない威力になり全てを破壊しながら化け物に当たった。けれど化け物の体はそれでも仕留めきれなかった。
「くっそ……これでも……死なねえのかよ……」
「もう……打つてなんか残って……ない」
私とフェンの最大の攻撃を乗せても無理だった。もうどうやっても勝てるビジョンが見当たらなかった。私とフェンが思考を巡らせていると化け物が生まれて黒く染まった空に一つの星が浮かび上がった。その星は一つ一つと数を増やし始めた。
ある場所では門番がかつて訪れた旅人の安全を願ってそれが光になった。あるバーテンダーが魔王軍のことを聞いてきた少女の安全を願った。ある鍛冶屋は初めての武器を変形させた少女のことを思った。ある1人の領主が街を救ってくれたある調停者のことを祈った。王都の住人が住人を逃すために今も戦っている1人の少女のことを祈った。
その人たちの頭の上には星が浮かんでいた。その星が一ヶ所に集まり、大きな光となり、そのすべてがルヴァンシュへと集約した。
「すごい……ものすごいエネルギーが集まってる……なんで……こんなに?」
「それは……きっとみんなの祈りなんじゃないか?この世界の人はお前に希望を託してるんだよ。世界に抗うことができる人……イシュディアという少女を信じているんだ」
フェンがそう言いながら私の手の上にフェンの手を重ねた。その瞬間みんなの祈りと同じくらいのエネルギーが流れ込んできた。私の体の中にあった6つの魂もそのエネルギーに集まってきた。
「みんな……みんなありがとう……私が……私がこの化け物を倒す!」
「喰らえ……これが……世界の希望だ……そして私が復讐に生きた理由だ!」
私は希望を繋ぐために復讐に生きた。これ以上同じ悲しみを背負う人がいないように
そして私は全ての思いを背負い私は世界の希望の剣を振り下ろした———
NOCHESです。あと1話で完結します!明日の午前9時に最終話を投稿します!ぜひ見てください!
次回も頑張って投稿するのでよろしければブックマーク登録、感想、評価お願いします。それでは、次の作品へ行ってらしゃい




