[55話]ある管理者の少女の過去
私の前にアビス・アルギアが立ち塞がった。竜のような顔をしていて、身体からは憎しみとは違うオーラが滲み出ている。
「フェン……聞こえてる……?イシュディアだよ。返事をしてっ……」
私は生贄のされてしまった友の名前を呼んだ。しかし帰ってくるのは化け物特有の咆哮だけ……そこにはもう昔の友はいなかった。
「イシュディア……もうフェンは死んでしまったんだ……こんなのはもう死者への冒涜だ。僕たちの手で殺さないと……」
ルヴァンシュでさえアビス・アルギアのことを化け物といった。失ったものがこれほど近くにあるのに届かない。私はただ喪失感だけに囚われていた。
アルギアの右手が剣のように振り下ろされる。私はもう避ける気にもならなかった。もう死を受け入れてしまったのかもしれない。ああ…これで終わる……そんなことを思っていると体が急に動いた。
「まだ君は死んじゃいない……失ったものは取り戻せる……!これほど近くに来たのだから……手を伸ばせ!」
ルヴァンシュが私の体を動かして私のことを救い…私のことを元気づけてくれた。その時私は思い出した。私は英雄……イシュディアということを!
「私は英雄なの……だからすべて取り戻し……救ってみせる……!」
私はそう言って立ち上がり、アルギアへと斬りかかった。
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私は斬りかかるとなぜか聞いたことのある声で「痛い……」と呟いた。私は関わったのは数日だったが確実に調停者の一人『管理者』ルアタイルの声だった。
「どういうこと……なんで殺した相手が……」
私はその場で考えたが、おかしい話ではなかった。アルギアは調停者6人のことをすべて食らっているのだ。一人一人の魂が残っていて不思議ではない。
「痛い……痛い……誰か……助けて……」
アルギアからは助けを求める声が聞こえた。本当に死の危機に直面しているただの少女の声が。
「イシュディア……本当に助けを求めている声だけど……どうする……助けるの?」
私は葛藤していた。敵だった少女を救うのかどうか。けれどアルギアと攻防を繰り返しているとなぜか視界が白く輝き始めた。
「ここは……何処?こんな平原にいたはずじゃなかったのに……そうだ……!アルギアは……!」
私が辺りを見渡してもそこにはただ家がぽつんと建っていてそれ以外何もなかった。私はとりあえずその一件だけある家の元へ向かった。
「お前なんか……ルアタイル……お前が生まれてきたばかりに……この家族は呪われたんだ!」
家に近づくと中から怒鳴るような声とそれを止める声、そして泣く少女の声が聞こえてきた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
ルアタイルと呼ばれていた少女はただ父親と思われる男性にずっと殴り続けられていた。それを母親が止めようと必死だったが、男性は母親を無視し、ルアタイルを殴り続けた。
「やめなさい……!子供を殴って何になるの!」
「うるせぇ!誰だよてめえは。こいつが生まれてからこの家はずっと不幸が続いてるんだよ!この気持ちがお前にはわかるのかよ!」
ルアタイルの髪の毛を掴み空中にぶら下げ、私の方に見せてきた。私はそれをみていられず父親を死なない程度にぶん殴り、ルアタイルを引き連れて外ヘ出た。
「お姉ちゃんとっても強いんだね!尊敬するなあ……」
「どうして殴られているのに反撃しないの……?」
私はルアタイルは調停者になる前の話だと思いそう聞いてみた。
「私が反撃するとお母さんが痛い目にあっちゃうから……私が何もしないだけだったら私が傷つくだけだから……」
私は辛くなり、ルアタイルを抱きしめた。抱きしめるとルアタイルが震えているのが伝わってきた。
「お姉ちゃん……私ね夢があるの……王都にはね……調停者っていうかっこいい役職があるの……だからね私はそれになってお母さんにいっぱい幸せな思いをしてもらうんだ!」
私はルアタイルがこんな思いから調停者になろうとしていることを知り、私はルアタイルとその母親に夢を見せてあげたいと思った。
「お父さんってどうしてほしい?」
私はそうルアタイルに聞くとルアタイルは
「お母さんを傷つける人は死んでいいと思う。私が調停者を目指すのも父親を殺して母と一緒に暮らすため。」
ルアタイルはそう暗い声で言った。私はその夢だけだったら叶えてあげることができると思い、お父さんを殺すかどうかを母親にも聞いて行動を決めるため、家へ帰った。
家へ帰ると横になって倒れている母親と、包丁を持っている父親がいた。私はすぐにわかった父親が母親を殺したのだと。けれど思い違いがあるかもしれないので殺したかどうか聞いた。
「殺した。ルアタイルを連れ戻そうとすると猛反対したのでな……邪魔だったんだよ。」
私はその返事を聞いた瞬間刀を抜いた。父親の首が飛んだことは気にせず、母親の元へ向かい、急いで状態を見た。
「まずい……このままじゃ……」
母親からは血が大量に出ていて、傷口をふさがないといけなかった。けれど……どんな道具がここにはなく、ルアタイルとの約束を守れないと思ってしまった。けれどどこからか声が聞こえた。
『お主の力を使え。さすれば道は開かれん。』
私はその言葉を聞いた瞬間、怨霊の治癒能力の対象を変えられないか試してみるために能力を使った。
けれど失敗に終わった。私はもう一度挑戦した。けれど失敗した。それを何回も繰り返した。
「お母さん……起きて……!」
ルアタイルがその一言を言うとそれが呪文だったかのようにルアタイルの母親は回復し、息を吹き返した。その瞬間私はまたまぶしい光に包まれた。
目を開くとそこには一軒家が建っていた。そしてそ中から私が見たことある怨霊だった時のルアタイルと同じ年齢ぐらいの少女が出てきた。
「行ってきまーす!」
「ルアタイル……気をつけてね」
そう言っておばあちゃんがその少女を送った。私はおばあちゃんが私が救った母親で学生服を着ている少女がルアタイルということを理解した。
「調停者にならず……幸せに暮らしている未来があったんだね……よかった」
私がそういうとまた眩しい光が差し込んで来た。目を開けるとそこにはアルギアがいて、私の中にはなぜかルアタイルの魂があった。
「あれは…過去のルアタイルの話。けれどどうして私の中に、ルアタイルの魂があるの……まさか……調停者の暗い過去を事が出来たら……魂を取り返すことが出来る、もしかしたらこれが……アルギアの攻略法なのかも……」
私は理解した。魂に触れるとどうやら過去に飛ばされるようだった。そこで調停者たちの過去を変えることで未来を変えることができる。
アルギアが召喚されたという過去を変えることができる。そして魂を救うことができる。
「私がみんなを救うんだ!希望を決意に変えろ!私!」
私はそう決意をし調停者たちの過去へと足を踏み入れた。
NOCHESです。
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