[45話] 戦いの始まり
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あたりにあの日と同じような鐘の音が鳴り響いた。私はあの日のトラウマが蘇ってきた。泣き叫ぶ子供の声、助けを求める声、子供だけは助けてくれと泣き叫ぶ声。色々な声が私の耳に聞こえてきた。私は立っていることが出来なくなり、その場に崩れ落ちてしまった。
「あ…あ…また…失うの…やめて…やめ…て」
私はただやめてということしかできず、足が言うことをきかず立ち上がることができなかった。本当に足に重りがついたのではないかという重さが足にのしかかった。けれど、ある一言で少し足は軽くなった。
「イシュディア!君は調停者になったんだろう…!もう何も失わないと誓ったんじゃないか!だから…そんなことで…戦意を喪失したらダメだと思わないのか!君の助けを必要とする人間がまだ街にいるんだ。君は過去を嘆くのではなく…未来を見るべきだ!君は…過去の亡霊になるために怨霊になったんじゃないだろ…!間違ったことを正すためにここに立ってるんだろ…!」
私の相棒は戦意を喪失していた私に応援の声をかけてくれた。こんな過去に囚われている怨霊である私のことを励まし、そして尊重してくれる人が私の周りにはいることがわかっている。私は怖いと思っている足に鞭を打ち、その場に立ち上がった。
「私…は…私はもう何も失わないために覚悟を決めたの…!だから…私に力をちょうだい…ルヴァンシュ…セイバー…」
私は自分の弱さを克服できたと思っていた。けれどそれは間違いだった。だから私はこの世で一番信用ができる2人に協力を求めた。私はいつも1人では何も成し遂げることができない。自分の惨めさを知りながらも覚悟を決めた。
「主人が…決めた道を我々は切り開くためにあるのです。主人に求められるなら我は力を貸しますよ。」
「君は…本当に自分を卑下するね。僕は君についていくということを決めた。だから、君が求めるのなら僕も力を貸す。」
2人は私が求めていた返答以上のことを言ってくれた。私は2人に勇気をもらった。次は私がこの勇気を今襲われかけている人たちに分けてあげるために、背中から羽を生やして、街へ向かった。
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街へ向かってみると、私が貼った結界が効いているようでまだ敵は1人も入れていないようだった。私はそれだけを確認して領主の元へ戻った。
「大丈夫ですか…!今怨霊を討伐して街へ帰還しました。それで今の街の現状は…」
私はこの街が今誰によって攻められているのか、被害はどれほど出ているのかを聞くために領主の元へ向かった。私が今の現状を聞くと領主は曇ったような顔をし、私に話をしてくれた。
「状況は…最悪と言ってもいいほどだ。街の四つの出口を抑えられた。君が貼ってくれた結界のおかげで被害はまだ出ていないが、避難をすることができなくなってしまった。そして襲ってきた相手だが、おそらく…魔王軍だ…」
私は領主の口から憎しむべき相手の名前が聞こえたことに対して、とても驚いてしまった。けれどこれはチャンスかもしれない。昔は力がなかったけれど、今は力を持っている。だから今は相手に勝てるかもしれない。そう希望を持ち、討伐許可を領主からもらおうとした。
「領主様…今は私がこの街にいます。私1人でどこまで魔王軍を減らせるかどうかは分かりませんが、民間人が避難できるだけの敵は討伐してきます。魔王軍は私の故郷を滅ぼした憎しむべき相手なのです。どうか討伐許可を…」
私が領主へ許可を仰ぐと、領主は私に許可をくれた。けれど無茶をして死ぬことは許さないということをいい私を送り出してくれた。
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私は今、敵が一番多く集まっている北門の場所に来ていた。私は前にいる敵の数を見ながら少し肩を落とした。
「敵の数は…ざっと1万はいるね…ルヴァンシュ…私1人でこの数の相手をできると思う…?死ぬつもりはないけど…万が一のことがあるかもしれない気がする…」
流石に怨霊になった私とはいえ、1対1万という数字は流石に勝てないものがある。どうしようか考えているとルヴァンシュは口を開いて私に言ってくれた。
「イシュディアは…負けないと思うけど…再生能力は確実に使わないと負けると思うよ。あと…一体だけ、君と同じか、それ以上の気配を持った敵がいる。気をつけてね。」
ルヴァンシュが言った言葉を信じて気配を探ってみると、ここから真反対の位置にある南門の1km先に私と同等かそれ以上の気配があることが感じ取れた。
この敵は私が殲滅しないといけないし、この街に私以外で対抗できる人間はいないだろう。私はそのことを考えたら、ここにいる相手には時間をかけている場合ではないと思い、魔王軍の元へ向かった。
私は相手の前でルヴァンシュを地面に突き刺し、少しでも相手に恐怖を与えられる口調で話し始めた。
「貴様らが…魔王軍だということはわかっている!私の名前は…『制定者』イシュディア!もし、貴様らが、私の忠告を聞いて素直にこの街を攻めることを諦めれば、攻撃はしないし、追い打ちもしない。ただ…この線を過ぎた瞬間にそれは敵対行為とみなし、すぐさま殲滅にかかる!」
私はそう言いながら、セイバーの能力で、私と魔王軍の間の地面に10cmにも満たない亀裂を入れた。相手は何やら話こみ、私に向かって剣を抜き、こちらに走ってきた。どうやら交渉に応じて帰るということはしないらしい。
相手はたった数秒で私が入れた亀裂を飛び越えて、私に向かってきた。
「帰ることを選ばなかったことを後悔することになるぞ!
我に力を与えたまえ…融合する力は反発し…その力は…恐るべき力を生み出す…
20倍…10倍…200倍…起きろ…!ルヴァンシュ…セイバー! 」
私はいつも通りに対複数の相手の戦い方で一撃の200倍にまで引き上げた、攻撃で相手の軍隊の中に突っ込んでいった。私が中につくと、そこには突風が吹き荒れ、私を中心とした放射線状の亀裂が地面にできた。私の周りにいた数百体の人間は吹き飛んでしまった。
「お前らが、武力で対抗するというのならば、私はそれに応じ、武力でお前らを制圧する…!生きて帰れると思うなよ!」
私はそう言い放つと、私の力が溢れているのを感じた。私はカナルディアでのルヴァンシュの言葉を思い出した。怨霊は恐れられている人の数ほど能力が上がる。今ここにいる1万人のうちの5千人は私に恐怖を覚えて、震えているようだった。
しかし魔王軍という言葉にふさわしいように、仲間の死などを何も気にした様子などがなく、迷いなく私に向かってきた。けれど私は一人一人に対応していたら、南にいる敵が結界を破壊するかもしれないから私はもう一度大技を打ち込むために詠唱を始めた
「 刀よ…我の魂に根付く…憎しみ…呪いを…喰らい尽くせ…
結合せよ…反発せよ…我の力を扱い…我に力を与えよ…
神を…呪え…世界を…憎しめ…誓え…
起きろ…セイバー…切り裂け…風刃一閃」
私は一度セイバーを鞘の中にしまい、腰を低く落とし、相手の上半身と下半身を狙って、セイバーを鞘から抜いた。セイバーから出た、風の刃は私の周りにいた敵の体を二つに斬り、千人の命を奪った。
私が一度大技を放つと、残った数千の兵は私に背を向けて逃げるように走り出した。もちろん逃すつもりは一つもなく、後ろ姿を見せた敵は全て切り刻んだ。誰も立っていないことを確認した後、私は南門へ向かった。
せっかく、私の復讐対象が現れたのだから次はもう———逃がさない。
NOCHESです。
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