[42話]突然の来訪者
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翌朝、薄い朝日が窓から差し込んだ頃、私はまだ眠気の残る頭で目を開けた。
私がフェンの部屋を訪れるとフェンは氷織と炎織を大事そうに抱えながら寝ていた。昨日の会議は、あまりにも濃かった。
「……今日からか。」
与えられた仕事——“怨霊の討伐”。
人間ではない自我なき怨霊なら、私たち怨霊の匂いにさえ敏感なはず。迂闊に気配を漏らせば、すぐ仲間だと思われて寄ってくるだろう。けれど、気配を漏らしすぎたら誰かに気づかれる可能性さえある。
だがそれ以上に気がかりなのは、ルアタイル・ルカディア。彼女は気配を正確に嗅ぎ分けられる。昨日はどうにか気配を人間のようにしていたが、あれがずっと続くとは思えない。けれど私はルアタイルから私たちと似たような気配を感じた。
「……気を張らないとな。」
私が部屋を出ようとするとフェンが情けない声を出しながら起き上がった。
「お…?ルヴァンシュ…珍しいな。朝ごはん用意せずに俺の部屋にいるなんて…」
「いいや、昨日のことを考え直してただけ。結局どうするのが正解か分からなくてね…後…ルアタイルの対応…あの子が告げ口した瞬間私たちの処刑が確定するようなものだからね。」
「今日から別行動多いかもな。俺は重罪人の処刑が仕事になったけど……まあ、あのあと仕事内容の話で俺が殺す相手は多分逃げられる可能性がある"大犯罪者"って話だ。まあ暴れられる前に殺すから大丈夫だっての。」
「油断しないでよね…その気の緩みから普通にバレてフェンが処刑されるっていう可能性だってあるわけだからね…本当に嫌だよそれは…」
「大丈夫だって。俺はイシュディアより持っている憎しみの量が少ないからそう簡単にはバレないって。だから大丈夫だ。」
フェンはそう言って、不敵に笑った。
けれどそのとき——
コンコンと扉からチャイムが鳴った。
「ん?誰だ……?」
フェンが扉を開けると、そこには昨日私たちと会い私が要注意人物と言っていた人物が立っていた。
——『管理者』ルアタイル・ルカディア…。
「……朝からすみません…でもとりあえず言わないといけないことがあったので仕事まえに寄らせていただきました。」
声は落ち着いていて、それがどこか不気味さを感じさせていた。
彼はゆっくりと入ってきて、部屋の中央に立つと私たちを見た。
「昨日、自己紹介を聞いて思った。途中で普通の気配に戻ったけど、あなたたちたちの気配……普通じゃない。特にイシュディアからは私と同じ気配がする…後フェンからは少し弱いけど同じ感じがする…私は本当は怨霊…あなたちも…?」
一瞬、空気が凍った。私は相手が言っている意味がわからず少しフリーズしてしまった。
けれどフェンは少し驚きから速く解放されたようでルアタイルを応接室へと連れて行った。
「私の名前はルアタイル・ルカディア…『管理者』私はあなたたちと同じように怨霊…まあこの世界で気配を察知できる人がいなさすぎて私でも調停者になれたんだけどね。私が怨霊になったのは『ある出来事』のせい…まあ半分事故と言ってもいい。あなたたちは?」
そう言って彼女はフェンを指差して、答えるように促した。
「俺は…カナルディアで大量発生した怨霊を討伐している最中に薬を打ち込まれてそのまま怨霊になった。みてないかもしれないが、俺が大会で生き残れたのは怨霊化した時に強化された防具のおかげだ。まあ俺は怨霊になるつもりはなかったし、成り行きだな…」
ルアタイルは少し顎に手を当てて考え込んでいる様子だった。そしてギリギリ聞こえるか聞こえないかくらいの声で、「そう…あなたもこっち側なのね…」とつぶいやいた。私が「あなたもって?」と聞くとはぐらかされてしまった。
「それじゃあ私の紹介だね…私の名前はイシュディア…フェンとカナルディアで怨霊化したんじゃなくて、私の故郷、アウムが燃やされてその時に意識が憎しみ、悲しみ色々な負の感情に押しつぶされそうになって、それでどうにか意識を保っていたけど、怨霊化したっていう感じ…」
私もフェンも怨霊化する時に呪いの武器があると意識を持ちやすいということを隠しながら私はルアタイルにそう話をした。私の話が終わるとルアタイルは驚愕したような目で私のことを見ていた。
「アウムの生き残り…?嘘…あの街は全員死んだっていう報告があったはず…」
ルアタイルは下を向きながら、ずっと1人でぶつぶつ言っていると思いきやすぐに立ち上がって、席を立って玄関へ向かった。
「あなたたちは、私が他の調停者に言うかもしれないという不安はあるかもしれない。けれど、安心して。私は“悪者”にしか興味がない。あなたたちが何者であろうと、街を乱す気がないなら、私から処刑されることはない。」
そう言って背を向けたが、最後にこう続けた。
「ただし——
復讐を企んでいるのなら話は別だよ。私は“感情で動く奴”が一番危ないと思っている。」
ドアが閉じ、沈黙が落ちる。
「……バレてない、けど、まあ危険人物として扱われそうだね…これからの仕事はより一層気をつけて取り組まないとね。」
「だな。でも、“まだ様子見”ってとこか。」
私の胸には、焦りと同時に、妙な安心感もあった。
管理者は敵に回せば厄介だが、彼女なりの“線引き”がある。
しかし問題は山積みだ。
ルカ。オルター。オリヴァー。そして——暗殺者。私たちが戦ったら負けるかもしれない相手が山積みだった。
私たちの復讐が、いつ誰に妨害されるか分からない。
だから、もっと力がいる。もっと準備がいる。
「……フェン、今日帰ってきたら話がある。次の一手を考えたい。」
「ああ。俺も丁度言おうと思ってたところだ。」
フェンは外套を羽織り、重罪人の処刑へと向かった。
私は私で、怨霊の討伐へ向かわなければならない。
復讐の影は徐々に調停者たちへと広がり始めていた。
そして——
この日はまだ気づかなかったが、すでに街のどこかで新たな火種が生まれ始めていた。
それは、この街を“破滅に導く選択”をとった人がいたことだった。
***
ある王城での話———
「すみませんお耳に入れておきたい情報がございます。王様…」
「なんだ…?ルアタイル…?」
「最近調停者に入った…イシュディアという女…私が滅ぼした…街の一つのアウムからやってきたというと言いました。」
「まさか…!あのアウムの中に生き残りが…いたのか…?今は殺さなくていい…けれど、我々の不利益になるようなことがあれば…殺せ…今は、様子見でいい。私からしたら、新しく入ってきた調停者より、君のような調停者の方が代えが探しても見つからないからね…」
「わかりました…王様の意見に従わせていただきます。
王城でこのような話があった時…
この街の歯車は次第に狂い出した———
NOCHESです。
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