[18話]精神の部屋ともう1人の俺
塔の扉の先に広がる歪んだ宇宙空間で、イシュディアは空間を操る怨霊オルファズと対峙する。彼の語る“名付け”の力によって物理法則が書き換えられる中、仲間フェンが怨霊化させられたことを知り、怒りと憎しみに呑まれながらも覚醒するイシュディア。己がすでに怨霊である真実を明かし、オルファズを討ち倒すが、フェンとの再会が新たな試練となる。二人の運命が交わる時、希望か絶望か——それは神のみぞ知る。
***
私は怨霊の気配が2つになった西の塔に向かった。私は不安で押しつぶされそうだった。
「ルヴァンシュ…怨霊になって、自我を持っていなかった、怨霊が自我を持つことってあるの…?」
私は最悪の事態を想定しながら、ルヴァンシュにそう尋ねた。けれど…私も怨霊の記憶を辿ったけどそんな記憶はないことは知っていたけれど、私は何か神様のようなものに縋りかったらしい。
「ごめんね…僕は生まれて、使われたりしていたけど、そんな事を聞いたことがないよ。逆に自我持ちが、自我を失うという事象があったことは聞いたことはあるけど…今は関係ないしね…」
ルヴァンシュはそう言ってまた、解決策を模索するために、怨霊の記憶の底に沈んで行ってしまった。
「オルファズが言ってたけど、名前の上書きを行ったら、どうなるんだろう…?今のフェンは怨霊化して、名前を失った状態だよね。今フェンは名前が"ある"状態なのかな…?もし、名前がつけられていなかったら怨霊化を止められるように、名付けできないか、調べてみてくれる?」
私そうルヴァンシュに、お願いをした。もし、名付けで私たちの手にフェンが戻ってきてくれたらいいけど…もし相手の手に落ちていたら…
「考えることは、僕がやっておくから、イシュディアは…急いで西の塔に…頑張って!」
ルヴァンシュはそう言い残して、もう一度記憶の底に潜っていってしまった。
「フェン……無事でいて…」
私はもう死なせないと誓った相手の安否を気にしながら、西の塔へ向かった
***
———ここは…どこだ…俺は…誰だ…
俺は自分の名前も、どこいるのかも忘れてしまった。ただ、『氷織』と『イシュディア』この2つの言葉はなぜか、頭の中に残っていた。俺は、この真っ暗な空間から出るために、光に方向へ、歩き出した。
光に着くと、そこは出口ではなく、真っ白な空間だった。そこには、2つの大きな扉があった。片方の扉には、自分を信じ、自分の欲望を叶えるためならこの扉を開け放て。もう片方の扉には、周りを信じ、周りの願いをかなえるためならこの扉を開け放て。そう対極的なものが書いてあった。
「おいおい、これだけこの空間にいるのに、俺に気づかないのか…」
誰かはそう俺に言った。声の方向を見ると、そこには真っ白な人間が1人立っていた。
「お前は誰だ…?ここはどこだ…?」
俺はさっきからずっと気になっている事を人間に聞いた。
「俺は…お前だ。そしてここは精神の部屋だ。」
そう言って俺は俺に衝撃的な事を言った。俺が…この真っ白な人間?冗談も過ぎると、ただの悪ふざけだぞ…
「俺が…お前…これは一体どういう事だ!教えろ!」
俺はそう言ってなぜか腰を落として、何もない場所を握った。まるでいつもはそこに何かあったかのように。
「簡単な事だよ。この精神の部屋に入ってくる前の記憶が俺に詰まっていて、入った後の記憶はお前に蓄積されている。だから俺がお前で、お前が、俺。そういうことだ。」
相手は理解できるような、理解できないような説明を俺にしてきた。
「なんだ?つまりお前の記憶が戻れば、俺は普通の生活に戻れるのか…?」
俺は、俺にそう尋ねた。けれど、俺は首を振りながら答えた。
「俺は…残念だが、俺は怨霊になってしまったんだ。今の俺たちは怨霊なんだ…もう戻れない…」
そう言ってもう1人の俺は言った。俺が…怨霊に…そんなの嘘だろ…俺は…人間のはずだ…
「嘘だ…!俺は生まれた時から人間のはずだ!氷織と一緒にいたはずだ…なのに怨霊だなんて…嘘だと…嘘だと言ってくれよ…俺!」
俺はそう言ってもう1人の俺に言い放った。
「今までの記憶を持っていない俺は…まだ怨霊になりきっちゃいない。お前が、俺を取り込め。昔の俺の意思より強く…そして深い欲望を持っていれば…昔の記憶を持った俺に打ち勝つことができる。けれど、それは自我が消えないだけだ。怨霊になったらもう戻れないんだ…すまない…俺。」
そう言って昔の記憶を持った俺は俺に言った。けれど…何もわかっていない俺に…欲望はあるのか…?
「もし、お前の欲望に負けたら俺はどうなるんだ…?」
俺は昔の俺が言葉を濁したのが気になり、そう尋ねた。
「………う、記憶を失う。けれど、お前が勝てば俺の記憶と自我は戻る。」
昔の俺は俺にそう言った。
「無理だよ…何もわからない俺に…決めることは…できない。」
俺は昔の俺に言った。
「お前…お前は…本当に英雄を目指していたのか!イシュディアに言った俺は英雄になるというのは嘘だったのか!お前の覚悟はなんだ!嘘なのか!」
昔の俺は俺の胸ぐらを掴みながら、そう言った。そう言われた瞬間、断片的ではあるが、記憶の1部が戻った。カナルディアについてイシュディアと話した時のことを。
「そうだったな…俺は…イシュディアに…誓ったんだ。俺は…俺は…カナルディアを救ってことを!」
俺はそう言って昔の俺に覚悟を示した。
「そうさ、それでいい。覚悟が決まったようだなさあ俺を取り込め、俺が俺に戻るだけさ、気にするな。」
そう言って昔の俺は俺の中に溶け込んでいった。その瞬間とてつもない欲望に飲まれそうになった。けれど、俺は…俺の名前はフェン。誰よりも強さを求め、戦いを求めるもの。そう言って昔の俺に打ち勝った。
「ありがとう…俺。」
そう言って俺は昔の俺に別れを告げた。そして俺は、周りを信じ、周りの願いをかなえるためならこの扉を開け放て。という言葉が書かれている扉を開けて、精神の部屋から元の世界へ帰った。
***
———私は西の塔に着いた瞬間に階段を無視して壁を走って最上階へ向かった。
「お願い、フェン…無事でいて…」
私はそう言いながら扉を開けた。
そこには、立ちあがろうとしているフェンと1体の怨霊がいた。
「素晴らしい…素晴らしい憎しみだ。——おや…?お客さんですか…」
相手はそう言って私の方へ歩き出そうとした瞬間、『シャリン』そう音が鳴ると、怨霊の腕がゴトッという音を立てて床に落ちた。そこには、氷織を抜いて立っているフェンがいた。
「フェン…?あなたの名前は…?自分の名前を覚えてる…?」
私はそう言って泣きそうになりながら、フェンに尋ねた。
「まさか…自分で名付けようとさしてるんですかっ、、ダメだ。あなたの名前はア…」
「フェン。俺の名前はフェン氷の妖刀の氷織を使いカナルディアを救うもの。」
そう言ってフェンは相手が名付けをするのより早く自分自身で名付けを行なった。
フェンの周りから突風が吹き荒れた。風が止むとそこには、隊服のようなものと羽織を身につけた、フェンがいた。
「イシュディア…すまんな…迷惑をかけて。」
そう言ってフェンは私の肩に手を置いた。
「今、怨霊になったからわかるけど、イシュディアも怨霊だったんだな。あいつは俺がやる手を出さないでくれ。」
フェンはそう言って私に背を向けて氷織を鞘に収めた。
「散々、俺のことをコケに扱ってくれたな…アビスさんよぉ。」
そう言ってフェンはアビスの元へ歩いて行った。
「俺は、自分に名をつけるときに、願ったことが一つだけあるんだよ。もっと力が欲しいってな。」
フェンは腰を落として氷織に手を置いた。
「怨霊になっても、私に勝てるはずがないでしょう。フェンよ、私の手駒になりなさい!今ならまだ間に合う。」
アビスは後ろに下がりながらそう言った。
「誰に言ってんだよ…神よ、我に今一度、この剣に力を与えたまえ…我に…力を…万物を切り裂け。」
———『雪華一閃』
フェンはそう言って相手の背後に移動すると同時にアビスの体を粉々に切り裂いた。
NOCHESです。ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ 描く時間が大抵夜です。生活リズムが崩れました。今回はフェンを中心とした話になりました。次の日曜はまた2本投稿するので応援よろしくお願いします。
次回も頑張って投稿するのでよろしければブックマーク登録、感想、評価お願いします。それでは、次の作品へ行ってらしゃい




