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三年目の灯  作者: 禿鷲
影追編
7/12

06話 師匠を名乗る怪しい人物

2020年4月13日 水曜日。

 

 約束の日である。

 学校が終わり、家に帰宅した時点で、時刻は16時。約束の時は確か、夕暮れ時だったはず。

 まぁ、今から向かっても遅くないだろう。

 そう思い、玄関まで向かう。持ち物は……何も持ってかなくていっか。


「薫〜?どこいくの〜?」


 玄関先まできたところで、ばあばに話かけられる。


「え!?ちょ、ちょっとランニングでもしてこようかな〜って、、。」


 これじゃ嘘ってバレバレだ!いや、嘘をつく理由もないのかもだけど。


「ふ〜ん、。まぁ、夕飯前までには帰っておいで」


「はーい」


 そうして俺は家を出た。

 家から駅前の古本屋までは、約10分ほどである。古本屋へと向かいながら、海の方を眺めつつ、考え事をしていた。

 手紙の主、仮に母さんの師匠だとして、その人の手紙の中での口調は女性だった。ということは、女性の方なのだろうか。美人だといいなぁ〜。

 

 なんてくだらないことを考えていたら、あっという間に着いた。


 緊張した面持ちで、店に入る。

 カランカラン


「おーい、こっちよ〜!」


 店内から声をかけられる。声のする方を見てみると、こちらに手を振っている人物がいた。窓際の席だ。

 その人の座っている向かい側の席に座る。


「初めまして。私があなたに手紙を出した者よ。

名前は藤原まさや。絶賛彼氏募集中よ!!」


 その人は、銀髪のロングヘアをしていて、和モダンなスーツ風着物を着ていた。顔は整っており、中性的な顔立ちである。一見女性に見えなくもないが、そのガタイが男であることを物語っている。

 

 そう、"男"なのである。

 否、彼は、"オカマ"だった。


 思考が停止する。ん?ドユコト?私?彼氏募集中?


「あら〜、どうしたの?そんなに見惚れちゃってぇ、そんなに見られたら、私キュンときちゃう♡」


「うげぇ〜〜〜〜〜〜!!」


「ちょっとちょっとぉ!人の顔を見るなり、それは無いんじゃないのぉ!?」


――――――――――――


 コホン。気を取り直して。


「初めまして、藤原まさやです。絶賛かれ」


「いえ、その下りはもういいです」


 スパッと遮る。

 話が進まないからな。深呼吸深呼吸。


「初めまして。僕は磯野薫といいます。」


「あら、礼儀がいいわね。そういう坊やは好きよ♡」


「もう、そういうのやめてください。不愉快です」


「あら冷たい」


 なにが、あら冷たい。だ。


「それで、なんで僕をここに呼んだんですか?」


「ええ、そうね。それを話さなくちゃね。まずはおめでとう。凪さん……いえ、お母さん、無事に旅立てたみたいね。私としても安心したわ。」


 やっぱり。母さんを知ってるんだ。この人は。


「あの、母さんは、師匠に色々教えてもらったと言っていました。霊界のことや、成仏のことを。それってもしかして、あなたですか?」


「いかにも!あなたのお母さんがフラフラしていたので、私から声をかけたのよ。あなた、このままじゃ悪霊に成り果てるわよ?って。」


「なるほど……。それはどうも、ありがとうございました。」


「いいのよ。私はそれが仕事のような者なんだから」


「仕事?」


「ええ、まぁ。それはまた後で説明するわ。それより私があなたをここに呼んだ理由は、あなたの様子を見るためよ」


「僕の様子?」


「ええ。あなたのお母さんは、もし私が成仏することがあったら、もしそれで、傷ついていたら。どうか、息子の面倒を見てやってくださいってね。まぁそんな義理はないのだけれど、乗りかかった船だから、どうせならと思ったのよ」


 母さん、そんなことまで心配してくれてたのか…。

 少し涙ぐむ。


「そう言うことですか…。それなら、大丈夫ですよ。母さんの死を受け入れましたし、前を向くこともできています」


「そう、それなら安心したわ。んじゃ、私の仕事はここまでね。いい?このことは私たちだけの秘密よ?口外厳禁。わかった?」


「は、はぁ…。」


「それじゃ、元気にやりなさいよ」


 そう言って帰ろうとしている。え?これで終わり?


「ちょちょちょ、ちょっと待ってください!何帰ろうとしてるんですか!?」


「なによ、私の出番はここまでよ。それとも、何か依頼があるの?悪いけど、依頼料はいただくわよ。」


ちゃっかしいな!!


「違いますよ!僕の質問がまだですよ!」


「あらあなた、私に質問したいの?ガキのくせに生意気ね。」


「ガキは関係ないでしょう!?僕が聞きたいのはあなたの仕事についてです!」


 それを聞いた時、彼がニヤリと、一瞬笑ったような気がした。


「あら、気になるの?私の仕事。悪いけど一般人じゃ……あら、あなた……」


 急に目を細めてじっと見てくる。なんだこいつ、気持ち悪りぃな。


「そんな露骨に嫌な顔しないの。それより、あなたもしかして、何か病気患ってない?」


「な、なんでそんなこと」


「わかるのよ、私には」


「その人が病気かどうか?」


「いいえ、違うわ。その人の死期よ。大まかにだけどね。」


 ドクンと、心臓が跳ねるのがわかる。


「……実は、心臓病なんです。医者には、余命三年だって言われました」


「なるほどねぇ……」


 そしたらそのオカマは、だったら、任せてもいいかも……。などと、ぶつぶつ独り言を呟き始めた。


「あのー、なんですか?それで」


 そう話かけた瞬間、こっちを見るオカマ。


「あなたに耳寄りな話があるんだけど、どう?」


 怪しい。実に怪しい。


「うーん、まぁ、母さんの恩もあるし、聞きますよ」


「あら〜、ありがとう♡話がわかる男は好きよ♡」


 こいつ、合間合間に告白してきやがって。

 無視無視。


「それで、聞かせてもらいましょうか」


 それを聞いた彼は、こちらに向き直り、さっきまではなかった、真面目な面持ちになった。

 ……何かを悟ったように、まさやの瞳が細まる。

空気が一瞬、張りつめた。


「あなた、私の仕事を手伝わない?」


 それが、僕と藤原まさやの、最初の出会いだった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

それと、150PVありがとうございます……!

皆様が読んでくれていると思うと、

私としても励みになります!

さて、次回からいよいよ、"霊のプロ"としての話に入っていきますので、お楽しみに!

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