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三年目の灯  作者: 禿鷲
始まりの幽影編
3/11

02話 凪のお願い

「成仏?」


 僕は彼女の言ったことを反芻した。


「ええ。まぁ、詳しいことは明日説明するわ。今日は帰って寝なさい。」


 そう言って凪は立ち去ろうとする。え?これ、俺が手伝う流れになってない?


「ち、ちょっと待って!なんで僕が手伝う前提になってんだよ!僕は手伝うなんて一言も、」


 そう言いかけた時、凪がこっちを振り返る。


「手伝ってくれなきゃ、呪うわよ?」


 そんな!あんまりだ!


「そ、それが人に物を頼む態度か!それに呪うってなんだよ!怖い!」


 少しビビりながら反発する。その様子を見て、凪はふふっと笑う。


「冗談よ、冗談。でも、あなたは手伝ってくれる。私にはわかる。だって、あなたは優しいもの。」


「お前が俺の何を知ってるんだよ……。」


「まぁまぁ、いいじゃないの。とにかく、明日学校が終わったら、またここに来なさい。私はここにいるから。」


「ちょっと、まだ話は、、」


 話はまだ終わってない。そう言い終わる前に、凪は俺の前からフッと姿を消した。

 突然姿が消えるなんて、やっぱり幽霊なんだろうな。


「………とりあえず帰るか。」


 詳しいことは帰ってから考えることにした。

 もうクタクタである。

 その日はすぐに布団に入って、今日の出来事を振り返りながら、眠りにつく。



――――――――――――


 放課後。昨日の海辺へ会いに行く。

 もしかして夢だったんじゃないか。そんなことを考えたが、やはり、彼女はいた。

 彼女は相変わらず浮いていた。彼女はこの世のものではないのだと、改めて認識する。一体、何者なのだろうか。

 と、凪がこちらに気付く。俺だと気づいた途端、にっこり笑って手を振ってきた。


「おーーい!かおるくーーん!」


 遠くから俺の名前を叫んでいる。海辺なので、聞こえづらいな。

 波の音が、彼女の声をさらっていく。

まるでこの世のものではない存在の声のように、儚く。

 彼女のもとへ小走りで駆け寄る。


「ずっとここにいたんですか?」


「もちろん。私は暇なのよ。ずっとここにいたわ。」


 他にやることがないのだろうか。


「それじゃあ、詳しい話を聞かせてもらいましょうか。」


「やっぱ手伝ってくれるのね!」


「ま、まぁ、暇ですし。困ってる人がいたら見過ごせませんよ。」


「ほら、やっぱり優しい。」


 からかってるのか?こいつ。


「わかりましたから、早く話してください。」


「わかったわ。、でも、少し歩きながら話したいかも。砂浜を歩きながら話さない?」


「足がないのに歩くんですか?」


「ちょっと!人が気にしていることを!」


 そんなこんなで話を始めることにした。

 


―――――――――



 成仏の手伝いをするにあたって、わからないことが多い。そもそも、成仏ってどうやってするんだ?そこからだな。


「成仏って、どうやったらできるんですか?」


「そうねぇ、そもそも、幽霊が何か分かってる?」


「全然わかりません」


「じゃあまず、そこからね。幽霊っていうのはね、大きく分けて二つに分類できるの。未練がある霊と、ない霊よ。未練っていうのはつまり、この世に思い残したこと。それがあると、幽霊は霊界には行けないの。それで、幽霊が未練を断ち切って霊界に行くことを、成仏と呼ぶのよ。」


「霊界?」


初めて聞く単語である。


「あぁ、霊界っていうのはね、幽霊が集う場所よ。本来、幽霊はそこにいかなきゃ行けないのだけれど、私はほら、未練があるから。ちなみに、私たちが今いるここは、現界と呼ばれてるわ。」


尸○界みたいなものだろうか?いや、あれは死神か。


「なるほど。でも、現界も悪くないのでは?ずっと現界で過ごすのは嫌なんですか?」


「嫌じゃないわ。むしろずっとここにいたいくらい。でもね、幽霊が現界に長居しすぎると、いずれ悪霊になってしまうの。だから、幽霊は霊界に行かなきゃ行けないの。ちなみに幽霊が霊界に行くと、霊界に住むか、新しい命として生まれ変わるか選べるわ。」


 なるほど。


「つまり、僕に未練を断ち切って、成仏する手伝いをして欲しいと?」


「その通り!大正解!話が早くて助かるわ!」


 どこからか某クイズ番組の正解した時の音が再生される。


「はぁ、、。にしても、詳しいですね、凪。」


「まぁね。師匠に教えてもらったのよ。」


 えっへんと言わんばかりに、大きな胸を前に突き出す。師匠って誰だよ。死者の師匠か?まぁ、いいや。


「じゃあ、具体的に何をすればいいんですか?凪の未練を断つためには。というか、未練が何なのかわかってるんですか?」


「ええ。それだけははっきりしているわ。」


なるほど。それじゃあ話は早いわけだ。


「それで、未練って何ですか?」


「それは内緒。乙女のプライバシーよ!」


 ここまで来て何言ってるんだこの人!


「でも、僕が未練がなんなのかわかってないと、手伝いようがないですよ!」


「大丈夫よ〜。あなたは私のお願いを聞いてくれるだけでいいから。とりあえず、今度の日曜日、またここに来て?」


「ちなみに、何するんですか?日曜日。」


「うーん、買い物とか、動物園行ったり映画見たり、、あ!水族館も行きたい!」


「遊びたいだけなんじゃないんですか!?」


 てか日曜日に、男女2人でするって、デートじゃねーか!


「違うわよー!ちゃんと未練を断ち切ろうとしてるの!まぁ詳しいことは聞かないで、付き合って欲しいな?♡」


「もう、、。わかりましたよ。」


「ごめんね〜?ありがとう!かおるくん!♡」


「ち、ちょっと、抱き付かないでくださいよ!」


 そんなこんなで、俺は凪の成仏(デート)を手伝うことになった。

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