09話 夢を見せていた正体
自宅へと向かう道中、俺が気になったことがあったので、ふと聞いてみる。
「そういえば、まさやさんのこと、なんて呼べばいいですか?」
「ん?そうねぇ、、まさやちゃん⭐︎とか、ふっじー♡とか……」
「真面目に答えてください」
「もー、可愛げがないわねぇ……。師匠、とか?あなたのお母さんもそう呼んでたみたいだしね」
「うーん……不満は残りますけど……まぁいいです。じゃあ、師匠でよろしくお願いします」
「いいわね〜師匠呼び!かっこいいわ〜」
「そうですか?かっこいいかなぁ……あ、ほら、着きましたよ」
自宅に到着した。中に入ろう……って、待てよ。
良く考えたらどうやってばあばに師匠のことを説明しようか。僕に友達はいないから友達っていうのは変だし、かと言って「師匠です!」とか言ったらもっと怪しいもんなぁ。どうやって安全に入れるか……
なんでウジウジ考えてる俺を尻目に、師匠が勝手にインターホンを押す。
「あ、ちょ!なんで勝手に押すんですか!?」
「大丈夫よ〜。何をそんなに弱気になってるの?もしかして、幽霊怖い?」
こいつ、人が心配してやってるのに!
「はいはい、今行きますよ〜」
ばあばの足音が高くなってくる。これは終わったな。今日は諦めて後日来てもらうか……
玄関のドアが開く。ばあばが師匠の顔を見るなり、ぱあっと笑顔になる
「あら、あらあら、まさやさんじゃないの!この前は助かったわぁ!」
「いえいえ。大したことじゃありませんよ」
え?知り合い?
「今日はどうしたの?というか、どうして私の孫と一緒に?」
「この前のボランティアで知り合ったんですよ。今日は薫くんが家に招待してくれたので、遠慮なくこさせてもらったんです」
「あらあら、そういうことね!ささ、上がって上がって。今お茶でも入れましょうね」
「いえいえ、私は薫くんと少し話に来ただけなので、お構いなく。すぐに帰りますから。」
「あら、ゆっくりしていけばいいのに」
「ありがとうございます。じゃあ薫くん、部屋を案内してくれるかな?」
「は、はぁ。」
「薫、まさやさんに失礼ないようにね!」
「わ、わかったよ!」
そういうとばあばは、居間へ戻って行った。
「どういうことですか!?なんで師匠とばあばに面識があるんですか!?」
「私もこの街で楽に活動するには、やっぱり知り合いを作るべきだと思うの。だから、たまに街のボランティア活動に参加してね、交流を図ってるのよ。」
「その時に知り合ったのが、僕のばあばってことですか?」
「そゆことよ♡」
なるほど……
てかこいつ、外面はいいんだな………。オカマ口調出てなかったし……
「それで、あなたの部屋は?」
「階段上がってすぐの扉なので、ここです」
扉の前に立つ師匠と僕。師匠は深呼吸したかと思うと、何かを決心したような顔をした。
「じゃ、入るわよ」
扉が開く。そこにはもちろん、俺の部屋があった。何も変わらない。今朝見た景色と。強いていうのなら、少し散らかっているくらいだろうか。
「ふーん、なるほど……。で、あなたは?」
師匠に話しかけられた?
「え?いや、薫ですけど……」
「違う違う、あなたじゃないわ。そこのあなたよ。誰?なぜこの部屋に?」
師匠が何もないところに話しかけている。まさか……幽霊!?!?いやいや、そんなはずないか、
「師匠、誰に話しかけているんですか?まさか、幽霊とか言わないですよね?笑」
「あら、そうよ。見えないの?」
「見えるも何も、誰もいませんもん」
「そう……それじゃあ、私の肩に触れて深呼吸してから、私の指差す方を見てちょうだい」
まさかな……な。肩に手を乗せる
「ん……」
「な、なんで変な声出すんですか!」
「くすぐったいのよ!」
はぁ……。深呼吸する。スーッハーーッ。
目をゆっくりと開けると……
「え!?」
確かにそこには、何かがいた。
師匠の指を指す方向。そこには、学生服に身を包んだ男が立って、こちらを見ていた。
驚きで声が出ない。
「あなたが彼、磯野薫に夢を見せていた幽霊かしら?」
そいつは、こくりと頷いた。
「お前ら、俺が見えるのか……?」
「ええ。見えるわ。もっとも、私たち以外からはあなたは見えていないでしょうけれど。それで、あなたは何者?どうして彼に夢を見せていたの?」
「……俺は、俺の名前は斎藤蓮。折り合ってお願いがある。どうか、聞いてはくれないだろうか。」
そいつはそう言って、頭を下げてきた。おいおい、まじかよ…。
こうして俺は、初めての送灯師?としての仕事を始めるのであった。