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第八話 荘厳

 「おい!一回止まれよ!」


 廻斗は逃げる男をひたすらに追いかけていた。


 突然消えた喫茶店の定員と客、精霊の存在、そして何より高校での惨劇。

 廻斗が男を見たときに頭の中で渦巻いていたことだ。


 しかし追いかけてる今現在、それらの思考は薄れていっていた。

 なぜなら、ここに来るまでに人っ子一人見かけていないからだ。


 喫茶店だけの話じゃないとなると規模が段違いになり目的を達成するどころの話ではなくなる、

 そのため廻斗は冷静さを欠いて一心不乱に男を追いかけていた。


 「いい加減にしろよ!」


 廻斗は高校での戦闘で大分消耗していたため、体力が限界を早くも迎えようとしていた。


 そんな中、廻斗は疑問に思うことが一つあった。

 それは男の逃走ルートが常に開けた道であることだ。


 通常、本気で逃げようと思うなら裏道や路地裏を活用して撹乱させること、

 さらには曲がり角を曲がっても、そこまで差が生まれなかったこともおかしかった。


 これは誘い込まれているのか?…

 

 そんなことを考えていると、根性だけで動かしていた体は急に動かなくなり廻斗は膝をついてしまった。


 「あぁ!こんなとこで!…」


 動かない足を叩きながら、怒りをあらわにしてしまう。


 男は廻斗が動けなくなったのを確認すると、立ち止まり一枚の紙を投げ渡してきた。


 「おい!何だこれ」


 廻斗の言葉には耳を傾けようともせず、男は走り去っていった。


 「何なんだよまじで…」


 困惑と怒りが同時に湧き出てくる中、渋々紙を開く。

 すると…


 〈○○高校より南にある廃工場で待つ〉


 と書かれていた。


 ○○高校とはさっき戦った高校のこと、その南にある廃工場は廻斗にとってゆかりのある場所だった。

 

 その廃工場とは実は、斎藤と最後にあった場所だ。


 約2年前、廻斗は過度ないじめに耐え切れず学校を休むようになっていた、そんな中斎藤から少し会って話そうと連絡がきた。


 斎藤は孤立しそうになっている廻斗の傍にいようとしてくれたため、唯一の心のよりどころであった友人からの連絡を廻斗はとてもうれしく感じていた。


 そして約束の日、斎藤が放課後に制服を着たまま廃工場に現れた。


 「よう!、思ってたより元気そうで何よりだよ」


 「そう見えるか?」


 数日ぶりに会った斎藤は何だか凛々しく見え、今の自分が少し情けなく感じた。


 「ほら、ジュースとお菓子買ってきたから少し座って話そうぜ?」


 「あ、あぁ…そうだな」


 斎藤と他愛もない話をしていると自分の無意味な感情が洗われていくように感じた。


 「あのさ、今日話したいことなんだけどさ…」


 「うん」


 斎藤は少し言いずらそうに溜めるが、早々に口を開いた。


 「一緒にさ、あいつら(いじめっ子グループ)と戦わない?」


 「…」


 その瞬間、廻斗の心に現れた感情は嬉しみでも感動でもなく怒りだった。


 「は?」


 「馬鹿にしてんのか?」


 廻斗は唯一の友人であった彼に初めて怒鳴った。


 「え?…」


 「ごめん、変なこと言ったかな?」


 斎藤は困惑しながらも謝罪をした。 

 

 しかし、廻斗はお構いなく続けた。


 「僕はずっと戦ってきたさ!」


 「お前や他の子が代わりにいじめられないように頑張ってやってきたんだよ!」


 「お前が思っているより戦うっていうのはとんでもなく怖いことなんだよ!」


 「軽々しく言うなよ!」


 止まらず暴言を吐き続けた廻斗。


 「ごめん!」


 斎藤は間髪入れず謝ってくれた。


 それでも廻斗は立ち上がり、斎藤を無視して入口へと向かった。


 「僕はただ、斎藤と話せればそれで良かった」

 

 「これ以上何もしないでくれ」


 そう吐き捨てると廻斗はドアを開け走り出す。


 後ろからは必死に謝り止めようとする斎藤の声がする。


 今思えば、あの時の僕は斎藤に後ろめたさを感じつつ妬んでいたのだろう。

 なぜ自分がいじめられなければいけないのか。


 そんな僕を斎藤は救おうとしてくれたのに…


 悔やんでも悔やみきれない。


 そんなことを思い出しながら廻斗は立ち上がり、斎藤の手がかりを少しでも望みながら廃工場へと向かった。

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