第七話 怠惰
「お待たせいたしました、贅沢チョコプリンアラモードになります」
「ありがとうございます」
「ごゆっくり、おくつろぎくださいませ」
店員は足早に去っていった。
(まぁ、死んだ他人の心情なんか分かる訳ないし考えるのは止そう)
「いただきます!」
廻斗は逸る手を落ちつけながら、スプーンを取り早々に一口目を口に運ぶ。
(うまっ!! この味だ!)
心の中で大歓声が起こる中、口へとプリンを運ぶ手は留まることを知らなかった。
そんな歓喜に包まれる中、廻斗はこれからのことを考える。
廻斗の目的の一つであった高校での復讐はあの男に邪魔されてしまった。
そうなった今、残る目的はただ一つ。
消えた友人の捜索だ。
実は廻斗が高校で踏み込んだ教室には、たった一人の友人だった斎藤の死体がなかった。
斎藤は廻斗が高校をやめる前、1年生のころに仲良くなった同級生の子で廻斗にとっては唯一の友だった。
そのため、復讐の後にでも会えると思っていたがあんなことが起きてしまい、さらには斎藤だけの死体がないという事態と重なり余計に気が動転してしまっていた。
精霊使いがいたことと休んでいるところを見たことがない友人の死体だけがないこと、
この二つが偶然であるとは思えなかった。
何しろ、この目で斎藤の生死を確認するまでは捜索を続けるつもりだ。
(あっ、終わっちゃった)
そんなことを考えながらプリンを頬張っていると、気づけば容器の中は空っぽだった。
寂しさを感じながらもそろそろ行くかと店内を見回すと、店内に客が一人もいない。
「え?」
「誰もいない…おかしいな、さっきまで混みあってたのに…」
プリンに夢中になりすぎていた己の不甲斐なさを反省しつつ、この異様な状況に混乱している。
「あのーすいません!、店員さんいらっしゃいますか!」
大声で店員さんを呼び掛けてみるも反応がない。
警戒しながら席を立ち、恐る恐る入口へ向かう。
「あのー、1300円ここに置いておきますねー」
返事が返ってこないのは分かっているが、とりあえずお金を置いて店を出る。
「あれ?雨止んでるじゃん」
店の外は太陽が顔を出し始めていて、だんだんと晴れてきてた。
「ん?」
今の状況は喫茶店の中だけの話なのかと店の外を観察していると、こちらを見ている男が遠くに立っていた。
「あ、おい!」
こっちが視線を向けると男はすぐに走り出し、さらに遠くに逃げてしまう。
「おい、待て!」
あの男が今の状況に関係ないとは思えず、廻斗は咄嗟にそれを追いかけてしまう…