第六話 平常
さっきまでの暑さが嘘だったかのように、空は曇り肌寒い天候になってきた頃。
「あーあぁ、まじで疲れた…」
そう言って伸びをしながら、廻斗は校舎から出てきた。
戦闘の後
廻斗は男を床に寝かせ、顔にハンカチを被せて手を合わせてその場を後にした。
生徒たちがいつ殺されたのかはわからないが、警察に通報が入るまでそう長くないだろう。
「冷たっ!」
靴ひもを結んでいた廻斗の首に雨水が降ってきた。
「まじかよ」
「ついてねぇな…」
急いで紐を結び、勢いよく校門を飛び出し走り出す。
(えっと、この辺り確か…)
曖昧な記憶を頼りに目的地を探す。
(ここの通り右に行ったところに確かあった気が…)
傘を差し始める人たちを避けながら走る。
「あった!」
廻斗がやっとの思いで見つけた先には、一軒の喫茶店が建っていた。
呼吸を整えながら店内へと足を運ぶ。
「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」
「一人です」
「一名様ですね、お席へご案内します」
平日の昼間といえど、思ったよりも混んでいる。
入口の傘立てに濡れた傘が何本か刺さっていたため、同じ雨宿りの人が駆け込んで来たのだろう。
(やっと一息付けた感じだな)
案内されたのは窓際の端の席で、何とも言えない安らぎを感じられた。
(来る気なかったけど、これを食べれるなんてラッキーだな)
廻斗はメニューに軽く目を通すと、迷うことなく店員さんを呼んだ。
「ご注文お伺いいたします」
「この贅沢チョコプリンアラモード一つ下さい」
「贅沢チョコプリンアラモードがおひとつ、以上でよろしいでしょうか」
「はい、大丈夫です」
「かしこまりました、少々お待ちくださいませ」
(はぁ~楽しみだな、一年ぶりくらいか)
この喫茶店を覚えていたのは一年ほど前に外出した時、何気なく入ったこの店で食べたこのプリンの味が衝撃的で忘れられなかったからだ。
(パーカーもびしょびしょになっちまったな、まぁ元々とても人前で着れたもんじゃないけどな)
ここに来るまでに2度、廻斗は殺人をして血で服を汚してしまっていた。
電車内での殺戮と高校内での戦闘、裏返してパーカーを着ていたがもう隠せなくなっていた。
(ズボンがあまり汚れなかったのが救いだな)
(にしても、なんであの男は高校の生徒を皆殺しにしたんだろう…)
「ザァァー!」
店の外では雨がひとしきり強くなってきた。
遠くのほうからパトカーと救急車のサイレンが近づいてくるのが薄っすらとわかる。