第三話 遭遇
陽が昇りだんだんと気温が上がってきた昼下がり、廻斗は高校に着いた。
「まじで遠すぎるだろ」 (途中で電車飛び降りたからか)
そう愚痴をこぼしながら高校に足を踏み入れた。
廻斗が自殺に追い込まれた原因、その一つが高校でのいじめだった。
自宅から少し離れた町にある偏差値平均的な高校に入った廻斗は、既知の友人がいないことを憂いていた。
入学から少し経った頃、部活に入り友達もできて順調そうに見えた学校生活。
しかし、ある時を境に急変した。
クラスの3,4人の男子グループのいじめの対象になってからだ。
机の落書き、私物の盗難、よってたかっての暴力。
いや、そんなあからさまないじめじゃなかった。
もっと陰湿だ。
ラインのグループからの強制退会から始まり、クラスでの陰口や誹謗中傷発言、あらぬ噂を立てて孤立させようとしたり、挙句の果てには僕の仲のいい友達を故意に遠ざけ居場所を奪おうとした。
標的にされた理由は大体わかっていた。
ただ単純に僕の【優しさ】が気に食わなかったのだろう。
自分で言うのも何だが、僕は出会った人には基本優しくすることを念頭に置いて接していた。
それもあってかクラスのほぼ全員と仲良くできていた。
ただ、そいつらを除いて。
そうして僕はまんまと乗せられたルートどうりに進み、学校に行かなくなった。
それから数か月が経ちクラスが変わった時もトラウマは消えず行くことはできなかった。
いつからか僕の中からは優しさという感情は消え去ってしまった。
そして心に残ったのはすべてを失った虚無感と人と関わることに対する恐怖だった。
ただ、今は違う。
復讐と怒りに塗れた心はかつての感情を消し去った。
そんなことを思い出しながら廻斗は校舎の中に入っていった。
「今は3年だから3階か」
学年ごとに階数が上がっていくため本来のクラスは3階にある。
「斎藤、元気かな」
仲の良かった友人のことや、こんなに校内静かだったか、
なんてことを考えながら階段を上り3階に着いた。
(緊張するな)
踊り場で息を整えてから教室へと足を運んだ。
自分が死ぬ前に踏み出せなかった一歩だ。
「は?、なにこれ」
やっとの思いで入った教室
そこには懐かしさは無く、綺麗に机に置かれた生首とさながら授業を受け先生の話を聞くかのように椅子に座っている制服を着た体があった。
「…」
言葉を失い、動揺が隠せなかった。
床一面の真っ赤な血、やけに綺麗な廊下、そして学校全体が同様の状況であること。
間違いなく人間の仕業じゃないと思った。
それと同時に精霊の存在が頭にちらつく。
「珍しいね」
見知らぬ人の声、それと同時に感じたことのない殺気を覚えた。
振り返るとそこには…