プラートンの洞窟
前文のエルフの出番です。
チリン、オークの木のドア開こうとすると、微かに隙間を見せるだけで、中々開いてくれません。
「君んとこのドアは相変わらずだな、俺を見ると重くなる。全く呆れたことだ。」
と、軽いため息をつきながら、黒髪の青年は荒い石のドアフレームに体を任せ、部屋の主人がドアを開いてくれるのを待った。
「パタンッ!」「痛って!」
あまりの勢いで開いたドアがぶつかり、飛ばされそうな所、廊下の手すり支柱に素早く掴まえた青年は、一層呆れた声で訴えた。
「間一髪だったぞ!危うく死ぬ所だった。」
「ノノタックに来て十年にもなろうとする者が、未だにここのドアが押し出し型だと覚えられない方がおかしいだろう。」
「しかも何百回も押し出されて、地下32階から落ちそうになっているなら尚更だ、朱文。」
「それより!僕を引っ張り上げるのが先っしょ!手が滑りそうなんだ!」
やっと友人に手を貸すことを思い出した青年は長く、先の尖っている耳の持ち主だった。
「ふう〜生きかえったよ。」
朱文と呼ばれた青年は深呼吸をして、友と部屋に入った。気難し屋のドアは縁にある小さい触手たちを動かせて、元の位置に自分を嵌めた。
「本当何回見ても飽きないな〜君んちのドア!不思議な締め方をする。」
「他も大して変わらないだろう」
「いや、他はもっとこう〜、ん…」
考え込む青年に水を出しながら、部屋の主は彼の思考を遮った。
「薬はまだ終わってないはずだが、何か用事か。」
結局何も思い出せなかった朱文は手帳を出し、最近書いたページまでめくって、
「ああ、プラートンの洞窟内で変死体が見つかったらしい、ここに近いから、通る時は注意しろっだった!やっと思い出した!」
「ふん…黒魔女の仕業か、教団の残滓か、もしかすると…」
「おい!テオリア、僕の話は聞かんかったか!あれはこれまでとは違って、プラートンの洞窟をどう変えちまうのかわからんぞ!」
残念ながら、部屋中の本棚や積み山を探り始めたテオリアはその忠告に耳もくれなかった。
「見つかった!これが洞窟の謎を解く鍵になるかもしれない、朱文、ちょっと出かける。」
と、手に古びてインクの掠れた、便箋紙ほどの紙切れを慎重にポケットに入れ、端がボロボロのコート素早く羽織り、葦でできたカンカン帽を目深に被った。気難しいドアも、主人をよくわかっているようで、素早く触手で石のドアフレームを掴み、それを軸に体を軽快に回転した。友人の行動を止めようとして、座っている本の積み上げから立とうとしたが、勢いのあまり崩れた本の山に行気を取られている朱文を後にして、テオリアは姿を消した。
「全く、アイツって奴は!」
と朱文は言いながら、ふっと気付いた。
「つーか、おまえ普通に開けたんかい!」
プラートンはアフターシルル特有の貨幣だけでなく、墓地としてかなりの間使われていた洞窟の名前でもある。その由来は、ノストレピス、すなわち、アフターシルルが位置する都市の成立のきっかけとなったプラトン主義学者の名前:プラートンからきている。