祝砲
あき地に
群れて咲く鉄砲百合が
水気の残る空を仰ぎ
白い空砲を撃つ
まだ いとけない
夏の香の硝煙
透明な響きが輪になり
空気を震わせている
綻びたアスファルトは
小さな水たまりを
いくつも忍ばせ
呼びとめられた
黄色い蝶だけが
その在処を
正確に知っている
いびつな水鏡を
覗き込む
見つめ合う一対
うすい翅は
洗われた陽の光を通し
水面の過去を揺らして
軽やかに風に乗り
青い夏へ飛ぶ
振り落とした
一滴のつくる
波紋は合図
次々と放たれる
祝砲が
聳え立つ雲に
吸い込まれていく
23-4-20 23:36
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