HEROs
艦隊シリーズとはまた違う小説ですが、王道のバトル小説を目指して書いてみました。初めての試みなのでなれない点もありますが、楽しんでいただけると幸いです。
良かったら感想とか書いていってもらえるとありがたいです。
2025年 スマートフォンの正統進化品として登場したクレヴァーフォンは、電脳空間への接続が容易になり、またたく間に普及した。そんなクレヴァーフォンの開発元が資金繰りのために作り出したゲーム、HEROsは大人気で、社会現象となった。これはそんなHEROsで頂点を目指す男の物語である。
「おらっ!ザコめ。」
路地裏で、特攻服に身を包んだ男たちが、子供をいじめている。HEROsはランク制で、今シーズンはなぜか格下を倒しても同格と同じくらいのポイントがもらえていたため、こうした初心者狩りが横行していた。
「く、くっそ〜!」
「その腕じゃHEROsに向いてねぇ。諦めな。」
「な、なんだと!」
「威勢はいいけどよぉ!また俺の餌になるのかぁ?どっちがいいんだぁ?」
「ううっ……。」
「お前はここで永遠に俺に狩り続けれられるのさ!助けてくれるやつなんか誰もいないぞ!」
「いるさ!ここに一人な!」
真っ赤なスーツを着た男と、その連れの可愛らしい女の子が路地裏にくる。
「変身しろ。俺と勝負だ。」
「な、なにもんだてめぇ!」
「俺は松永真。世界一を目指すプレイヤーだ!」
「世界一だとぉ?舐めやがって!俺は路地裏の辰だ!いざ勝負!」
二人がクレヴァーフォンを構える。これがHEROsの変身モーションである。
「変身!」「変身!」
二人の意識が電脳空間につながる。連れの可愛らしい女の子がどこからか椅子を出し、松永と辰を座らせる。そして、クレヴァーフォンの観戦モードをひらいた。
「君、名前は?」
「葵。日向葵っていいます。」
「そう。こっちに来て一緒に観戦しよ。」
「う、うん。」
「私は環奈、斉藤環奈っていうの。よろしくね。」
「よろしくお願いします。あの、助けてもらって何ですが、彼はここらで有名な悪なんです。逃げたほうが……。」
「いいの、彼なら勝てる。見てなよ。」
二人は鎧を着たヒーローの姿になっていた。
「こっちからいくぜぇ!」
辰は片手剣を召喚した。HEROsでは腕に装着したクレヴァーフォンで何でも呼び出せる。その自由度が売りのゲームである。
「おっと。あぶないな。」
真は華麗なステップでよける。
「く、くそ!当たらねぇ。避けるんじゃねぇよ!」
「動く敵とは経験不足かね。」
「ならこれならどうだ!」
今度は槍を構えてつついてくる。
「見える!」
槍を指で捉える。
「う、動かねぇ!なんてパワーだ。」
観戦していた葵が口を開く。
「お兄さんすごい強いね。」
「当たり前よ。彼はすごいんだから!」
「くそ!ならこれでどうだ!」
こんどはハンマーをとりだす。
「押しつぶしてやる!」
「足元がお留守だな。」
足払いして、転ばせる。ハンマーを持っているせいで、バランスを崩して転ぶ。
真はクレヴァーフォンに入力する。短剣が2本出てくる。
「ではこちらも行かせてもらう。」
一本を投げつける。
「あぶねぇ!」
間一髪で避ける。だがその瞬間一気に距離を詰めて斬りつける。
「なに!」
「これでおしまいだ。」
短剣は鎧を割り、ダメージを与えた。
「あ……あっ……。」
二人は電脳空間から抜けていた。
「よっ!おはよう。気絶してるとこ悪いがね、君の負けだ。」
「くそぉ!兄貴なら、兄貴ならお前なんて一瞬で……。」
「戦いを見させてもらったぞ!辰。」
見上げるそこには筋肉モリモリの男がいた。
「兄貴!こいつをやっつけてください。」
「馬鹿者!弱い者いじめをしてた貴様は許せん。」
「す、すみません兄貴。」
「謝る相手が違うやろがい!」
「うぅ……。すまなかった。」
「え、うん。」
「よぉし。俺からも謝罪する。うちのもんが迷惑かけたな。」
「いいの。もう済んだことだから。」
「なんていいやつなんだ。恩に着るぞぉ。ところでだ。」
彼は真のほうを見る。
「俺とも手合わせ願いたい。」
「いいぜ。」
「俺は天王寺。ここの縄張りの長だ。いざ勝負。」
「変身!」「変、身」
「ナイフ使いらしいな。」
「ああ。」
「驚いたぜ。相当な実力者と見た。だからこっちも本気で行かせてもらう。」
天王寺はG3SASを取り出した。銃はこのゲームでは最強の一角で、ランクがゴールド以上でないと使えない装備である。
「いくぜ!」
G3を乱射し始める。G3はドイツ製の傑作小銃で、さらにストックを切り詰めることで、取り回しを良くしている。
「いいね。ナイフの天敵を持ってくるとは。」
松永はナイフで弾を弾きながら物陰に隠れた。
「なんて腕だ。弾を弾くなんて……。」
「こっちも行かせてもらう。」
咄嗟に走り出し、敵の懐に潜り込む。そして斬りつける。だがそれは防がれてしまった。
「その手は俺には効かないぞ。」
天王寺もナイフで応戦してきた。
「銃とナイフ。最適な構成だな。」
「この腕で、ここらをまとめ上げてるんだ。」
「納得の実力だ。では必殺技で勝負しようじゃないか。」
「面白い!」
二人はクレヴァーフォンに入力をする。
「必殺!エネルギーバレット!」
「必殺!メッサークライス!」
天王寺の必殺技、エネルギーバレットは戦闘中に充填されるエネルギーを球状にして、G3で撃ちだす技である。エネルギー主体の技で、実弾のG3の弱点を補う必殺技である。
そのエネルギー弾が、高速で松永に襲いかかる。
「さぁ!どうする?隠れても無駄だ!こいつはすべてを貫くぞ!」
だが、その瞬間、彼は飛び上がった。
これこそ、彼の必殺技メッサークライスの特長である。空高く飛び立ち、相手を中心に円形にナイフを投射する。そして、それが体を貫く。
ダメージこそ低いが、命中率の高い必殺技である。
「何!?しまった!」
「これで最後だ!」
必殺技の炸裂直後、松永は頭上から斬りかかる。
「く、くそ!」
戦闘は決着した。松永が勝利した。
「すげえよ、お前。」
「お前もな。素晴らしいバトルだった。」
松永は荷物をまとめて去ろうとする。
「待て!お前はもう去るのか?」
「いや、しばらくはこの街に留まる。少なくとも半年後の大会まではね。」
「ほう……。それは楽しみだ。また来いっ!また鍛錬を積んで今度こそは勝つ!」
「あぁ!」
両雄は握手をした。若人の熱き魂が路地裏で燃えていた。
「全く。いきなり路地裏に入って、何が『いるさ!ここに一人な!』よ。」
「いやーすまんすまん。つい、な。」
二人は路地裏からでて歩いていた。その後ろに、葵がついていた。
「あの!松永さん。」
「おお、なんだ少年?」
「ありがとうございました。」
「気にするな。君もきっと素晴らしいプレイヤーになれる。頑張れ!ではな。」
「まっ、待って!」
「んん?なんだ?」
「僕に……。僕に戦い方を教えてほしい!」
葵は頭を下げる。
「む……。それはそうだな……。」
松永はチラッと環奈を見る。
「いいんじゃない?教えるとさらに強くなれるかも。」
「君がいいならいいか。よし!お前は俺達の仲間だ!」
「あ。ありがとうございます!」
HEROたちは戦い続ける。それぞれの夢に向けて。
その先に待つものとは一体何だ。
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