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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

バニーなギャルズのバーへ出撃せよ~徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!~

作者: 犬尾剣聖








 サンド島の首都、ドンローの街には有名なネオン街がある。

 色鮮やかな色彩を放つ魔法のライトが惜しげもなく輝いている。

 魔族との戦争中とは思えないような空間がここにはあった。


「バルテン軍曹、あそこだよな。あれが“バニー・ギャルズ・バー”なんだよな」


 肌の露出の激しいウサギ耳の女性をかたどったネオンが、ピンク色に輝いている。

 見るからに派手派手な外見なんだが、俺の心をそして下半身をも揺さぶっている。


「そうですぜ、あそこがお目当ての店ですぜ、うひひひひ」


 バルテン軍曹がいやらしい笑いを漏らす。

 俺は後ろに控える人物二人にも声を掛けた。


「ソーヤ、それとリ、リッキー・アンデロ少尉、よそ見してないで行きますよ」


 ソーヤはまだ以前の彼女の事が忘れられないらしいから、心のケアの為にも強引に連れて来た。

 リッチ少尉を連れて来たのは面白そうだからである。

 だって、あの堅物のリッチ少尉が女性の前に出たらどうなるか見たいじゃん!

 それが理由だ……

 それと緊急時の用心棒でもある。


 店の前に来ると、呼び込みと言われるいかにも胡散臭うさんくさいおっさんが俺達にいやらしい声を掛けてきた。


「社長、どうです、寄って行きませんか。可愛い子いますよ」


 車長ではあるが社長ではない。


 ここは顔が利くっていうバルテン軍曹に頼むとしますか。

 俺はバルテン軍曹の脇を小突く。

 すると慌ててバルテン軍曹が前に出て話し出した。


「おお、前に何回か来たことあるんだけよ。俺の事覚えてるよな?」


 すると一瞬キョトンとした表情を見せるも、呼び込みのおっさんは直ぐに揉み手をして笑顔で答えてくる。


「はい、はい、そ、そりゃもうねえ。いつもありがとうございます。えっと4名様でよろしんですかね?」


 このおっさん、すんなり受けたけど本当に覚えているんだろうか。

 リアクションが馴染みの客相手って感じじゃないよな。

 ま、ここはベテランのバルテン軍曹に任せるか。


「そうそう、今日は4人なんだけどな。団体割引ってことで安くならないか?」


 するとさらに揉み手が激しくなるおっさん。


「そうですねえ、それならお一人様40分で700シルバのところ、団体割ってことで最初の40分はお一人様300シルバでどうでしょう?」」


「よおし、それで頼むぜ!」


 すげえ、バルテン軍曹、半額以下にしちまったぜ。


「はああい、4名様ご来店です。ボーイさん、よろしく~」


 おっさんは笑顔でボーイさんを呼ぶと、俺達を店内へと案内させた。


 暗い通路を抜けるとそこは別世界だった。

 俺はちょっとショックを受けた。

 世の中には、こんな世界があるんだと!


 店内は俺の想像を遥かに超えていた。


 壁一面にはきらびやかな細工や文様が描かれているし、天井には星空の柄が描かれている。

 それも星が魔道具らしいランプで輝いて見える。


 俺達4人はボックス席と呼ばれる席に案内された。

 座ると体が沈み込むような椅子だ。


 案内されると直ぐにボーイさんがお絞りを渡しながら「お飲み物は何にされますか?」と聞いてきた。


 よくわからずバルテン軍曹をチラリと見ると、任せろ言わんばかりにしゃべり出す。


「そうだな、とりあえず冷えたビールを人数分頼む」


 ビールか。

 アルコールは久しぶりなんだが大丈夫かな。

 酔った勢いでドランキーラビッツというチーム名を決めた時が最後だ。

 あれ以来、禁酒していたんだっけ。


 直ぐに冷えたビールが金属ジョッキで運ばれてきた。

 それを持って来たのがバニーギャルだった!


「いらっしゃいませ~、お隣に座っても良いですかぁ」

「失礼しーす。隣すわりますねっ」

「こんばんは~、横すわりまーす」


 次々に俺達の隣に座って来るバニーギャルたち。

 よく見れば耳と尻尾は作りものだ。

 しかし4人目は本物だった!

 本物のうさ耳に短めの尻尾!


 そのうさ耳娘が俺の隣に来て言った。


「あなたが隊長さんみたいねえ、お隣、失礼しますね――」

 

 そう言えば軍服だったな。

 階級章で俺が一番上官だとバレたようだ。

 だが、おかげで一番可愛い子が隣に来た。

 それも本物のバニーギャルズだ!


「よいしょ――あ、間違えちゃった~~、きゃははは」


 そう言って、お俺の膝の上に座ったのだ。

 恐らくこれはお約束だったようで、他の3人のバニーギャルズも「キャッキャ」言っている。


 俺にしたらスタートダッシュでいきなり80㎝列車砲を喰らったかのようだった。

 早々にしてテンション・マックスだ!


 その後も彼女らの盛り上げ方が物凄い。

 手慣れているというか、最早これは芸だな。

 一人がボケれば必ず誰かが突っ込み笑う。

 すると釣られて俺達もついつい笑ってしまうマジック。


「あの~、私達も一杯ごちそうになってもよろしいですかぁ」


 両手をあごの所で握り締めておねだりしてくる。

 そうすると深く切れ込んだ衣装の胸元が寄せられて、そりゃあもうあれだよ、あれ。

 テンション・ハイパー・マーックス!


「いいよ、いいよ、飲んで、飲んで。一緒に酔っぱらおうよ」


 思わずそう返してしまうマジック。


 盛り上げっているのは俺だけかと思ったら、そんな事もない。

 ソーヤが顔を真っ赤にしながら、隣のバニーギャルズの胸元を見ながら会話している。

 巨乳好きみたいだな、ソーヤ。

 でもな、人と話をするときは相手の目を見るんだろ!


 バルテン軍曹は想像通り、いつもの強面は消えてデレっとしたユルユルな表情で楽しんでいるな。


 さて、ならば問題のリッチ少尉はどうか。

 見れば表情はいつもと変わらない。

 あの地獄の底の吹き溜まりを感じさせるような、いつものドス黒い雰囲気は変わらない。


 だが、笑っている!

 見る者に恐怖を与えるかもしれないが、あれは絶対笑っている!

 飲んでいるビールがほほに空いた穴から漏れ出るが、薄気味悪く笑っていやがる。


 隣のバニーギャルズも凄い、

 明らかに怖がっているのは見え見えなんだが、しっかり引きつった笑顔で対応している。

 俺はプロ根性というものを感じた。


 俺も戦場ではどんなにつらい時でも、ああやって笑顔でいなくちゃいけない時もあるんだよな。

 などと思いながら隣のバニーギャルズの胸元を見ながらビールをグイッとあおった。


 俺の隣のバニーギャルズが突然言ってきた。


「あ、そろそろお時間だけどどうするぅ。この後にショータイムもあるんだけどなあ」


 とか言ってくる。

 ショータイムってなんだよ。

 俺は再びバルテン軍曹を見る。

 

「モリス中尉、バニーギャルズがステージで踊ってくれるんですよ。どうです、うぃ~、見ていきますか?」


 そんなこと言われれば断る理由が無い。


「うぃ~、見る見る、見て行こうぜ!」


 俺は張り切って答えた。





 楽しい時間というのはあっという間に過ぎるもので、時計を見ればもう夜中の2時を過ぎている。

 ヤバい、5時の点呼に送れるのはまずい。


「そろそろ帰りますんでお会計お願いします」


 俺がボーイさんにそう言うと、何故かボーイさんがニヤリと不敵な笑みを見せる。

 何か嫌な予感がするんだが。


 しばらくしてボーイさんが伝票を持って来た。

 すると何故かバニーギャルズたちがスッと下がって行ってしまう。

 ますます嫌な予感がするんだが。


「こちらが、お会計です」


 そう言って出された伝票には『60,000シルバ』と書かれていた。


「なんだよ、6万シルバってさ!」


 思わず大声を上げたよ。

 

「間違いございませんよ、何度も計算しましたから。それとも払えないってんじゃないでしょうねえ」


 急にボーイさんが凄んできた。

 だがな、こっちにもいるんだよ。


「おう、ボーイさん。悪いがもう一度計算してくれ」


 そう言ったのは我らが守護神リッチ少尉。

 この薄暗がりの中でリッチ少尉に言われると、何だか凄みが増すんだよな。

 

 ボーイさん腰が引けてます。


「ちょ、ちょっとお待ちください……」


 そう言って奥へと引っ込むボーイ。


 そして次に出て来たのが強面のガードマンらしき人物だった。


「おうおう、なんかトラブルらしいけどな。お前らか、ああ?」


 そこへズイっと前へと出て行くリッチ少尉。


「それで会計は幾らなんだ」


 ガードマンと顔が引っ付きそうな距離で会話をするリッチ少尉だ。


「お、おう。6万シルバだ、よ……です」


 よおし、完全に押している。

 これは上手くいけばタダにもっていけるんじゃね?


 するとガードマンの男も「ちょ、ちょっと待ってろ」とか言って裏へ行ってしまった。


 そして次に出て来た時にはガードマンが5人に増えていやがった。


「おう、早く6万シルバ払えや!」


 さっきまでビビりまくってた奴が人数増えたらデカい顔しやがる。

 こういう奴が一番腹が立つんだよな。


 リッチ少尉に続き俺も立ち上がる。


「明細を見せてくれるか」


 俺は明細を受け取り見てみると、最初の40分は確かに一人300シルバになってる。

 しかしそれ以降は徐々に値段設定が高くなっている。

 それにショータイムも別料金らしいし、バニーギャルズの飲み物代がまたバカ高い。

 それとワインを入れたのもまずかったし、フルーツ盛り合わせが異常な値段だ。


 何とも汚い営業をしてやがるな。


 俺が険しい顔をしているのが分かったのか、バルテン軍曹も立ち上がって腕をまくり始めた。


 それを見たソーヤがため息をつきながらも立ち上がる。


 俺は周囲の武器になりそうなものが無いか見まわす。

 くそ、ジョッキしかねえ。

 銃の形に近い物がねえ――いや、あった。

 フルーツ盛り合わせのバナナだ。


 しょうがない、バナナを握ってみる。


「おい、坊主。何バナナなんか握ってやがんだよ、早く払いやがれ!」


「あのな、俺はな、こういう人の弱みに着け込む奴らが大嫌いなんだよ」


「だったら何だってんだよ」


「こうしてやる!」


 俺はバナナをそいつの口に突っ込んだ!


「ふもっ!!」


 ダメだ、バナナじゃやっぱだめだった!


 俺は慌てて近くにあった金属ジョッキに手を伸ばす。


 お、意外と銃の握りっぽくていけそうだ。


 俺は金属ジョッキでバナナを咥えた男を殴り倒す。


 こうなったら乱闘騒ぎ勃発だ。


 5対4だが、ソーヤは速攻で気絶したから3対5となった。


 身体が小さい俺は弱いと見られたようで、バルテン軍曹とリッチ少尉に二人がかりとなっている。

 俺には一人だけだ。

 なんだ、楽勝じゃねえか。


 俺のジョッキ攻撃が連続ヒット。

 5秒ほどでそいつは床に転んで起き上がれなくなった。


「おい、そっちのチビをやれ!」


 バルテン軍曹に当たっていた一人が俺に向かって来る。


 あら、バルテン軍曹相手を一人にしちゃまずいと思うよ。

 1対1になったバルテン軍曹は、相手の股間を蹴り上げて目の前の敵を排除した。


 リッチ少尉はというと、拳銃を抜いていた。

 

「リッチ少尉、待った、待った。拳銃はまずいよ」


 俺が静止するも帰って来た言葉が。


「安心しろ、峰打みねうちにする」


 一瞬考えたんだが、拳銃に峰打みねうちはねえ!

 これはリッチ少尉め、酔っ払ってやがるな。

 これは厄介だぞ。


 だが、命の危険を悟ったのか男たちは静まり、一人が慌てて仲裁を求めてきた。


「待て、落ち着け、話せばわかる。な、話し合おうじゃないか」


 そのタイミングで裏から支配人らしい男が出て来た。

 遂に出て来たかラスボス。


「店内での騒ぎは困りますよ。それも物騒なものを振り回されてはねえ」


 出て来たのは兎人とびと族の男だった。

  

 おっと、見覚えがあるんですが、このウサギさん。


「あれ、もしかしてロジャー大尉ですよね?」


 するとその支配人と名乗る兎人とびとの男、「へ?」という表情をして固まる。


「俺ですよ、ケン・モリスです。砂漠のオアシスの時のドランキーラビッツ部隊ですよ」


 そこまで言って思い出したらしい。


「ああ、ああ、あの時の戦車部隊か。そう言えば闘技試合でも世話になったな」


 本当に久しぶりだ。

 そうか戦車闘技の時以来か。

 しかし何でここにいるんだよ?


「で、何故この店に?」


「え、えっと支配人やってるんだがね。まあ、あの時と一緒で軍資金稼ぎだよ。あ、これ秘密ね。しかしモリス君は軍に入ったんだな」


「はい、今は中尉ですよ……で、お会計なんですが……」


「うん、そうだね……すまん、警察連絡しちゃったんだよ」


「……」


 次の瞬間、扉から一斉に警察官が突入して来た。


「大人しくしろ!」

「武器を捨てろ!」

「ひ~、アンデッドがいるそ!」


 大騒ぎとなった。

  


 *  *  *



「それで、何でそのバニーなギャルズのバーにいる訳?」


 今、俺達三人は警察署で警官ではなく、身元引受人のケイに尋問されている。


「あい、すびばぜん――ぐふっ」


 何か一言いうたびに厳しい攻撃が俺一人を襲っていた。


 誰かケイを取り締まってくれ!




 結局、俺達は店に対して代金を支払い、警察にそれ以上の賄賂を支払って軍の宿営地へと戻って行った。


 総金額は4人合わせて40万シルバ、安い戦車が買える金額だった。


 後になってロジャー大尉からお詫びで例の店の無料券が送られてきたんだが、速攻ケイに破き捨てらたのだった。











連載小説「徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!」の付け足しのお話でした。






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