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短編集

壁がない平らな国

作者: チャラン

 どこまで行っても坂も壁もない平らな国がありました。


 そこには片足がない人、目が見えない人、少し色々なことをするのが遅い人。様々な人がいました。


 ある日、他の国から体は丈夫だけれども、とても顔色が悪く暗い顔をした人がやって来ました。その人を最初に見つけたのは、少し色々なことをするのが遅いカイルでした。


「あーんたーあおいかおしてるなー?」


 話しかけましたが暗い顔の人は何も話しません。立ち止まってうつむいたままです。色々なことをするのが遅いカイルでしたが、彼はとても人を思いやれるのですぐ分かりました。


「しんどいーんだろうーちょーっとおらについてーきな」


 暗い顔の人は少しカイルに心をひらき、「ロレンソです……」と名前だけをぼそっと言ってついていきました。ついてきた先は、目が見えないこの国の王様の所でした。王様といっても偉い王冠をかぶったり、豪華な服は着ていません。簡素な普段着で、平らな地面に置いてあるいすに座ってみんなを見えないはずの目で眺めています。


「カイルか。連れてきたのはお客さんかな?」

「このーロレンソはーしんどいーんだと」


 王様はそれだけで、「うん」とうなずき、


「私はドラールと言います。あなたはしんどいんだな。この国で休んでいきなさい」


 他は何も言わず、カイルに休めるところを案内させました。


 ロレンソはあれこれ不思議に思いながら、またついていくと、小さな一軒家に着きました。その家の中には、片足がないおじいさんが座っていました。


「しんどいんじゃな。休んで行きなさい」


 おじいさんはそうとだけ言って、片足と杖でゆっくり動きながら、温かい食事をロレンソに食べさせようと用意しました。ロレンソは不思議に思いつつも、おいしいご飯をしっかり食べました。そして、その日はぐっすり眠りました。次の日も、その次の日も、元気になってしんどくなくなるまで、おじいさんはそうさせました。


「ありがとうございました! 元気になりました!」


 長い間、休み続けたロレンソはしんどくなくなり、おじいさんにお礼をしようと、片足がないおじいさんのお手伝いを一生懸命しました。おじいさんはそれをとてもうれしく感じ、喜びました。そして、またしばらく日が過ぎたある日、ロレンソはおじいさんに尋ねました。


「この国の皆さんは私が心の病だったのを、なぜすぐ分かることができたのですか?」


 おじいさんは長く白い髭をなでつつ、


「みんな分かるよ。あんたが一番しんどいんじゃ」


 そうとだけ言って、にこやかにロレンソを見ました。


 ロレンソはこの壁のない平らな国に住みつき、丈夫な体を使って、しんどくならないように無理せずみんなのために働いて暮らしました。


 それはしんどいけどしんどくなかったそうです。

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