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17-9


きゃあ!と泡が弾けるような声が、楽しいと笑う響きを伴って晴天の空にこだました。

夏らしい入道雲を地平線に抱えてはいるものの頭上はほぼ雲一つない。快晴と言っても良いだろう。


絵の具そのものを乗せたような青は目に痛いくらい鮮やかで、そこへうち上がるビーチボールのオレンジがよく映えていた。

その向こうでは、羨ましそうに鳴く海鳥達がすいすいと泳いでいくのが見える。


視線を下げればまた別の…吸い込まれそうな深い青。親しげに手招く海が揺れていた。

波が誰かの肌を擽る様子は遊ぼう遊ぼうと誘う子供のようだ。


あぁ、いいなぁ…楽しそうだ。

堪えきれなかった羨望を混ぜ、私は砂浜にひっそりため息をおとした。


「お姉さーん!見てください!!カニ!!カニがいましたよぅ!!」

「ふふっ!可愛いサイズ感だね!でも挟まれないように気を付け…」

「いっだぁぁぁぁぁぁ!!!?」

「うっさい!何やってんのバカ二菜!!!」


ばっしゃんばっしゃんと波打ち際ではしゃぎ回る二人。

その向こうでは、平たいボートに乗った祈ちゃんと門倉くんがまたやってるよと苦笑している。


普通なら他の海水浴客に迷惑そうな顔をされるのだろうけれど、幸いここには人気がないから…平和そのものだ。


さて、そんな風景を見守る私はと言えば…やたらと大きなビーチパラソルの下、病院から持ってきた簡素な白いベッドの上に寝かされている。何ともシュールな絵面だ。

どうしてこんな事に…潮風が目に染みるよ。


まぁ…何故?なんて無粋な質問なんだけど。


「皆随分はしゃいでいるね。元気そうでなによりだ」

「ほほほ、はしゃぎ過ぎてこちらの世話にならなければ良いですね。ね?まぁ、気持ちはわかります。『楽園』の海よりずっときれいですし、この天気ですもの。ね?泳ぎたくもなりますでしょう。しょう?」

「えー??マジに言ってんの?こんなのさ、逆にドン引きだわ。よくもこのあっっっつい中遊んでられるよね。俺はこの送風機から離れるとか普通に無理なんだけど」


お察しの通り、私の状態は周りを取り囲む魔王三人衆のせいである。

あー…皆様の中に勇者はおりませんか?いない?まぁ、そうだよね。でも、ちょっと魔王飽和しすぎだと思うの。パワーバランスってご存じ?


「ぶはっ!あっははははは!!栞里ってばさ、すっごい不満顔じゃん!残念だったねー?一緒に遊べなくて!あっはははは!」

「うっさい!!てかおまっ…!ベッドにかき氷溢すな!!…っう"!」

「こーら、暴れないの。悪い子だ」


痛んだ肩をおさえて小さく呻き声を漏らすと、子を嗜める親と同じ顔をした四恩さんに起こしていた上半身をベッドに戻されてしまった。


「ほほほ、寝ている間にわたくしの『回復』で傷を塞ぎはしましたけれど、綴戯さんの体力が消耗していたのもあって完治には至っておりません。無理は禁物ですよ。よ?」

「…はい」


頭側が少し上げられているベッドに大人しく背を預け、はしゃぐ皆を"記録"に焼き付けていく。いいなぁ…私も遊びたかったなぁ…


まぁ、私がこんな状態なのは結局自業自得なんだけどね。


あの騒動の後、二菜ちゃんの家で一先ずの手当てをした私は、身支度を整えて予定どおり祭りを満喫した。祭りは、満喫できたのだ。


皆でやたらとカラーバリエーションのあるひょっとこ面を買ったところから始まり、二菜ちゃんと弌菜ちゃんの射的対決、祈ちゃんの型抜き無双、サービスされまくってわたあめで四刀流していた門倉くん、秒でポイは破けたのに金魚達が勝手にお碗に入ってきて困惑した私…と、それはそれは濃くて楽しい時間を過ごしたのである。


そして屋台の端から端まで遊びつくし、御輿と共にやって来た何とか音頭にもノリで交わり、遊園地帰りに近い充足感を土産に二菜ちゃんの家に帰って…きたところで、私はぶっ倒れた。


ようははしゃぎすぎだ。薬で誤魔化せても根本的にはボロボロのままだということをうっかり失念していた。

そりゃアレだけ動いてたら倒れるに決まってるわ、と落ちる意識の中で反省したよね。


当然祭りの余韻を楽しむどころじゃなく、顔を真っ青にしながら学園へ連絡を入れたり保健室に担ぎ込んでくれたらしい皆には申し訳ないことをした。最悪の締めくくりである。


取り敢えず意識が戻った時ベッド脇に控えていた四恩さんの顔は…直視出来なかったよね。うん。

背後に見えちゃいけない何かが見えた気がしたし、心なしかそこだけ氷を投げ込んだように気温が下がってた。そんな夏の風物詩(ホラー)はいらない。


そんな一騒動を経て私は今こんな状態というわけである。

本当ならそのまま保健室の住人になるところだったのだけれど、凄まじい落ち込みようを見せた二菜ちゃんと弌菜ちゃん並びに私への配慮ということで、四恩さんと四葉さん(保健室)がこちらに来るという形になったのだ。


一ノ世は何でいるのか知らん。どうせからかい目的だろう。

もしゃもしゃと焼きそばを頬張りはじめたそいつを半目で睨んでいると、不意にバチリと目が合ってしまった。


「もご…んぐ。栞里ってさぁ、怪我しないで帰ってくるコト出来ないわけ?何で海水浴に送り出しただけで体に穴開けてくるのさ」

「私だって好きで怪我してるわけじゃないっての…」

「はー…うっざ」


ベッド横の手すりにもたれ掛かって軋ませた一ノ世はどうしてか落ち込んでいるように見えて、私は思わずその金色に釘付けになる。

まさか、傷…ついて、る?怒っているのとは違う、よね?


心が読めるなんて大層な事は言えないけれど、波打つ水面に映り込んだ月のようにゆらゆらと不安定なそれはまるで…苦しいと語っているような気がした。


「…あのさ、俺が送り出したせい?」

「はぁ?」


何を馬鹿なことをと眉を寄せるもどうやら本人は本気で言っているらしい。

変なの。何でコイツがそんなこと気にしてんの?


「馬鹿馬鹿しい」

「あ"?」


私は吐き捨てるようにそう言って、四恩さんの手を借りながらもう一度体を起こす。

そして、行儀が悪いと理解しつつもむすっとした一ノ世の顔に指を突きつけた。


「お前のせいになんて()()()()()()。これは"私が"選びとった運命だ」


"一ノ世久夜"に運命を好き勝手振り回されるのは"あちら"だけでお腹いっぱい。

だから私は、今在るこの時を自分で選んで掴み取ったものだと信じたい。


まぁ…わざとか?ってくらい一ノ世に送り出された先々でトラブルに巻き込まれてるのは確かだけど。


「仮にお前のせいだったとしても…私は感謝してるよ」

「はぁ?感謝ぁ?何でさ」

「分かんない?弌菜ちゃん達を助けるチャンスをくれてありがとうってことだよ」

「はー…うっざ。何ソレどんな思考だよ…」


片手で顔を覆って天を仰いだ一ノ世の声には微かに、しかし確かに安堵が混ざっている。

どうやら本気で罪悪感というものを感じていたらしい。

その事実に驚きを禁じ得ないよ。


「ほほほ、綴戯さんの方が一枚上手でしたね。ね?」

「うっさいよ四葉サン。…栞里ってさ、ホント頭おかしいよね」

「何で私貶されてんの??」


こちらを見ようとしないままに馬鹿、お人好し、無鉄砲、貧乳と薄い唇から悪口が垂れ流され…って誰が貧乳だクソッタレ。

苛立ちを募らせていると、クスクスと笑う四恩さんがハイビスカスが飾られたドリンクを差し出してくれた。


「一ノ世くんなりに心配しているんだよ。勿論、僕や四葉もね」

「それは…」


いくら私が鈍かろうとここまで露骨な態度を見せられればさすがにそれは察せる。

ただ、その…今更一ノ世からの心配を素直に受け取れないというかなんというか…


「ほほほ、おふたりとも素直じゃないところはそっくりですね。ね?」

「「誰がコイツと…っ!!」」


同じ台詞と同じ動作、タイミングで互いの指を突き付ける私達にその場は笑いに包まれた。

あまりにキレイ揃うものだから、私と一ノ世も恥ずかしいより先におかしくなって笑っちゃったよね。


「きゃはははは!そぉれ、それー!!!」


ふと元気な声に呼ばれたように海の方へ視線を戻せば、二菜ちゃんの生き生きと輝く瞳が夏の陽光を反射させながら幸せを叫んでいた。


その姿にいてもたってもいられず…私は彼女に視線を固定したままに一ノ世へ向かって言葉を紡ぐ。


「ほら、一ノ世見てみなよ。お前のくれたチャンスと私の無茶が守った宝だ」

「…っ」


視界の端に虚を突かれたような顔が見えた。

そっと彼を伺えば、初めて赤子を抱く父親のように戸惑いの中に日向に佇む柔らかさを内包させて口をむずつかせている。

そしてそのままそっと口元を緩めた…ような気がした。


「…栞里ってばさ、メイリーみたいな言い回しするね」

「…ふむ、それは光栄だね」

「うげぇ」


嫌なものを見たと顔をしかめた一ノ世にはもう先程の表情はなく、あれは私の都合のいい妄想かと思ったけど…

四恩さんと四葉さんが目を真ん丸にして彼を見つめているものだから、もしかしたら本当にあの優しい顔をしていたのかもしれない。なんてね。


「お姉さん、どうかしたんですか?」

「え!?あれ…二菜ちゃん???」

「はい!二菜ですよぅ!あのあの、お姉さん!コレ見てください!コレ!」


この子、いつの間に来たのだろうか…??

さっきまで海で跳ね回っていたはずの彼女は海水を滴らせながら、後ろ手に隠していた"何か"を私の前に差し出した。

そして視界に入ったそれに目を丸くする。


「えぇと…何コレ???」

「見ての通りかき氷ですよぅ!!」


そう、二菜ちゃんの手にあるそれは、指先から肘の長さに近い高さを持つかき氷だったのだ。ついでに、もの凄くカラフル。


「これはこれは…何と言うか、凄いね…」

「ほほほ、一種の芸術ですね。ね?」

「つーかさ、くま子さっきまで海ん中いなかった??」

「はい!!でもコレを見つけてばびゅん!と買いに行ったんです!コレ、"海の家スペシャル~俺の氷山を越えていけRAINBOWedition~"っていうんですよ!」

「名前ダッサ…」

「いや名前云々よりカラフル過ぎていっそ毒々しいよね…」


美味しそうには見えないという台詞を寸でのところで飲み込んだ。

そしてそっと海の家の方へ目を向ける。

トラブルを避けるためにこの辺り一帯を貸し切りにしたと聞いたけど、どうやら海の家は通常の営業らしい。

つまり店員さんは皆もれなく一般人であり…物凄く緊張した面持ちで祈りを捧げてらっしゃる。


実はさっき一ノ世がドリンクの味が気に入らないと暴れたんだよね。そのせいで、機嫌を損ねたらどうしようかと気が気じゃないみたいだ。ご迷惑をかけて申し訳ない。


「もー!二菜、早いんだけど!!お姉さんと先に喋るとかズルい!!」

「ごめーん!でも、早く見せたかったんだもん!」

「それはウチも同じだし!」


海の家へ心の中で手を合わせていると、丁度その方角から弌菜ちゃんがトレイを手に駆け寄ってきた。両手で持ったそれいっぱいに陣取る大皿にはこれまた大きな銀のクローシュが被さっている。まるでそこだけ一流のレストランみたいだ。


彼女は拗ねたように二菜ちゃんを睨み、けれどもすぐ私に向き直ってにんまりと笑う。

もしかしなくても何か企んでるね?


「ね、ね、お姉さん!これ開けてみて!」

「…爆発とかしないよね?」

「きゃはは!しないしない!」


これが一ノ世なら絶対信じないし開けないけど、弌菜ちゃんが言うなら信じようか。

恐る恐るクローシュの取っ手を摘まんで持ち上げてみると、ぶわりとソースと鰹節の香る湯気が襲いかかってきた。

これはまさか…


「た、たこ焼き…?」

「正解!"ビーチボールかと思った?残念たこ焼きでーすDX"だってさ!」

「なんて???」

「ぶはっ!!!」

「ほほほ、こちらも随分と個性的ですね。ね?」

「いや、これは…個性が尖りすぎじゃないかな…?」


爆笑をキメる一ノ世と目を真ん丸にした二菜ちゃんを除いた私達の顔をひきつらせたそれは、弌菜ちゃんの頭よりも大きなたこ焼きであった。絶対タコそのまま一杯入ってるでしょコレ…

そもそも良くこのサイズのたこ焼き器があるなと感心するレベルである。


「はわわわわ!?弌菜、何それ凄い!そんなのもあったの!?」

「ふふん!色々あるんだよあそこ!メニューが全てじゃないんだってさ。ってか、二菜のソレも凄いじゃん!」

「「……じゅるり」」

「あー…ハイハイ。そこの暴飲暴食姉妹はさ、そっちのテーブル行ってねー」


互いの持つ食べ物をロックオンしてキラキラ…いや、ギラギラと目を光らせ始めた二人。

そんな彼女達を面倒臭い酔っぱらいでも相手するように一ノ世が別テーブルへ流していると、海の方にいた二人も上がってくるのが見えた。


「結局遊ぶより食べ物なんですねぇ」

「く…食い意地まで似た者同士、だね」


呆れつつもどこか優しげな目を向ける祈ちゃんにはきっと、家族と和解できた二菜ちゃんの気持ちが良く分かるのだろう。


ところで門倉くん…キミが引きずってるものは何??


私の視線に気付いたのか、彼は相変わらずのほほんをとした空気を漂わせながら"ソレ"を差し出してきた。丁度、先程の二菜ちゃん達を真似るように。


「綴戯さぁん、僕からはコレをどうぞぉ」

「ええと…コレって…」

「流木でぇす」

「流木」


何故に流木…??混乱が大きくてつい鸚鵡返しになってしまったじゃないか。

そんな私など気にもせず、彼は胸の高さほどある大きなそれをご機嫌に揺らす。


「これぇ、図書室のインテリアにしましょうよぉ」

「あぁ…そういう?」

「か…門倉趣味悪い、よ。つ…綴戯さんにはもっと可愛いものをあげな、よ」


ペシンと猫背気味の背を叩いた祈ちゃんは猫のように私達の間に入り込むと、ガラス細工でも触れるかの如く私の手にそっと触れ、そのまま何かを握らせた。

硬い感触に首をかしげながら手を開き、指の隙間から現れたそれに目を丸くする。


「わ、綺麗な貝殻…!」


海の色をそのまま閉じ込めたような青い貝殻。笑うようにチラチラと光を反射させるそれに思わず感嘆の息が溢れた。


「き…気に入ってくれま、した?う…ふふ」

「うん!凄いね、これ。こんな鮮やかな貝殻見たことないよ」

「こ…これでお揃いのアクセサリーを作りません、か?ゆ…指輪の代わり、に。う…ふふふふ!」

「ん???」

「あー!!五月雨先輩!抜け駆け禁止ですよぅ!!」

「そーだそーだ!お姉さんにはウチらとオソロのアクセ送るんだから!」

「いやぁ、どっちもどっちじゃないですかぁ」


祈ちゃんから不穏な言葉が聞こえた気がするけれど、わぁっと押し寄せてきた二人によって有耶無耶にされる。出来ればこのまま流れていってほしい。


というか、二人とももう食べきっ…てるね。

さすがである。それどころか見知らぬ皿やら容器の残骸を見るに、私が認識した以上に食べてない??

胃袋まで似た者同士かな??


騒がしさの中に自分の笑い声も混ぜながら、私はふと二菜ちゃんと弌菜ちゃんの髪を見た。


アクセサリーと聞いて目に入ったそれは、そっくりな髪質を束ねる二つのピン。

一つは"くまがみね"の顔がデザインされた少しばかり錆の浮いたもの。

もう一つは、トリトウさんの顔がデザインされた真新しいもの。


それらがお揃いで煌めいている様子が何よりも眩しく映った。


「はー…うっざ。君らさ、五月蝿すぎない?ただでさえ日差しで頭痛いのにさ」

「文句言うならお前がどっかいけ」

「ふふっ、綴戯くんの周りは相変わらず賑やかだね」

「ほほほ、その通りですね。ね?見ていて飽きません」


みゃあ、と海鳥が鳴く。

ぶぅぶぅ文句を連ねる一ノ世をさっさと意識から追いやって、私は濃い海の香りとこの幸せな光景を一欠片とて欠けさせぬようにと"記録"に刻み付けたのである。



たっぷりと日が暮れるまで遊び、祈ちゃんは『転移』で家族の元へと帰っていった。

二菜ちゃんはもう一泊泊まると駄々をこね、私はこれ以上の無理は許さないと東雲兄弟に連行されて即帰還である。


幸いな事に保健室で少しの処置をされただけで、監禁されることなく解放してもらえたけどね…正直かなりドキドキした。〆のホラーとかいりません。


何はともあれ、安堵と疲れとまだ残り火のように燻る興奮を引き連れながら私は自分の居城へと帰り着いたのだった。明かりが漏れているところを見るに、先に帰っていた門倉くんがみにばうくんと遊んでいるのかな。


「ただい…」

「ほらー、みに先輩見てくださいよぉ。これいい木でしょお?」

「ばば」

「えぇ?どぉしてさっきからそっぽ向くんですかぁ?」

「えっと、何してるのかな…?」

「あ!綴戯さん、お帰りなさぁい」

「ばばうばばうー!」


扉を開けた途端門倉くんがみにばうくんに流木を押し付けている光景が目に飛び込んできて、私は中途半端な体勢のまま固まった。


「聞いてくださいよぉ。みに先輩がこの流木の良さを分かってくれないんですぅ」

「ばば、ばう」

「そ、そっか…」


大変申し訳ないけど、私にも分からないよ門倉くん…

というか、まさか持ち帰ってきていたとは思わなかったよ。てっきり冗談だと思ってたのに。


「ちぇー、いいですよぉ。みに先輩にはあげませぇん。元々綴戯さんへのプレゼントですしぃ」


拗ねた彼は頬を膨らませながら流木を受付のカウンター横に設置していく。

いや、あの、私許可してないのだけども…?

いつ用意したのか倒れないように台座までちゃんとつけちゃってまぁ…


「出来ましたぁ!どうですかぁ、綴戯さん」

「…ウン、イイカンジ」


突っ込みたいところは色々あるけれど、本人の満足そうな笑みと意外にも図書室に溶け込んでいるそれにまぁいっかと流すことにした。みにばうくんはちょっと不服そうに台座齧ってるけど。


ただ、後日私は少しばかり後悔することになった。


「お!栞里ってばさ、気が利くもの置いてるじゃん」

「おいこら勝手に衣紋掛けにするな!!」

「えー?これ、俺のためっしょ?可愛いことするぅ!」

「んなわけあるか!!門倉くんからのプレゼントだわ!お前も知ってるだろ!!」

「ほーん?そうだっけ?忘れたわ。んなことより栞里ぃ、今日は麦茶の気分ー」

「~~~っ!!!」


ああもう、やっぱりコイツは嫌いだ!!!




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