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12-3


強まってきた風はどこか陰湿で、ざわざわと囃し立てるように擦れる葉の音も相まってすこぶる落ち着かない気分にさせられる。


不安や焦燥は風船の如く膨らんでいくのに、それに反比例して心は一本の糸のように痩せていくようで…私は震えてしまわないよう手が白くなる程強くすがり付いていた。


止まない攻撃と緩まらない追跡を掻い潜りながら、私とマリアンヌさんの逃走劇は続いている。方向感覚などとうに失っていた。


「まさかアチシが"追われる側"になるなんてねぇ。思ってもみなかったわ…よっと!」


飛んで来たのだろう何かをさっと頭を引っ込めることで躱しながら、彼は新鮮だわとわざと明るくした声で呟く。

しかし、私はそれに返す余裕は無かった。


「シオリちゃん?」

「お、かまいなく…」


急停止、急発進、更には急な方向転換。

この状況だからそれが続くのは仕方がないことだと分かっている。

分かってはいるけれど…酔うものは酔う。

むしろこれで酔わない人の自律神経を尊敬するよ。


かと言って止まってしまえばすぐ背後には地獄が口を開けて待っている訳で…

結果、私は心配そうなマリアンヌさんに対して笑って大丈夫だと誤魔化す他無いのだ。


と、私を覗き込んでいたマリアンヌさんが不意に目を見開きながら顔をあげ、次いで急ブレーキをかけながら私の頭を守るように抱えて転がった。


間髪入れずに私の耳がワイヤーの微かな音を拾い、次いでミシミシと哭きながら傾いていく木を目の当たりにしたところで、ハロルドの剣がふるわれたのだと理解する。


やがて枝の折れる悲鳴と土埃をたてて倒れたのは立派な木。

ズシンと重く大地を揺らしたその衝撃に思わず目を閉じた時、また別の揺れがマリアンヌさんの腕から伝わった。


「…え?」


頬を何かが濡らした感触に目を開けた私にぱたたと独特の匂いがする液体が降り注ぐ。

それがオイルだと気付いたのは、深く傷付いたマリアンヌさんの肩を見た時だった。


「マリアンヌさん!?それ…!」


噛み合う部品を無くして空回る歯車や綺麗な断面を晒す小指くらい太いケーブル。ネジが欠けて今にも落ちそうな部品…

二回目に感じた揺れはハロルドの剣がこの傷を付けた時のものだったのだろう。

本人が遠くにいたとしても、あの珍妙な剣のリーチは驚く程長かった筈だ。


普通の人間ならばもはや動かすことなど絶望的な状態なのに、マリアンヌさんはへらりと笑ってその腕で私を抱え直した。

「ちょ、あの…!大丈夫なんですか!?」

「大丈夫よぉ♥️まだ動くし、心配しなくてもシオリちゃんを落としたりしないわ♥️」

「私の…私の心配とかじゃないです!!」


きょとんとした彼の表情に言葉が詰まる。

あぁ、きっとマリアンヌさんは…どんな傷を負わされても痛みに声をあげることなく、"私を守る"という任を遂行してしまうのだろう。

それのなんと、恐ろしいことか。


「んもぅ!相手がロボットちゃんなら演算処理でいくらでも先読みして回避出来るのに…人間相手だとダメねぇ。やっぱり、予測不能だわ」

口を尖らせてぼやく彼の服をぐいと引っ張り気を引くと、どうしたのかと優しい顔が私に向けられて…より一層恐ろしさがつのる。


「もう…わ、私を置いて行ってください!」

「…は?」

「私、その…死んだりしませんし、人質にしたって意味がないんです。七尾さんだってその事は知ってますし…だから大じょ」

「そのお願いは聞いてあげられないわ」


食い気味にキッパリ拒絶され、しかし私が言葉を重ねる暇もなく再びこちらへ攻撃が仕掛けられた。

森のどこかから放たれた一撃が、今度は彼の脇腹を穿つのが見えて息を飲む。

しかし当の本人は僅かに切れた私の服を見て目をつり上げ、鬼の形相で声を張り上げた。


「ちょっと危ないじゃない!シオリちゃんに当たったらどうするのよ!!」

「マリアンヌさん!!!」


私の事ばかりで、今までの比じゃないくらいオイルが漏れ出す己の傷など見向きもしない。

そんなマリアンヌさんを見ていられず声を荒げた私は、一体どんな顔をしていたのだろう。


すぐにその場から動き始めた彼は子を諭す親のように優しさと厳しさを混ぜ合わせた色を宿す瞳で私を映し、目を合わせて微笑んだ。

いつもなら絆されたであろうソレが今は苦しくて仕方ない。

私が傷を受けたのかと錯覚しそうな程の痛みが内側で暴れている。


「そんな顔しないで。ね?」

「…っ!しますよ!するに決まってる!!このままじゃ、私のせいでマリアンヌさんが…!」

「シオリちゃんは優しすぎるのね。でも、ダメよ♥️…それは、身を滅ぼすわ」

「…こんな、こんな役に立たない身なんて、いくらでも滅べばいい!!それでマリアンヌさんが傷付かなくて済むなら、いくらでも…っ」

「シオリ、ちゃん…」

こんな掃いて捨てたって消えやしない命の為に傷付く誰かを見る方が、私にとっては余程辛いことだ。


昔いつだったか…私を不老不死の身と知らず助けようとしてくれた一般人がいた。

その人は当然のように私共々殺されて、しかし私は…私だけは生き返る。

それを見た元凶の能力者が、死んだ一般人の友人知人が、揃ってこう口にしたのだ。


《お前のせいだ》と。


その言葉がどれ程恐ろしかった事だろう。

だって、まったくその通りだと思ってしまったから。


「私には誰かに守られる資格も、その必要も本当は無いんです!だから、だから…!」


これ以上、私の為に傷付かないでくれとつっかえながら絞り出す。

けれど、そんな子供みたいな癇癪を起こす私を…やはりマリアンヌさんは酷く穏やかに見つめてきた。


「シオリちゃん」


優しく咎めるように名前が呼ばれ、これ以上言葉を紡がせないようにと人差し指が唇に当てられる。


「そんな悲しい事、言っちゃダメよ。これはアチシのお願い。もう絶対、"私なんか"…なんて言わないこと」

そう言ってふわりと笑ったマリアンヌさんの体が、ドッと鈍い音を立てて揺れた。


静止した景色と、己の足に走った痛み。

何が起きたのかと痛みを覚えた部位へ視線を滑らせた私の目に飛び込んできたのは、マリアンヌさんの胸にぽっかりと開いた拳大の穴だった。


何かで突き刺されたような、少なくともいつもの愛剣によるものではないだろう。

ロボットか何かの武器だったのかもしれない。

けど、何が原因がなんてそんな事はどうだっていい。

穴からだらりとぶら下がったコードがバチバチ音をたてるそこを見たマリアンヌさんの顔が、初めて焦りを孕んだ事に気付いてしまったから。


「…っ、しつこい男ねぇ」

「ま、マリアンヌさん、やっぱり私を…」

「大丈夫。…シオリちゃんは、この身に代えても守るんだから」

「…っ」


止めてと言う筈の言葉は、どこまでも強い意思を宿した瞳に吸い込まれたように音をなくす。

どうしてそこまで…そこまで私を…


コフッと咳き込んだ彼の口から細い煙がくゆる。

マリアンヌさんは再び走り出したけど、その動きはどう見たってぎこちなく、ガタガタした不快な駆動音がその体からは聞こえていた。

今まではそんな音聞こえてこなかったのに。


何か重要な部位…その部品や回線を傷付けてしまったのでは、と思い至ったのはすぐだった。

先程の焦ったような表情とも繋がる。


それでも、マリアンヌさんの目にはひたむきな決意だけが爛々と光っていて、言葉が出てこない代わりにもぞりと身動ぎするも離すものかと抑え込まれてしまった。


走る速度はどんどん遅くなり、もう私が並んで走れるのではないかと思う程だ。

けれど、彼は止まらない。

一撃、また一撃と攻撃が加えられ、その度に傷付けられようと…マリアンヌさんは止まらないのだ。


こんな速度で尚追い付かれないのは、きっとアイツが面白がっているからだろう。

有り体に言えば遊ばれている。あぁ、まったく、嫌な奴だ。


いつしか走りというより歩きに近くなって、次に出す一歩は今にも崩れ落ちそうなのに、私が暴れてみてもそこだけは力が強いまま。

絶対に離してもらえなかった。


「どうして!?このままじゃ…!誰かからの命令なら今すぐ取り消してください!…お願いっ」


私はただただ怖かった。勿論攻撃が、ではない。

このままではマリアンヌさんが…そう考えただけで心に縄がかけられて締め付けられるようで、そんな場合じゃない事は理解しつつも溢れ始めた雫が止められない。


そんな自分に心底腹が立って、いっそ今すぐ舌を噛みきってしまおうかと思ったところで、何か感じ取ったのか諫めるように再び唇へ指を置かれた。


「違うわシオリちゃん。これはねぇ、アチシの勝手なの。笑っちゃうわよね、アンドロイドのくせに"勝手"だなんて。強いて言えば…アチシが自分に出した命令よ♥️」

「そんな、なら、尚更どうして…!!?」


半ばヒステリックになりながら叫ぶ私に対して、マリアンヌさんはどこまでも凪いでいる。

それは昨日まで見ていた森のように穏やかで、清廉で、深呼吸したくなるほどに。


「シオリちゃん。アチシはね…うれしかったのよ」

「…え? 」


ギャリッと嫌な音がして、同時にふっと支えを無くした体が落ちそうになる。

寸でのところで受け止めてくれたけれど、私に巻き付く腕は一本だけだった。


その意味を理解して、ガシャンと何かが落ちる音を聴いて…私は一度きつく目を閉じる。

そして深呼吸を重ねた後覚悟を決めて開いた視界には、片腕となったマリアンヌさんが映っていた。


「シオリちゃん覚えてるかしら。怪異に襲われた時の事」


そんな状態でも構うことなくマリアンヌさんは歩き、言葉を続けていく。

片腕で尻を抱えられ、彼の首に腕を回してしがみつく私にその表情は見えないけれど…体に柔らかく響く声だけでも想像するには十分すぎる。


取り乱しそうな心を、泣き叫んでしまいそうな自分を押さえ付けてマリアンヌさんの言葉を聞き逃すまいとする私の視界は、とても歪んでいた。


「同じものが五万とあっても"アチシ達"以外認めない。ロボットも人も関係なく大切だって…そう言ってくれたわね」


〈私は今、目の前に"いる"存在を尊重します。あなた達が認めなくても、私があなた達を生きていると認めます。ちなみに、同じものが五万とあっても私と一緒にいてくれたマリアンヌさんとみにばうくん以外認めません〉


〈ロボット?ぬいぐるみ?人?関係ありませんね。私は、私が大切だと思ったものを…もう奪われたくなんてないんです〉


「シオリちゃんのあの言葉でね、アチシ達は命をもらったの。自分という"個"をもらったのよ。"マリアンヌ"がアチシだけの名前になった。それが…どれ程嬉しかったか分かる?うっかり色んな回路がショートするかと思ったわ」


嬉しかったともう一度、大切そうに呟くマリアンヌさんへ私はただこくりこくりと頷いて肯定を返す。

喉がひきつっていて声が出なかった。


あの時の言葉は私の本心だ。

今だってその思いに変わりはないけれど…まさか、こんな、宝物を抱くように受け止められるなんて思ってもみなかったよ。


マリアンヌさんにしがみつく手を強くする。

硬くて冷たい筈のその体は何故か火傷しそうな程熱い気がして、嫌な音もずっと耳鳴りのようにすぐ側で聞こえてきて止まらない。


もういい。もう進まなくていい。お願いだから止まって。


そんな思いは届かず…否、受け取ってもらえないままに、またしてもハロルドの剣がマリアンヌさんを傷付ける音を聴いた。


瞬間彼がぐらりと傾き、私は今度こそ地面に放り出される。

「…っう」

強く打った腰に呻き声をあげながらもすぐさまマリアンヌさんへにじり寄れば…彼は片足をも失っていた。


「マリアンヌさん!?マリアンヌさん、しっかり!!」


私が彼を運べたら良いのに、この非力な体ではどれ程足掻いても上半身すら持ち上げられない。

どうすれば良い?どうすれば…


ガァガ、ギィギ、と呼吸に合わせて喘鳴のように酷い音が漏れるマリアンヌさんを必死で抱き起こそうとする私に、彼は片腕だけで僅かに体を起こして…笑った。


「ダ、だ…大丈夫よ。シ…シオ、リ…ちゃん」

「マリアンヌさん…っ!!嫌、嫌だよ!安全な所までずっと一緒って!最後まで、最後まで私と一緒に居てくれるんでしょう!?」

「ギギ…ガ…あ、ちしが…最後、マ、まで」

「ねぇ、お願い…!お願いだから…私から…奪わないでよぉ…!!!」


もう滑らかな人口皮膚のないありのままの指が、人よりも繊細に私の頬を撫でる。

くすぐったいくらいに優しいそれに手を重ねれば、やっぱり酷く熱かった。


「シオ…リ…ザザ、ちゃ……ん。シオリちゃん」


分かってる。もう、分かってる。


それでも惨めたらしく神様どうか、と乞い願う私は済度し難い人間だろうか。

きっとそうなのだろう。だからこそ、すぐに思い出す。いや、思い出さされる。


「…"アチシ"の為に、泣いてくれてありがとう」


願う先に神様なぞ、居やしないことを。


「……え…?」


綺麗に笑ったマリアンヌさんがくるぅりと宙を舞い、私の目の前から消えていく。

頬にあった彼の手はだらりと落ちて、その体も横に傾いてガシャンと倒れた。


ピーと鳴り響く音はさながらゼロを示す心電図のようで、ノイズの音は果たして私か彼かどちらのものかも分からない。


いつの間にか私の世界からは緑が消えて、色褪せたような灰色の風景にに成り代わる。

そんな中で唯一色を持つハートが散りばめられた服…マリアンヌさんの体がやたらと浮いて見えた。


「マリアンヌ、さん?」

「ガ…ガガ……エ、ラー……エ…ー」

「ねぇ、マリアンヌさん…」

「再…不……可……ピー…ザザ、ザ……ピー…」

「マリアンヌさんっ!!!」


なぁにシオリちゃん、と答えてくれる声は…もう聞こえない。聞こえて、くれない。

転がった頭を拾い、胸に抱く。笑顔のまま固まったそこに、透明な雫だけじゃなく赤い血が付いたのを見て初めて私の目の下に傷が出来ていることに気付いた。

心が痛すぎて、全然気付かなかったな。


あぁ、マリアンヌさんなら…女の子が顔に傷なんて!と怒ってくれたのだろうか。


「haha!お疲れサマ!ごめンネ、ちょっと急がなくちゃいけなくナッテ…おや?女王サマってばまさか泣いてルノ?」


ザリザリと地面を擦る足音が聞こえ、沸騰した湯でも出てるんじゃないかと思う程熱い涙をぼろぼろ溢しながらも私はソイツを睨み付けた。


色を失った森が形を変えて、私に瓦礫の幻影を押し付ける。

その中でハロルドは、私の"記録"と相違無く笑っていた。

へらへらした顔を殴ってやれたならどれ程良かったか。けれどそんな自殺行為を望む私を、唇を噛み締めて留まらせる。


一発でも殴れるのなら私の命が何度散ろうが構わない…そう思うくらいに腹底のマグマは煮えくり返っていたけれど、少なくとも今、マリアンヌさんの前で、彼が守ろうとしてくれた命を軽々捨てることなど出来なかった。


「いやぁおかしな人ダネ?それ、良くできてるけど所詮はガラクタじゃナイカ!そんなものの為に泣くなんてオカシイ」

「…おかしくて結構」


ゲラゲラと笑ってもうノイズすら吐き出さなくなったマリアンヌさんを指差すハロルド。

それを見つめる私の心はどうしてか、少しずつ静かになっていく。


違う。怒りは収まってなどいない。落ち着いた訳でもない。

私はたぶん、キャパオーバーしたのだ。だから…自分を守るために"凍らせた"。


「お前なんかに、分かってもらう筋合いはない」


涙声ではあれど酷く平坦な声が溢れ落ち、ハロルドのバカみたいな笑い声がピタリと止まる。

私自身も自分の声じゃないみたいで驚いていた。


地獄には灼熱だけでなく極寒もまたあると聞く。


私に渦巻く負の感情はいつだってマグマを煮たたせて時に噴火させるけど、それだけではあっという間に心が疲弊して死んでしまう。それくらい、"あちら"では負の感情(ソレ)の割合が大きすぎたんだ。

だから、きっと防御策なのだろう。

極まった感情は時として熱とは真逆の形をとる。

それはさながら生命の生きられない氷獄のように。

冷えて、凍えて、凍り付くのだ。


「…アハッ!いいね、いい目をするじゃナイカ!」

「嬉しくない賛辞をどうも」

「ヘェ?さっきまでと随分…あぁ、そそるナァ」

「…心底気持ち悪い」


もっぱら死ぬ間際に感じていたコレをこうもハッキリ感じたのは初めてかもしれない。

ただ、冷静であれるのは利点だ。


「…マリアンヌさん。ありがとう、ございました」


小さな感謝の言葉と共に頬へキスを送り、亡骸の側へ彼の頭を返す。

止まらない涙を意味もなくぬぐって立ち上がり、ハロルドのくすんだ"カーマインの瞳"と向き合った。


あぁ、そういえばエネルギーが切れたら"こう"なるって言っていたけど…"あちら"で見ていたコイツは瞳色反転を使っていたのか。

臆病者らしく常に全力全開だったわけだ。分かりやすい。

そう分析出来るくらいに恐怖心すら凍り付いた今なら、トラウマに飲まれることも無さそうだ。


「レディを追い回すなんて、"英国"の紳士として恥ずべきだね」

「haha!手厳シイ!…それも知ってるノカ。まぁ出身はあんまり隠してないケド…底知れなイネ。危険ダ」

「…っ!」


乱暴に腕をとられ、力任せに引き寄せられる。

今はピタリと後ろにつく体も巻き付くような腕も気持ち悪いと思うだけで済んでいるけど、いつもの私ならコレだけでスイッチが入った事だろう。


それにしても腕が取れるかと思った。

どうせ戦えもしなければ逃げる力もありはしないのだから、そんな必死にならなくて良いのに。


そう思いながら無抵抗でいる私の首に短剣に見えるヘンテコ剣が当てられ、周りをロボット達に囲まれる。能力を切ったのか、その姿は当たり前に視認できる。

七機…こんなにいたんだね。

随分な大サービスだと思ったけれど、その理由はすぐにわかった。


「綴戯…!!」


ガサガサと背の高い茂みから飛び出してきた人影…私の姿を見た瞬間酷く苦し気に顔を歪めたその人を見て、不甲斐ない自分への嫌悪感から酸っぱいものが込み上げてきそうになる。

誰かを傷付けてばかりだ。私。


「やぁ!遅かっタネ!あと一歩だっタヨ?hahahaha!!!」

「…ックソ!!」

「アハッ!!いい顔!!残念デシタ!!」


私への拘束を強め、わざと首の薄皮を一枚切って血を滲ませるハロルドに、七尾さんは憤怒と悔悟を宿しながら隣の木を殴り付けた。

ミシリ、と立派な大木が悲鳴を上げた気がする。


「サテ、もう分かると思うケド…抵抗すればこの子の首は体とオサラバ、ついでに矢を全身に浴びて剣山ダ」

「…要求は、何だ」

「…!?七尾さん!?ダメで…っう"!」

「綴戯!!」

「状況分かっテル?Shut up(黙ってろ)


七尾さんを止めようとした私をハロルドの腕が締め付ける。ギシッと骨が軋んだ感覚に、能力者の馬鹿力を再確認した。


「とりあえず、皆を集めテヨ。勿論オレの仲間も連れテネ!未だに合流してこないって事ハ…皆捕まってるんデショ」

「…ぐ」


ハロルドは私の顔を下から無遠慮に掴み、七尾さんに見せつけるように無理矢理向けさせる。

痛みで細めた目に苦々しげな彼の表情が映った。


「…場所は」

「んー、じゃあ…この先に広いとこあったデショ?そこにしよウカ!」


そう言って剣はそのままに七尾さんへ一昔前のトランシーバーに似た機械を投げ渡す。

黒く、手のひら大のソレにはやたら目立つ赤いボタンが三つ並んでおり、それぞれ数字が刻まれていた。


「それは通信妨害の中でも特定の同機とだけ繋がる優れモノサ!子機はオレの仲間が持ってるカラ、ソレを使って呼び出すとイイ」

「…ッチ!コレも、想定済みってか…!」

「haha!That's rig(その通り)ht!」


クモの巣のように策を張り巡らせるのはコイツの得意とする事である。むしろ、そこまでしないと動かない…いや、動けない人物だ。

でも、私には確信があった。


「じゃあ、先に行って待ってるとスルヨ。女王サマをあまり待たせないであげテネ?」

「…七尾さん」


静かな私の声に、睨み合っていた二人の目がこちらへ向く。

片方は怯えもなく叫びもしない私をつまらなそうに、そして怪訝そうに。

もう片方は痛みをこらえるように。


そんな中で私は…どんな顔をして"嗤った"だろう。


「大丈夫です」

「…っ」


足を引っ張っているのは確かに私だけれど、ハロルドにとっての盲点もまた私である筈だ。

なら私は…何としてでもこの状況を壊してやる。


そっと地面に視線を落とし、横たわる彼へ一人誓う。

「…マリアンヌさん、後で必ず迎えに来ますね」


必ず、と転がした言葉はまだ少し、濡れていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


NO side


メイリー・フランベルクはその端正な顔に似つかわしくないシワを眉間にこさえながら、カツカツとブーツのヒールを鳴らして清掃の行き届いた廊下を歩いていた。

人工の明かりに光る銀糸がピンと真っ直ぐ伸びた背で遊ぶように、歩みに合わせてサラサラと揺れる。


虫すらも寝静まった夜夜中だからか普段より足音が響いており、その新鮮さに彼女は僅かに目を細めた。

メイリーからすればこの時間でも尚活動時間の範囲内であり、彼女は仲間達と共にバタバタと忙しなく動いている時間なのである。

だからだろう。静かすぎてむしろ落ち着かない。


すれ違う人影もなく一人何とも言えぬ寂しさを連れて目的の部屋の前に立った彼女は、持ち上げた拳でコンコンと遠慮なくノックを響かせた。


「あー…ハイハイ。開いてるよー」


気が抜けるような間延びした声が返り、メイリーは少しだけ持ち合わせていた緊張を解いて粛然とした空気に吐息を解かす。

そして今まで冷ややかさを帯びていた鋭い瞳を気安い柔らかさですっぽりくるみ、彼女は簡素な断りの言葉を一つ伴って扉に手を掛け足を踏み入れた。


「やっほーメイリー。元気してた?」

「それなりに、だね」


ぱん、と軽い調子のメイリーお気に入りの挨拶としてハイタッチを交わし、彼女は相手を見て肩をすくめる。


「久夜、机に足を乗せるのは感心しないよ」

「はー…面倒くさ」


ひらひらと手を振るのみでデスクに投げ出した長い足を引っ込める気のない部屋の主、一ノ世久夜は上質な一人用チェアの背凭れを軋ませた。

彼女とてこの男が素直に注意を聞き入れるとは思っていない。ただ言ってみただけというやつだ。


それにしても、とメイリーは久夜をじっと眺める。

大嫌いだろう白い書類の山に埋もれた彼はしかし、にまにまと隠しきれない笑みを浮かべながら酷く楽しそうにその月を煌めかせていた。


「貴公の方は随分と上機嫌だね」

「あ、わかるぅ?」

「それはもう。いっそわざとらしいくらいじゃないか。…で?その原因はボクを呼び出した用件に関係あるのかな?」


本土での活動を主とするメイリーと島内のあれこれを管理する一角を担う久夜とでは、仕事として交わる事がさほど多いわけではない。

ついでに言えばお互い忙しい身なので用件となるともっぱらメッセージアプリや通話でのやり取りだ。

しかし今回は珍しく直接来てほしいのだとハッキリ言われ、旧友の頼みならと多忙の合間をぬって馳せ参じた次第である。


だから何事かと緊張を伴っていた訳なのだが…

当の久夜は学生時代と変わらぬ調子で出迎えてくるものだからメイリーは苦笑を禁じ得ない。

彼女はこれでも二週間近く連勤している中の貴重な休み時間を潰して来ているのだが。

まぁ、にぃと笑う悪童の顔を見れば苛立ちよりも期待が勝る辺り付き合いの長さ故の信頼があった。


「ちょっとさ、君の耳に入れといた方が良さそうな情報があってね」

「それは興味深いが…メッセージではダメだったのかい?いくら『転移』があれどこちらに来るのも楽じゃないんだがね」

「あはっ!絶対直接の方が面白いって!」

「面白い…ね。それは()()()、だろう」

「あはっ!()()()()()、だよ!それにさ、こっち(『学園』)の不祥事っての?聞いたでしょ」

「…あぁ、成る程。"外"に情報を売っていた馬鹿がいたんだったね」


久夜がここに軟禁状態にされている理由を思い出し、メイリーは嘆かわしいと眼を鋭く細める。

内通者が居たという状況下で話の内容が残りかねない媒体を使いたくないのだろう当たりをつけ、彼女は久夜に納得の態度を示しながら先を促した。


すると彼はおもむろに引き出しを開け、無秩序なその中をガサゴソとあさり始める。

目的の物は案外すぐに見つかったらしく、ポイと何かをメイリーへ放った。


嫌そうにしながらも危なげなく受け取った彼女は手のひらを開き、目を瞬かせる。

コロリと転がったそれが照明の明かりを反射した。


「これは…見たところカフスボタンのようだね。生憎ボクには価値を見る目は無いが…」

「あー…まぁ」


言外に何か特別な品かと問うメイリーに曖昧な態度を返しつつ、久夜はデスクに乗せていた足を引っ込める。代わりに肘を乗せて頬杖をついた。


「それってさ、一点ものらしいんだよね」

「らしい…貴公が持つには些か似合わない品だが、どこで手に入れたんだい?」

「合宿中に拾ったらしいよ。ひじりんから送られてきたんだよね」

「ふむ」


指でつまんで持ち上げ、角度を変えながら照明にかざす。

所々引っ掻いたような傷がついており、件の三神聖が同行した合宿所が山中であることを踏まえると大方カラスにでも持ち去られたものだろう、とメイリーは思考を巡らせた。


と、裏側のある一点に違和感を感じて目を近づける。


「これ…ただのカフスじゃないね?何か"入っている"」

「さっすがー!元々はただのカフスボタンってやつで間違いないみたいなんだけどさ、ひじりん曰く"姿隠し(シエゴ)"の機構が入ってるらしいんだよね」

「何だって…?」


"姿隠し"と呼ばれているそれは能力者の持つバッジに使われているものだ。

日本の能力者…つまるところ『学園』だけが使っている技術であり、門外不出の機密事項。

悪用されると大問題となるのは目に見えている為、厳重な管理が求められている筈だが…


「でもそれ、『学園(ウチ)』の品じゃないんだってさ」

「はぁ!?そんな、まさか…!!」

「ほんとほんと。ネジネジに確認とったら大騒ぎになっちゃった」

「当たり前だろう!?どうして外部、に…って、あぁ!?」

「お察しの通り。はー…うっざ。やってくれるよね」


心なしか重くなった空気と一瞬にして急降下した久夜の機嫌に、メイリーは物理的にも精神的にも頭痛がする思いだ。


思い当たる原因などたった一つ。彼が引導を渡した例の大馬鹿者しかいないだろう。

久夜は興味が無かったため今回調べ直すまで知らなかったが、上は最初の時点でバッチリこの事実を知ってしまったわけで…

そりゃ"断罪者(世ノ守)"が出てくるわと久夜もメイリーも揃って嘆息した。


とまれかくまれ、この事実はメイリー達の所属部署…"野良"と彼女達が呼ぶ『学園』非所属かつ一般人に手を出す能力者を取り締まる警察的組織にとっても無視できない話だ。

何せその野良の手に"姿隠し"が渡っているとしたら…ここ最近日本中で騒がれているある事件へ関与している可能性が浮上するのだから。


犯人の不明瞭な無差別連続殺傷事件に。


手口は不明で、夜道を一人で歩いている時に殺された者だけでなく白昼堂々人混みの中で殺された者もいる。それなのに犯人の姿はなく、防犯カメラにも何も映っていなかったそうだ。

怪異事件かと騒がれたものの実際調査上は白。

ならば人の手によるものかと聞き込みをしても、一般人からの目撃証言は一切無し。完全にお手上げ状態であった。


しかし、相手が"姿隠し"を持つとしたら…話が変わってくる。

頭を悩ませていたタネが解消されそうだとメイリーはカフスを握り締め、更なる情報を久夜に乞うべく口を開いた。


「…久夜、先程コレは()()()()と言ったね?当然持ち主の特定は出来ているんだろう」


その問いに、彼は待っていましたと言わんばかりに口端を上げて笑みの形を作る。

それはまるで子供が自慢話をする手前のようであり、しかし月に似た瞳が放つ光はそのような無邪気なものではなかった。


「登録されてた持ち主の名は"バロン・イグニス"だってさ」

「ほう?…それはイグニス社のトップに据えられている名だね。やはりあそこは能力者と繋がっていたか」


険しい顔で顎に手を添えながら思考に沈もうとしたメイリーは、クツクツと鼓膜を擽った声に少しばかり下げていた目線を上げて久夜の顔を再度見つめる。

まだ話が終わっていないらしいことは、短くない付き合いの彼女にはすぐに分かった。


何せあまりにも…彼が楽しそうだったから。


久夜という男がこんな単純な答えだけで機嫌を良くする筈がないのだ。

何より…この程度の話ならいくら島の技術が外部に漏れている、なんてとんでもない情報であろうとおかまいなくメッセージで済ますだろう。そういう男だ。


そんな彼がわざわざ情報漏洩を嫌がって呼び出しなどという手間をかけたのは…いや、実際手間がかかったのはメイリーだが、とにかくそんな面倒を惜しまなかったということはおそらく…上すら知らない"面白い何か"があったから。


なんてことはない。

つまるところこれは、旧友間の内緒話の延長だ。


「ほーん?イグニス社の社長ね。そうなんだ」


人を惑わすような色香をかもす月がじわりじわりと大きくなっていく。

興奮に色付いた両頬に引き上げられた口がにぃとつり上がり、そこからチラチラのぞく赤が嫌に扇情的だ。


「…けどさ、これを拾った本人はその持ち主をこう名指ししたよ」


あぁ、随分興奮していると悟ったメイリーは思い出す。

こういう時は彼女の経験上…内緒話、なんて可愛い言葉じゃ済まされないのだと。


「"ハロルド・オルデバロン"ってさ」

「なっ!?…はぁ!?」


メイリーは普段の涼しげな相貌を崩し、バン!とらしくないくらい乱暴に久夜のデスクを両手で叩きつけた。

それ程までに彼の口から出た名前は予想だにしないものだったのである。


「ま、まちたまえよ…と言うことはまさか…」

「そ。つまりさ、君らがずっと追ってる"大物の手配犯"とイグニス社のトップはイコールってこと」

「はぁぁぁぁぁぁ…」

ケロリとした顔でもたらされた真実に眩暈がして、メイリーは額をおさえながらきつく目を閉じて息を吐く。


元よりイグニス社の裏が怪しいとは睨んでいたし、ハロルドと繋がりそうだと調査に熱も入れていたが…繋がるどころか当人に当たるなどさすがに彼女の()をもってしても予測できなかった。


"ハロルド・オルデバロン"という人物は非常に危険な能力者として世界的に知られており、英国出身であること以外はとにかく姿が無いことで有名だ。


仔細は省くがとにかく偏った思想を持ち、己と足並みが揃わない能力者に対して過激な報復と死をもたらす。

特に日本の能力者とは水と油かと思うくらいに合わず、事あるごとにこちらの仲間を死体に変えてくるのである。迷惑極まりない。


まぁ、最たる被害者は能力者より一般人。

死体の数を数えたなら…下手したら小さな街一つ分にはなることだろう。


「奴は実力や能力含めすべてが不明だったんだぞ!?いくら貴公の言葉でも信じられない!」

「はー…面倒くさ。ひっどいなー。折角教えてやったのに気分悪ぅー」


拗ねたように口を尖らせる久夜は言うほど不機嫌ではなく、むしろメイリーの反応を予想していたように目を細めた。

そこに嘘や冗談の気配はなく、ちらついているのは愉悦だ。

メイリーは整えられた銀髪をくしゃっと僅かに乱し、未だ混乱気味の思考を抑えつつ久夜の瞳を真っ直ぐ見つめた。


「仮に…仮にだ。それが真実だとして、我々が総力を上げても掴めないようなその情報を知る存在とはなんだ。貴公が信を置く情報源とは一体…」


捲し立てるように言葉を重ねていく彼女はそのワインレッドでもって久夜をすっと睨む。

冗談や秘匿は許さないと告げるそれは同期の友に向けるものではなく、能力者を取り締まる桎梏(シッコク)機関所属の一警邏隊長として一ノ世久夜という能力者を見極めんとしていた。


そんな穏やかでない視線を受けながらも飄々とした様子の彼は、幼げな表情でぱちりぱちりと瞬いた後…メイリーがゾッとするほど優しい顔をして口を開く。


()()"記録者"、さ」


大切なもののように音を転がした久夜に今日イチ…ハロルドの名を聴いた時より愕然とした彼女だったが、成る程と納得の色を見せて瞳に浮かぶ険を引っ込めた。


「"記録者"からの情報であるならボクには疑う術がないね。しかし…八丸から噂くらいなら聞いたけど、何者なんだい?」

「あー…内緒♪まぁそのハロルドって奴の被害者ってことは確かだけどさ」

「被害者…?」


ハロルドの被害者なら死体か?とおかしな考えがメイリーの脳内に浮かぶ中、久夜はすんっと表情を消してカフスボタンと一緒に受け取った三神聖からの言葉を思い出す。


〈久夜、これはウチの"仲間"の物らしいのですが…『学園』にハロルド・オルデバロンなんて能力者はいましたっけ?〉


綴戯栞里がこちらの仲間の物だと言って渡してきたというソレ。しかし聞いた名を調べてみれば、名前だけが彷徨く要注意人物というのだから久夜とて眉を寄せた。


そして考えたのである。何故栞里がハロルドをこちらの仲間だと思っていたのかを。

答えなんて簡単だった。


(はー…うっざ。栞里はさ、"あっち"の俺らと"同じ事"をするソイツを見てきたんだろうね)


それはつまり、彼女にとっては等しく"加害者"であったことに他ならない。


「はぁ…参ったな。ボクだけじゃ処理しきれないぞ。あぁ、八丸にも教えないと。彼の調べている五月雨の家にちょっかいかけた犯人でもあるわけだからね」

「ほーん?その辺はイナリに丸投げしてるから知らないけどさ、とりあえず内通者の繋がり先がそんな危険人物の組織ってヤバくない?ウチの技術持ってるってそういうことでしょ?」

「あぁ!そうじゃないか!勿論大問題だよ!その辺の木っ端ならまだしも危険思想の組織に悪用なんかされたら…!Darn it(クソ)!」


珍しく荒い言葉を吐き捨てる彼女に、久夜はもうされてるじゃんと容赦なく追い討ちをかけた。


実際この問題は想像以上に深刻であり、流されたデータの中には断音装置や通信妨害装置などの機構もあるのだ。

そんなものまで危険な組織に渡っているなど、メイリーは上司に報告するだけでも憂鬱で口が砂漠化しそうだと独り言つ。


しかし項垂れている場合ではない、と彼女は乱れて顔に落ちてきていた髪を整えながら居住まいを正した。

「久夜、とにかく情報感謝する。ボクは今すぐこの件を…」

「あー…ハイハイ。逸る気持ちは分かるんだけどさ、ちょっと待ってくれる?」


礼も漫ろに立ち去ろうとするメイリーを引き留める言葉を口にして、久夜はまたしても口が裂けるような凶悪な笑みを浮かべる。

ギラギラ光る瞳には獰猛さの中に隠しきれない別の光がちらついていた。


遠足前の子供や遊園地に足を踏み入れた子供のようにワクワクしたその光は、いかにも楽しい事が起こるのだと期待を風船よろしく膨らませている。

まぁ実際真ん丸に膨らんだのは彼の瞳孔であるが。


「大変そうなキミにさ、一つサプライズプレゼントをあげるよ。きっと…いや、"アイツ"なら絶対くれる筈」

「プレゼント?"アイツ"…?久夜、何を言っているんだい?」

「はー…面倒くさ。とりあえずさ、黙って聞いててよ」


メイリーと話すよりも早くアクションを起こしたいらしく、久夜は彼女の相手もおざなりにしながらいそいそと端末を取り出した。


そして、名前登録すらされていない数列をタップして…呼び出し音が無機質に鳴り始める。

なんとこの男、こんな時間にも関わらず平然と誰かに通話を繋げたのだ。

メイリーは密かに相手へ同情した。止めはしないが。


「やっほー!」


やがて長い長いコール音の後にピッと繋がったその相手は…


〔ふざけんなよ安眠妨害の騒音野郎!〕


あまりにも口が悪くて、メイリーの目を点にしたのだった。


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