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5章:雨音の旋律


身体に纏わりつくようなべとつく空気に、思わず読みかけの本を閉じてため息をこぼす。

呼吸すら重苦しく、心なしかページの一枚すらも重い気がした。


それというのもここ数日降り続く雨のせいに他ならない。


五月の終わり頃にこちらへ来た私だけれど、気付けばここで過ごして一ヶ月が過ぎようとしていた。

つまり、季節はいつの間にか梅雨に片足を突っ込んでいるわけである。

虫干しの大半が終わった後なのが不幸中の幸いだよほんと。


「はぁ…」


あぁ、ダメだ。ため息が止まらない。

梅雨の不快さを久しぶりに味わったんだもの、許して欲しい。

いや、それを再び経験できるって事そのものは尊いに違いないのだけれど…


何せ"あっち"じゃどっかの馬鹿のブラックホールやら持ち出された核兵器やらで最終的に海が七割くらい減り、おかげさまで天候なんて滅茶苦茶だからね。


「うわぁぁぁぁぁぁぁん!!もう無理ぃ!!!」


不意に嫌な空気を丸ごと吹っ飛ばすような声が響き、私は苦笑を溢しながらカウンターから腰を上げた。


そこそこ広い図書室の真ん中。

古びたテーブルやソファを集めて作った談話スペースで、びぃびぃ泣きべそをかきながら突っ伏す彼女に声をかけた。


「二菜ちゃん、大丈夫?」

「お姉さぁぁぁん!!どうしましょう!だいじょびません!!」

「お、おお…そっか」


わぁっと彼女が撒き散らした大量のルーズリーフには、私も苦手だった数式やら化学式が落書きと共にぐしゃぐしゃに書き連ねられている。

と言うか落書きの方が割合多くない?気のせい?


「五月蝿いんだけど馬鹿図書室ではお静かにとか常識でしょっていうか綴戯さんに迷惑かけるのやめて欲しいしそんな暇があるなら練習問題の一つでも解けるようにしなよ馬鹿」

「うぐぅぅぅぅ!どうせ二菜は馬鹿ですよぅ!!!」


いつもの言い返しすら出来ずぶすくれた彼女の向かい側で小難しい物理学の参考書を開いていた至くんは、呆れたように目を細めて自分のノートに向き直ってしまった。


「うわぁぁぁぁぁぁぁん!このままじゃ座学のテスト赤点だぁぁ!!!」


そう、二菜ちゃんが嘆いている原因は学生であれば避けては通れないアレ。

所謂、テストってやつだ。うーん…懐かしいなぁ。

その勉強の為に二人はこうして休日でも図書室で刻苦勉励しているのである。


「お前が赤点なんて中等部の頃から変わらないでしょ何今更わめき散らしてるの」

「だって!!補習になったら夏休みお姉さんと遊べないじゃん!!」

「え、私と?」


話の中で急に出てきた自分に驚き、パチパチと瞬きを繰り返す。

すると、その通り!と彼女は身を乗り出した。

お願いだから前触れ無しに距離を詰めるのは止めて欲しい。慣れてきたとは言え心臓が不整脈起こすから。

たらりと冷や汗を垂らし、一歩足を下げた。

が、彼女は気にせず言葉を紡ぐ。


「夏休みになったら学生の任務は減らしてもらえるんです!!だから一緒に海水浴とか島にある山に登ったりとかお泊まり会だって出来ちゃいます!!」

「ただしテストで赤点だった者はもれなく毎日補習地獄っていうかこの馬鹿は万年そうなので今語った夏の過ごし方が出来たことはほぼありません辛うじて帰省が出来るくらいですね」


容赦ない至くんの指摘にまた二菜ちゃんはテーブルに沈んだ。

凄い音がしたけど、壊さないでね。それ、ただでさえボロっちいのだから。


「どうしてこの世には数字が存在してるの…こんなもの要りませんよね…」

「あ、もはや科目以前の問題なんだね…」

数学やら数式どころか数字そのものが許せないとは中々のレベルである。


「まぁ私も理数系の科目は苦手だったな」

「ですよね!!赤点とるのも仕方ないですよね!!」

「あ…えっとごめんね、平均点は…とれた、かな」

「お姉さんに裏切られました!!!」


フォローしようとして更に落ち込ませてしまった。申し訳ない。

一応得意じゃないのは本当だよ?

逆に漢字とか外国語とかは得意だったけどね。


「と言うか思ったんですが綴戯さんなら能力で"記録"さえしてしまえば参考書なりなんなりテスト中にカンニングし放題ですよね」


小声で囁かれた至くんの呟きに、ぎゅんと私を見た二菜ちゃんの目は…獲物を狙うネコチャンのようだった。こっわ。


しばらくきゃんきゃんと吠えていた二菜ちゃんだが、いい加減五月蝿いと至くんにド低音で叱られ、今は雨に濡れた子犬よろしくしょぼしょぼとペンを動かしている。

で、私はと言えば…そんな二人を横目に、立派に司書として働かせてもらっているところだ。


「綴戯さん、参考文献助かったですにゃ!」

「うわ…あれ、熊先輩大丈夫っすか?」

「あはぁ、キノコはえそぉですね」

「外に持っていったりましょか?」

「大丈夫だよ。ありがとう」


やはりテストが近いからか、ここ最近一年生と二年生の子達も専門書や解説書を借りに来てくれるようになった。

勿論恐怖心が無いわけじゃないのだけど…"あっち"では見た事無い子ばかりなんだよね。

だから比較的普通に接せている。


それにしても…一ノ世からここを任された時、滅多に使われないって聞いていたのは嘘だったのかな?別に構わないけど。暇をもて余すよりはマシだ。


やがて来客が途絶え、一息つきながら目を閉じる。

ムードのある音楽は無くとも本達の呼吸があるからだろうか。時間が停滞したような図書室はしかし寂れた雰囲気を感じさせず、湿度にさえ目をつむればひどく落ち着いて居心地がいい。


そう感じられるくらいには、"ここ"に馴染めてきたと思っていいのかな。


七尾さんの一件以来は司書として穏やかな日々を送れているからか、ストレスは随分和らいでいる。

一ノ世も忙しいらしく姿を見てないし…あ、これ重要ね。


まぁそれでも悪夢は全然無くならないから睡眠時間は少ないし、頭がぐちゃぐちゃになる時もフラッシュバックで過呼吸起こすことも相変わらずあるけど。

…改めて文字に起こすと私って病んでるな。


遠くの雨音とペンが紙を引っ掻く音に耳を澄ませ、ふと聞こえてきた呻き声に小さく笑う。

私は席を立ち、カウンターの後ろに本棚で仕切られたプライベートスペースから麦茶とお菓子を取り出した。

図書室は飲食禁止だろうって?私が住んで好き勝手してるのに適用されるわけないでしょう。本を汚さなきゃオッケー。


「二人共、少し休まない?」

「「賛成」」

わぁ、即答だ。


二人の前に職員寮のおばちゃんから貰ったクッキーと麦茶を置いて、私は私でゼリーの蓋をぺりっと開ける。

少しずつ固形物を食べる許可は出てるけれど、私の胃がまだ追い付かないんだよね。


「それにしてもお姉さん、人気者ですね!さすがです!」

「1・2年の連中今まで本なんて端末の電子書籍で済ませてたクセに露骨っていうか綴戯さん気を付けてくださいねアイツら猫被ってますから」

「え??」


なんか、勘違いじゃなければあの子達の目的が"私に会いに来た"みたいなんだけれど…


「…珍獣を見に来た的な?」

「いやいやいや何言ってるんですかまぁ最初はそうだったかもしれませんが今は完璧に癒し目当てで来てますよ」

「お姉さんと一緒にいるとなんか落ち着きますからね!!」


私からマイナスイオンでも出てるのかな??

いや絶対出てないでしょ。

霧のように飛沫を上げる荘厳な滝とか、人の手が加わっていないような深林に行った方がいいと思う。むしろ私が行きたい。


そういえば、『ソノヒ』の少し前にサークルの人達と「キャンプ」しに行った渓谷も良かったな。「また行きたい」。

自然に囲まれる…それがもの凄い贅沢だったんだって、失ってから始めて気付いたんだ。


「キャンプですか!いいですね!!」

「え、あ、声に出てた!?」


慌てて手で口を隠しても溢した言葉は戻らない。

とは言え行きたいと思ったのは本心だし、一ノ世死ねばいいのにとか口走ったわけじゃないからいいかと開き直る。


「そういえば小生達夏に山で合宿があるのでそこでならキャンプとかバーベキューとか出来るかもしれませんというかやりましょう一緒に参加してください」

「合宿…凄い学生っぽいね。楽しそう!毎年やるの?」

「はい!戦闘力強化合宿は毎年強制参加です!楽しいかはさておいて毎日ズタボロにはされますね!」

「なんかごめんね」


私の思ってた合宿と違いすぎてビックリした。何、戦闘力強化合宿って。字面からして怖いよね。

もっとこう、平和的というか青春の1ページみたいなものを想像してたのに、変化球が返ってきた気分だ。


というか、そんなハードな合宿でキャンプとかバーベキューなんて出来る余裕があるのだろうか。

私の中ではもう軍事訓練的なスパルタイベントに変換されているぞ。


「綴戯さんが頼めばいけます何せ小生達の担任は七尾先生なので引率も間違いなく七尾先生というわけで勝率100%です」


何が"というわけ"なのか。

どやぁと自信満々な至くんには申し訳ないけれど、私にそんな権限があるとは思えない。

そもそも肩書きはあくまでも司書なんだし、合宿への参加なんて出来ないと思うんだけど。


「私が、なんだ?」

「ひぇ!?」

「あー!!先生お姉さん脅かしちゃダメですよ!!」

「…」(コクリ)

「な!?す、すまない綴戯!」


本当にビックリした…背後にキュウリ置かれたネコチャンみたいに跳ねてしまったじゃないか。

急に後ろからイケボを出すのは良くないと思う。色々心臓に優しくない。

というか、至くんと二菜ちゃん気付いてたなら教えてよ。

もー…にこにこしてるし、わざとだな?悪い子達め。


こほんと心を落ち着けるように咳払いを溢し、どこかで雨に降られてきたらしくスーツの肩を濡らした七尾さんに向き直る。

…うん。今日も今日とてニュースとかにチラ映りしそうなリーマンスタイルだ。ただし顔はアイドルだが。


「えと、七尾さん。何かご用ですか?」

「ああ。本の返却と…実は昨日大樹と一緒にプリンを作ってな」


プリンヲツクッテナ?随分変わった呪文ですね??

首をかしげる私の手に、同じく不思議そうに首をかしげた七尾さんが可愛らしい容器を握らせた。


「…え!?プリン!?」

「あ、あぁそう言ったが??」

「きゃっははははは!!!」

「んっふ!!」


いやだって、いきなり七尾さんにプリン作ったなんて言われたら驚くよね。

しかも私にお裾分けなんて…

でも、大樹くんと上手くやれているようで何よりだ。

彼はあの事件以来、週に二,三回の頻度で義姉夫婦の家…つまり大樹くんの元に帰るようにしているらしい。


「あ、ありがとうございます。大樹くん、元気ですか?」

「ははは、元気過ぎるくらいだ!遊び疲れるまで中々寝付かないからな。困ったものだ」


困ったと言いながら笑うその顔は、こちらまでつられてしまいそうなほど幸せに溢れている。あぁこれは…親バカになりそうだな。なんて。


「ほうほう!先生は良いパパさんになりますね!!」

「…」(小生は学校とかで何か問題起きたら問答無用で教卓と黒板かち割ってきそうなモンスターペアレント予備軍の誕生に震えが止まらないけど)

「ぷっ!!」

「何か言ったか?言ったな九重」

「…」(フルフル)


賑やかなやり取りを背に、私は本の返却手続きに取りかかった。

あの三人仲良しだよね。


「合宿の話をしてた?」

「…」(コクリ)

「はい!!お姉さんとキャンプ&バーベキュー、ついでに枕投げもキャンプファイアーも肝試しも恋バナもしたいです!!だからお姉さんも連れていってください!」


七尾さんの分も麦茶を用意して戻れば、二菜ちゃんと至くんは早速例の話を彼に持ちかけているらしい。

さすが若者。行動が早いね。というか色々増えてない?


難しい顔で思案する七尾さんに苦笑を溢しながら麦茶を手渡すと、彼は真面目な声で爆弾を落とした。


「元々綴戯は連れていく事になっていたが…」

「え!?何でですか!?」

危ない、御尊顔に麦茶をぶっかけるところだったよ。


今の思案顔は何故わざわざ頼んでるんだ?って顔だったらしい。

けれど…いまいち意味がわからない。

何故私の合宿参加が決定済なのだろうか。


「は?一ノ世から聞いてないのか?」

「やっぱりアイツか!!」


七尾さんは私が了承済って聞いていたらしいけど、残念ながら合宿の"が"の字も聞いてないしそもそも一ノ世に会ってもいない。

また気まぐれなお節介の類いだろうかと思ったが、どうやら今回はちゃんとした理由があるそうだ。


「合宿期間は私含め教員が出払うからな。島そのものはともかく学園内部は警備が薄くなるんだ」

「あ…成る程」


それなら納得だ。つまり、私を監視する目が減るから困るのだろう。

一ノ世曰く上の人には私の事情を隠しているらしいから、下手な人には任せられないものね。


「それと…無理にとは言わないが、合宿中に訓練の"記録"を頼みたくてな」


"記録"はカメラの映像よりリアルな為、後々見返して反省点も見つけやすい…とのこと。

成る程理由はよく分かる。

けれど…即答は出来なかった。


そりゃ協力したいのは勿論だけれど、私が大丈夫である自信がない。

だってつまり、皆の戦う姿を注視しなければならないわけで…間違いなくトラウマを刺激されるだろう。

頭では大丈夫と分かっていても刻まれた傷がいつ開いてパニックを起こすか分かったものじゃない。

だからむしろ皆の迷惑になってしまうのではないか…その思いが口を重くした。


「ええと、嫌というわけじゃないのですが…自信がありません。私以外の"記録者"じゃダメなんですか?」


"あちら"では私以外の『記録』の能力者に会ったことはなかったけれど、こちらで聞いた話ではその能力自体はあまり珍しくもないらしい。

しかし、三人は揃って苦虫を噛み潰したような顔をした。

どういう反応だそれは。


若干居心地の悪い沈黙が嫌だったのか、まるで授業で先生にアピールする小学生のように片手をピシッと上げて二菜ちゃんが口を開く。


「あの!…他の"記録者"さんって皆か弱いらしいんです!!」


か弱い、から連れていけない?

それはつまり…


「…えと、私って図太いかな…」

「馬鹿言葉くらい選びなよ本当に馬鹿」

「至くん今日馬鹿って言い過ぎだよ!!でもお姉さんすみません!そんなつもりで言ったわけじゃないんです!!」

「綴戯さんも十分か弱いですし心配になるくらい繊細っていうかあんな箱入り共より守ってあげたさは断トツですので自信もってください」

「九重、それはフォローしてるのか?」


七尾さんは眉間を揉んで小さく息を吐くと、私を見てばつが悪そうに眉を下げた。


「すまない。昔も何度か頼んだ事はあるんだが…皆ショックで倒れてな」

「た、倒れた??」


マジか。そんなに恐ろしい訓練なのか。

確かに二菜ちゃんはズタボロにされるって言ってはいたけれど…ショックで倒れるレベルなんて相当では?

と、戦々恐々したものの、どうやら原因は『記録』の能力者にあるらしい。


『記録』の能力者は基本的に引きこもり気質で外には出て来ず、かなり内向的。

更には制約の事もあり、誘拐されたらそれすなわち情報流出と同義である。

故に、金庫にしまわれた機密書類よろしく大事に大事に守られ囲われているのだそう。それも幼少期からずっとだ。

つまり…至くんの言うとおり血や暴力とは無縁の箱入りばかりというわけ。


結果、バリバリ前線で怪異と戦うような彼らの気迫や殺気に耐えられなかった…というのが理由だそう。

成る程そりゃ私に頼むわけだね。

別方面に地雷はあれど、まだマシと言えるだろうから。


「…分かりました。そういうことなら、頑張ってみます」

「きゃはー!お姉さんと一緒で尚且つ見てもらえるならいつもより合宿頑張れそうです!!ね!至くん!」

「…」(コクコクコク)


両手でぐいっと持ち上げたマフラーに顔を埋めて隠しながら、しかし隠しきれてない目元を喜色に薄赤く染めてぴょこっと跳ねる二菜ちゃん。

つり目がちな瞳をへにゃりと緩ませて、喋らないぶん体全身身振り手振りで嬉しい!と雄弁に伝えてくる至くん。


そんな二人のストレートな感情にこちらまで嬉しくなってしまうのは仕方のないことで…

我ながら単純だけれど無理しなくていいとは言ってくれているし、やれる範囲でやってみようかなって思えたよ。


「さて、綴戯の参加については良いとして…バーベキューやら何やらをやりたい、だったか?別にいいぞ」

「「え!?」」


思ったよりあっさりオッケーが出たことに二菜ちゃんも至くんも一瞬顔を輝かせるも、裏があると思ったのかすぐに怪訝そうな顔をした。

私は表情豊かで面白いな、と思いながら皆の麦茶を追加する。


「誤解してるようだが、元より合宿にレクリエーションは組み込まれてる。ただ毎年お前達がダウンするから出来なかっただけだ」


つまり、遊びに使える自由時間は設けられているが、それを体の休息にしか使えないレベルでしごかれるという事だろう。やはりスパルタだ。


「いやいやいやどう見ても小生達に遊ばせる気無いでしょあのメニュー量っていうかあれで遊べた学年とかあるんですかどうですか」

「そもそもは一ノ世の学年(問題児ども)対策で厳しくなったらしいんだが…アイツらはこれでも遊びまくったと聞いたぞ」


うわぁ後世へのとばっちりが酷すぎる。

見てよ二人の聞かなきゃ良かったなって虚無顔。

やはり学生時代からアイツはアイツって事だ。ろくな事しない。

というかアイツと一緒に問題児どもと一つに括られる世代が恐ろし過ぎやしないか。


「ま、だからやりたいならバーベキューでも花火でも大量の枕でも用意してやるし、今回ばかりは訓練メニューを多少手加減してやらなくもない」

「「おぉ!!」」

「ただし!」


言葉を切ってニヤリと笑った七尾さんは、こちらが素なのだろう。どこか意地の悪い悪童じみた色を乗せて再度言葉を紡いだ。


「お前達"二人共"全教科赤点回避出来たら、だ」


暫しの沈黙。二人はまるで氷像にでもなったみたいに固まっている。


「…二人共って事は小生だけが頑張っても馬鹿がやらかしたらそれはつまりアウトってことでそれなんてムリゲー」


悲壮感たっぷりに顔を覆ってしまった至くん。

二菜ちゃんは項垂れたままプルプルと震えて…


「…やります」


聞こえた小さな呟きに皆がどうしたのかと覗き込むと、彼女はガタン!と椅子を倒しながら立ち上がった。


「二菜、やり遂げてみせます!!!絶対お姉さんと遊びます!!」

「二菜ちゃん…」


ショックを受けたんだと思っていたのに、顔を上げた彼女の瞳は強い覚悟を宿している。

あぁ、やっぱり強いな。なんだか凄く眩しい気がして、そっと目を細めた。


「至くん!手伝って!!」

「そりゃ当然だけどお前ホントのホントに出来んの今回はマジで容赦しないし投げ出す泣き出す逃げ出す全部許さないよ小生だって綴戯さんと合宿楽しみたいから」

「やれる!!絶対やる!!」


固く手を握り合ってわぁわぁ言い始めた二人に、七尾さんがしてやったりな顔をして微笑んでいる。

どうやらわざと焚き付けたらしい。


「…ふふっ」


私は思わず小さな笑みを溢した。


〈あたしが100点とったら全員お高いコンビニアイス奢りね!!〉

〈ハイハイわかったわかった〉

〈毎回恒例のやつだ〉

〈いっつも50点ギリなのにいけんの?〉

〈今回こそはやる!!だから栞里も応援してて!!幻の花丸見したげる!!〉

〈え?奢る側なのに?もー、わかったよ…〉


いつかの昔、私も親友だった彼女や他の友人達とこんな風に過ごしたんだっけ。

地獄しかない"記録"ではなく、私自身のもつ確かな思い出(宝物)

それに手を伸ばそうとした指先がピクリと動いたけれど、すぐに思い止まってきゅっと拳を握った。


もうソコに、私の帰る場所はないじゃないか。


「よし!そうと決まれば至くん!対策会議しよう!!お姉さん!二菜達、今日はこれで失礼しますね!!」

「…」(ペコリ)

「…あ、二菜ちゃん、至くん!」


筆記具や本を抱えて立ち去ろうとした背中を呼び止めた。

パチパチと不思議そうに瞬いた四つの瞳に言葉がつい滑り落ちる。


〈頑張れ親友。期待してるから!〉

「頑張ってね二人共。…期待、してるから」

「「…はい!!」」


窓の無い図書室で燻っていた湿った空気を振り払うようにピカッと笑い、今度こそ二人はパタパタと駆けていった。


「…綴戯?お前…」


ぼんやりと閉まった扉を見つめていた私は、七尾さんの声にハッと我に返る。

振り向きざまぱたぱたと落ちた雫に彼がぎょっとしたのが分かったけれど、知らない振りをして笑った。


「大丈夫です。ただ少し、懐かしくて」


麦茶を注ぐと言い訳をして逃げようとした私の腕を七尾さんが引き留める。

ピクリと肩を跳ねさせた事に申し訳なさそうな顔をしながら、それでも彼は手を離さなかった。


「…綴戯。お前が失ったものは計り知れないし、取り戻せるなんて軽々しい事は言えない」


七尾さんは真っ直ぐ、しかし優しく私を見据えながら続ける。


「だが、お前が望んでくれるなら…ここには"今から"がある。焦らずに、"今から"自分の居場所を作っていけばいい。私達も、期待しているからな」

「き、たい…?」


「あぁ。私も熊ヶ峰も九重も、お前の友人になれると…そう期待させてくれ」


友人。

その響きに眼を丸くして七尾さんの深い青を見つめた。

嘘の色などない凪いだ海のようなそれは、ただ静かに私を待ってくれているのだ。

あぁ、そういえば二菜ちゃんにも会った初日に言われたっけ。


友人。友人か…

臆病故に未だどうしても言葉にする勇気のないそれ。


けれど、誤魔化すのも馬鹿馬鹿しいくらいにさっきのやり取り一つで嬉しくなった自分がいるんだ。

叶うならあの隣に一緒に付いていきたいと思えた自分が、何より七尾さんの言葉に喜んでいる自分が、間違いなくここにいる。


「はい…期待していてください!」


だから私も、自分の変化に期待してみていいのだろうか。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


カラン、とコップの中で氷が遊ぶ。


少しゆっくりしていく、と大樹くんの話に花を咲かせていた七尾さんだが、先程からチラリチラリと腕時計を見ては顔をしかめている。

休日なのに仕事でもあるだろうか。

いや、というよりは何かを待っているみたいだけど…


「あー、綴戯。実は今日紹介しておきたい奴がいるんだ」


彼曰く、恐らく勉強につきっきりになるだろう二人やテストの問題作成その他で忙殺されるだろう自分の代わりに、暫く別の能力者に護衛役を頼んだらしい。

というか、護衛って言われた気がするけれど監視の間違いだよね?


「で、ソイツがここに来る…筈なんだがな」

「あ、成る程。待ち合わせなんですね」


長居するのは珍しいと思っていたが合点がいった。

時計を気にしていたのも、仕事ではなく待ち合わせの時間を気にしてだったのかな。


「いい加減来てくれないと仕事がデスクで山になっているのに…」


訂正。やはり七尾さんと仕事は切っても切り離せないみたいだ。

今の呟きで自分にダメージが入ったのか、一瞬で目が死んだ彼に同情を禁じ得ない。

毎日本当にお疲れ様です。


「あの、その人はいつ来る予定なんですか?」

「わからん…そもそも一緒に来る筈が見当たらないし連絡も無いんだ。どこを彷徨いているやら…」

「失礼しちゃうのヨ」


「「…ん??」」


突然聞こえた第三者の声に、私達はキョロキョロと辺りを見渡す。

どこか艶のある、しかし大人か子供かよく分からない男の声だった。


が、いくら眼を凝らして見ても、映るのは密やかに湿気を吸い込む本達と静謐を湛えたアンティーク調の家具達のみ。


え、何?霊的な類いじゃないだろうな。

私結構嫌いだよそういうの。

ベクトルは違えど"アイツら"並に嫌い、と言えば程度は察せるだろうか。

ジリジリと七尾さんの側に寄って警戒していると、またどこから聞こえるのか分からないあの不思議な声がふわんと響いた。


「オレサマちゃあんと一緒に来たのヨ。濡れ衣なのヨ」

「ひぃ!」

「コラ!!いい加減姿を見せろ!稲荷田!!」

「むむー酷い言い様なのヨ。オレサマはずっと呼ばれるのを待っていただけなのヨ」


え、もしや例の監視の人??なら一応は生身の人間で合ってる?

けどどうしよう…能力『幽霊』とか言われたら仲良く出来る気がしないぞ。

いやそんな能力があるのか知らないけど。


カタカタカタカタ


聞こえた音にビクッと分かりやすく肩を跳ねさせ、思わず七尾さんの広い背にさっと身を隠した。

何が動いたのかと音をたどって見てみれば…


「ほいっと」


ぽふんと緊張した空気を壊すような軽快な音と共に、テーブルに置きっぱなしだった大樹くん&七尾さん作の手作りプリンが人になった。


「「は???」」


もう一度言う。プリンが、子供になった。

いや、何度言っても意味分からないな???

え?なんで?


どんなに眼を擦ってみてもやはりプリンは跡形もなくて、代わりにテーブルでぷーらぷーらと足を揺らすのは大樹くんより幼いだろう子供だ。


毛先にかけて黄金にグラデーションしている美しい白銀の髪。虹彩は左がレッド、右がヘーゼルの所謂オッドアイで、瞳はクリーム色をしている。

涙袋の下に左右2本ずつ引かれた赤いラインはまるで動物のひげみたいだ。


何これプリンの妖精かな?なんてトチ狂った考えが浮かびかけ、慌てて頭を振るった。

落ち着け私。どう見ても能力者だよ。


ところで、ふくふくの可愛らしいほっぺに付いてるそのクリームは…


「…テメェ稲荷田ァ!!いつの間に…!!しかもプリン食いやがったな!!」

「むむー、人を疑うのは良くないのヨ」

「いや、バッチリ証拠付けてそれは無理があるかな…」

「ありゃ」


ごちん!と容赦ない拳が振り下ろされたのは言うまでもない。


「初めまして。オレサマは八丸。稲荷田(イナリダ)八丸(ヤマル)っていうのヨ」


いつかの一ノ世のように特大のたんこぶを頭に乗せながら、見た目の割に随分大人びた色をした声で彼はそう名乗った。


「えと、よろしく…それ大丈夫…?」

「気にしなくていいのヨ。ハルキの暴力には慣れてるのヨ」

「人聞き悪ぃ事言ってンじゃねぇ!」

「ホントのことなのヨ」


つーんと澄まし顔で七尾さんをあしらう辺り、本当に慣れていそうだ。

一体どういう関係なのかと首を捻り、ハッとなった。


「か、隠し子…!?」

「ぶ!!!つ、綴戯!!断じて違う!!」

「むむー、こんなオヤジは嫌なのヨ」


良かった、違うらしい。

いや、七尾さんに限ってあり得ないとは思ったけどね?一応確認しとこうかなって。

あまりに必死な様子にクスクス笑うと、私が冗談を言ったのだと気付いた七尾さんは疲れたようにため息をついた。


「あー…綴戯。稲荷田は『変化(ヘンゲ)』の能力者でな。見た目はガキに変化してるが…中身は一ノ世とタメだ」

「…え???えぇ!?」


まってそれは予想外。

一ノ世のタメってつまり25歳って事だよね?


「何なら見せてやるのヨ。ほいっと」


先程のように軽い音を立てたと思ったら、瞬きの間に彼の顔が私よりずっと高くへと位置を移した。


思わず数歩後退って目線をそろりとあげる。

個々のパーツは面影そのままに顔付きはしゅっと端正になり、成る程声の艶に納得する色気をお持ちだ。


「オレサマ他人への『変化』はめっちゃ苦手だけど、自分の姿と物なら自由自在なのヨ。だからあのプリンに『変化』するくらいはお茶の子サイサイだったし、シオリは子供好きって聞いたからプリチーな子供姿に『変化』して出てきたのヨ」

「そ、そうなんだ…」


当たり前ながら子供姿より低く艶やかな声は何と言うか、緊張して落ち着かないな。


「お望みならおじさまでも赤ちゃんでも女体化でも…あらゆる見た目でプレイを楽しませてやるのヨ」

「あ、結構です」


ちょっとまってなんか凄くヤバイ事を言われた気がする。

嫌な予感がして更に数歩下がるが、今度はあちらも長い御御足を一歩動かして距離を詰めてきた。

鼻が触れてしまいそうな程ずいっと顔を寄せた稲荷田さんは、ふわりと白檀の薫りを纏いながら綺麗に微笑む。


「オレサマ強いオスだからシオリを大切に守るし、ちゃあんとベッドでも楽しませてあげるのヨ。任せるのヨ」


…アウトー!!!!


「七尾さん!!七尾さーん!!」

「こンのド変態が!!」

「おっと。むむーハルキはすぐ手が出るのヨ」


稲荷田さんはヒラリと舞うように七尾さんの拳を避け、ぷぅと頬を膨らませる。

やっべぇ。一ノ世とかとは別方向にヤバい人だこれ。

何一つ任せられないというか、身の危険しか感じないとは此れ如何に。


「女グセの悪さは相変わらずかまったく!」

「失礼なのヨ。オスとしては求められたら与えるのが当たり前なのヨ」

「はぁ…変わらないなお前。…あー綴戯。すまないな。だがこんな奴でも信用には値するんだ」

「嘘でしょどの辺が???」


混乱し過ぎてつい七尾さん相手にも言葉遣いが乱れてしまった。


「むむー、オレサマ嫌がる子には絶っ対に手を出さないのヨ。オスとして、そんなダサい事はしない」

「…っ」


遊びまくりのチャラい人かと思いきや、ひたりと向けられた瞳には確かに軽薄さは微塵も見えない。

少なくとも嘘をついているようには全く見えなかった。


チラリと七尾さんを見れば、苦笑しながらも大丈夫と言いたげに頷く。

…彼がわざわざ私の事を頼んだ相手なのは確かなのだから、警戒はしても頭ごなしに否定はしたくない。

だってそれは、"こちら"の七尾さんを信用すると決めた私を否定することになってしまうもの。


でもなぁ…この人が側いにるって正直落ち着かないよね。色々な意味で。

と、ぐるぐると悩んでいる私の様子に不服そうな顔をして、稲荷田さんはまたぽふんと子供姿に戻った。


「むむー、シオリを怖がらせるのは嫌なのヨ。ごめんね。オレサマはずっとこっちでいるのヨ。約束するのヨ」


しゅーんと落ち込んだように眉を下げ、きゅと服の裾を紅葉のような手で握りしめながらこれならいい?と上目遣いをしてくる幼子が可愛すぎて狡い。


見た目は天使と言っても過言ではないのに、中身はアレである。詐欺もいいとこでは?

ただ一応私を気遣ってくれたのは確かみたいだ。


「本当にすまない。一応悪い奴では無いんだが…」

「あはは…それは、はい。わかります」


女グセが悪いというのは嫌悪感が無いわけでもないけれど、どうやら不誠実とか泣かせてるような類いではないみたいだから…今のところはひとまず保留だ。

職業:ホスト的な生き物だと思っとこう。


「ちなみに、さっき話した一ノ世の学年(問題児ども)の一人だ」

「成る程。察しました」


一ノ世、三神は知っていたけど、そこにプラスこの稲荷田さん…それぞれを表層程度しか知らない私でも、当時の担任が憐れすぎて泣ける。

一体前世でどんな悪行をおかしたのだろうか。


それにしても稲荷田、か…"記録"にそんな名前の人いたかな?

一ノ世の知り合いなら反乱軍に居てもおかしくなさそうなのに、会ったことないと思うんだよね。たぶん。

変化してたなら分からないけど。

まぁトラウマを刺激されないというなら、こんなに有り難いことはない。


「えっと、改めて綴戯栞里です。よろしくね稲荷田さん」

「八丸でいいのヨ。シオリのことはオレサマがバッチリ守るのヨ」


むん!と小さな体で胸を張る稲荷田…いや、八丸くんにパチリと瞬き、さっきから気になっている事を尋ねた。


「なんでそんなに…守るって言ってくれるの?」


初対面の筈なのに、彼の言葉の端には常に私を案じる響きがある。

特に、守るという言葉には強い意志が感じられた。

私の言葉にきょとんとした顔をしていた八丸くんは、ゆるりと子供姿に似合わない艶然とした笑みを浮かべる。


「シオリはオレサマの数少ない仲間なのヨ」

「仲間…?能力者ってこと?数少ないって、まぁ確かに少ないだろうけれど」

「そっちじゃないのヨ。オレサマとシオリのお揃いは」


他に何かあるのだろうか。

首を傾げる私に彼は今度は子供らしくにまっと笑い、パチンと柏手を打った。


瞬間、八丸くんの頭と腰辺りからぽふんと煙が立ち…


「…え!?」


彼の頭にはぴょこんと立った大きな三角の耳が、背後にはもふもふした毛の塊がふわりと揺れていた。


これは所謂、け、ケモミミ…ショタ??


もうやだお腹一杯だよこの人。

性癖の宝石箱か何かかな??

どんだけ属性網羅すれば気が済むのだろうか。


一人情報を処理しきれずに停止している私を余所に、どこか上機嫌にしっぽと思われるもふもふをふぁさっと振って彼は話を続けていく。


「オレサマは能力の副作用で体質異常があるのヨ。"記録"で見たけど、シオリの不老不死と一緒なのヨ」

「体質異常…」


聞くと、八丸くんは『変化』の能力が開花すると同時に獣の耳としっぽが生えてしまったらしい。

調べた結果遺伝子の組成が永続的に変化し、人と獣が混ざり合っている状態が常になってしまったらしく、よくファンタジーで聞く獣人に近い存在なのだとか。


「能力者の中には稀にいるんだ。常に体のどこかが発火してるとか、足に魚のヒレが生えたとか…小規模で言えば九重の耳もそうだぞ」

「あ…そうなんですか」

「まぁ、稲荷田や綴戯のように身体丸ごとの異常は少ないがな」


おかしいのは私だけじゃ、ない。

その事実に急に呼吸がしやすくなったような気がした。

あぁ、やっぱり私は単純だな。

心がこうもあっさり擽られてしまうんだから。

そっか…私だけじゃないんだ。


「シオリは仲間で一番弱いメスなのヨ。だから強いオスのオレサマがしっかり守ってやるのヨ。任せなさい」

「…ふふっ、ありがとう」


台詞は傲慢だし見た目は子供だけれど、なんだか酷く安心した。


ピリリリ


不意に鳴り響いた通知音が優しい空気に水を差す。

どうやら八丸くんの端末かららしく、色違いの目を瞬かせながら中身を確認し、次の瞬間パッと表情を明るくした。


「あ、御誘いなのヨ。ふむふむ横浜担当の『転移』の子?丁度いいのヨ」


…ん?


「じゃあオレサマ、今からマナちゃんとオネショタプレイをヤってくるのヨ。またねー」


るんるんとスキップしながら去っていく後ろ姿を見送る私と七尾さんは、不意打ちでぶちこまれた爆弾に絶句である。


オネショタ。ヤってくる。


子供の口からは決して出てはいけないだろう言葉だと思うのだけれど…

え、これは嬉々として受け入れる八丸くんがヤバイの?それともそれをお願いする人がヤバイの??

あ、どっちもか。うん。そうだよね。


「あンのド変態がぁぁぁぁ!!!」


ようやく情報を飲み込めたらしく真っ赤な顔で怒鳴り散らす七尾さんを見ながら、私は一人死んだ目で宙を仰ぐ。


前言撤回。安心もクソもありません。

これからが滅茶苦茶に不安です。

はやくテストが終わりますように。


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