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クロエの場合  作者: Akira
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名前を呼ばれて呼んでみた



アレクシスさんに送ってもらって家につくと、なんだかバタバタした雰囲気。

まるで、これからお店を開く、みたいな...。

忙しそうに準備しているパパに声をかける。

「パパ...?」

「あぁ、おかえり、クロエ。どうだった?ヘンなことされなかっただろうな」

「うん...。なんでエプロンしてないの?」

「あ!?」

慌ててエプロンをつけるパパ。

店内を見る。いい時間なのに、お客がまばら。

ドリンクだけで料理の乗ったテーブルが1つもない。

洗い場にはお皿がない。

「...ねぇパパ?どこかに行ってたの?」

うちは、わたし以外にも元冒険者、という人を3人雇っている。

1人、料理を修行中、という人がいるが、パパがいるとき以外はお客には料理を作らせない。

まだ、その段階ではないそうだ。

「パパ。まさかだけど、ついてきてないよね...?」

「まさか。あんなについてくるなって言っただろ?クロエが」

「.....」

「疲れただろ?少ししたら夕食を持っていくから休んでな」

「.....はぁぁ」

わたしは思いっきり溜息をついて2階に上がった。

パパが青くなって店員さんがビクッとしてたけど知らない。



部屋着に着替えてリビングに戻るとソファにどかっと座る。

今日のことを思い出して顔を覆う。

パパがついてきていた。

昨日、あんなに言ったのに。

心配だったんだろう。パパは、わたしを溺愛してるし。

...でも。

でも土手でのことは見られたくなかったー。

ぎゃー。

靴を脱いでソファで三角座りをして額を膝に押し付ける。

横にゆらゆら揺れてみる。

あああああ。

あんな赤くなってモジモジしてるとか、パパに見られてたとか信じらんないっ。

覗きっ!覗きだよ。

ストーカーだ。ヤバいヤツだ。

パパめーっ!

頭を抱えて足もバタバタしちゃう。

足をバタバタとか体を揺するとか、みっとみないことをいっぱいしてるうちに少し落ち着いてきた。

階段を登ってくる足音がする。

「クロエ。ご飯、持ってきたよ」

無視しちゃう。顔も膝につけたまま。

「クロエ。あの冒険者と付き合うことにしたのか?」

「.....」

「後で、ゆっくり聞かせてくれ」

「.....」

「大事なことなんだ」

「.....」

「クロエ。ごめんね?パパ心配で。今度、ちゃんと挨拶させてくれ」

「.....」

顔をあげるとドアを閉めるパパの背中が見えた。

めっちゃ凹んでた。

もう怒ってない。

ただ、恥ずかしいだけ。気まずいだけ。

どんな顔してればいいのよ...。

しかも挨拶って...。

いや、流れとしては間違ってないんだけど。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「こ、こんにちは」

「アレクシスさん!こんにちは。ちょっと久しぶりでしたね。どうしてたんですか?」

「うん、時間を作りたくて一気に稼いできた」

デートして流れ?で告白して付き合うことになったが、そこから2週間もアレクシスさんはお店に来なかった。

なんでだ。どうしてだ。わたしと付き合うの、やっぱやめにするとか?と心配したが、他の冒険者の人に狩りに行ったみたいだ、と聞いて今度はケガしてないか、とか、どこまで行ったのかと心配になった。

「そう...。どこもケガしてないですか?」

「...うん。大丈夫。俺、結構強いから」

「何で、そんなににこにこしてるんですか?」

「体の心配してくれるんだなぁ、て思ったら嬉しくなって...」

「...当たり前でしょ...?」


「あー...、コホン。桃色な空気のとこ悪いんだがね」

「パパ。そんな色の空気、なってないからっ!」

「いや、なってたよ。なってたよな。やっぱ俺の見間違いじゃなかったんだな」

「どういうこと?クロエちゃん、そいつとどういう関係?」

「まさかだよね。そんなわけないよね、クロエちゃん」

「うるせぇっ!」

パパが一喝する。

「アレクシスくん。上、行っててくれるか。話がしたい」

「...はい、わかりました」

わたしはアレクシスさんを2階に案内する。

2階、3階はパパとわたしの居住空間だ。

一応、応接室なんてあるので、そこに案内してお茶を入れる。

「ク、あなたがいれてくれたの?」

「そうだよ。パパと2人暮らしだもの。これくらいしますよ」

「女性がいれてくれたお茶なんて初めて飲む」

「そういえばアレクシスさんは貴族でしたね」

「知ってたの?」

「うん。ごめんね。パパが調べたの」

「いや、そうだよな。当然だ。俺は次男だし、こんな見た目だから貴族社会で生きていくのは難しくてね」

「貴族でも冒険者になる人はいますよ?」

「ん、まぁそうなんだけど。うちは伯爵家だから、ちょっと珍しいんだ。冒険者になるのは下位貴族が多いから」

「アレクシスさん強いって聞いてますよ?A級になれそうなんでしょ?凄いじゃないですか」

「ありがとう」

「それに、冒険者になってくれなければ、こうして会えてなかったかもしれないですしね。騎士になる道もあったでしょうに冒険者になってくれて、わたしとしては良かったかも、なんて」

「.....」

「なんですか?」

「ク、あなたは俺を喜ばせるのが上手だよな、と思って」

「クロエです」

「え?」

「わたし、クロエです」

アレクシスさんをじっと見る。少し赤くなっていたのがどんどん広がっていく。

「クロエ、さん」

「はい、クロエでいいです。アレクシスさん、貴族なのに腰低いですよね」

「こんな見た目で偉そうにしても鼻で笑われるよ。それに冒険者としても5年はたってるし。クロエ、もアレク、で、いいよ。俺のこと...」

「...アレク?」

「ん、クロエ」

うわー、なんだコレ。

アレクシスさん、じゃなくてアレクになったんだった。

アレク、の優しそうな嬉しそうな、でもちょっと赤い顔の微笑みにヤラレる。

その時、ドアが開いてパパが入ってきた。

「...また桃色になってる。アレクシスくん、クロエに何した?」

「何もされてないから!」




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