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クロエの場合  作者: Akira
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その場の流れで言ってみた



もう!自称イケメンめっ!

またアレクシスさんが凹んでる。

邪魔すんな、て言ったのに。

気分を変えようと、なるべく明るく話しかける。

腕も掴んだままだが、嫌がっている様子はないので続行する。

話しかけるが返事が適当なカンジ。

「ああ」とか「まぁ」とか「うん」とか「そうかな」とか...。

途中でドリンクと揚げ菓子を買って更に歩く。

このまま行くと川がある。

土手にはベンチが所々あったはずだから、そこでゆっくりするのもいいかも、と思ってアレクシスさんを見る。

少し俯いて明らかに落ち込んでいるふうだ。

この世界はブサイクにキツイから、わたしと一緒にいることで、いつもより嫌な思いをしているのかもしれない。

こんなつもりではなかったのに。

あまり人がいないところがいいのかな。

それなら土手は街よりはいいだろう。

「アレクシスさん、座りましょ?」

「え?」

アレクシスさんを促して、わたしも座る。

「あれ、ここ、土手...?」

「そうですよ。今日も気持ちのいい天気ですね。こんなとこでゆっくりするなんて初めてです」

深呼吸して空を見上げる。

少し歩き疲れたから座ってほっとする。

ぼーっと川や空を眺める。本当にこんな時間は初めてのような気がする。

いつもはお仕事してるし休憩やお出かけと言っても街中や伯爵様の御邸が多いから伯爵様の造られた綺麗な庭園ではなく草も生えた土手や大きな岩や倒木がある川をこんなふうに眺めるなんて...。

川の流れる音も心地良い。

「確かに...昼寝したくなるね」

「ね」

さっきまでは頑張って話していたけれど今はたいした会話がなくても全然いい。



「いつからお父さんのお店で働いてるの?」

「んー。気づいたら、ですね」

「気づいたら?」

「はい、多分、6歳とか7歳くらいのときにパパを手伝うって言って注文された料理を運んだりして...、今、思うと邪魔だったと思いますよ?汁気のあるものを運ぶのにこぼさないように運ぶから時間がかかったり、なのに少しこぼしちゃったり。ふふ」

「女の子が手伝うなんて、それだけで凄いことだよ」

「パパが大好きで一緒にいたかったし、傍にいてお仕事してるのを見てると手伝いたくなったんですよね」

「優しいね」

「違いますよ。自分がパパと一緒にいたかったんです。見てて自分もやってみたくなっただけ。パパのため、とかあまり考えてなかったですよ。今は違いますよ?わたしがお店にいることでお客さんが増えるし、もう成人するくらい大人だから、ちゃんとこぼさないで運ぶことも注文をきくこともお金の計算もできるし」

「大人...。でも、婚約者とか夫たちは、そんなことしなくていいって言われない?」

「あ。わたし、まだ成人してません。だから結婚はまだだし婚約者もいないんですよねぇ」

「え!?」

「あ、やっぱ驚きます?さすがに婚約者の1人くらい作らないとなぁ、て思ってるんですけどね」

「俺と、こんなことしてる場合じゃないでしょ」

「...だからアレクシスさんとデートしてるんですけど?」

「...どういう、意味...?」

「えー、女の子に言わせますぅ?」

「.....」

「アレクシスさん、 ...わたしとお付き合いしてみません?」

地面を見たまま言ってみる。顔見てなんてムリでした。

へ、返事...。

ちらっとアレクシスさんを見る。

大きな青い目を見開いてる。

川を見る。返事はまだ。

また、ちらっとアレクシスさんを見る。

さっきと同じ。

「何か言って...」

「あ、あぁ...。 なんて言った?」

「えーっ!もう1回言えと!?」

「.....」

「.....」

「.....」

「あのね? ...わたしと付き合ってみる気ないかなーって」

「.....なんで、...俺?」

「アレクシスさん、初めていいかも、て思えた人だったの」

「は?俺よりかっこいいヤツなんて、それこそ掃いて捨てるほどいるだろ」

「いなかったんだもん...」

「嘘だろ...?」

「嘘じゃないもん。いい人はいっぱいいたよ?でも先を考えられなかったってゆーか...」

「いいの?俺で。ガッカリするかもよ?」

「アレクシスさんこそ、わたしにガッカリするかもですよ?」

ホントにガッカリされたら、かなり凹むが。

「俺はしないと思う」

「...なんで、そんなこと言えます?」

「あなたみたいな女の子、かなりレアだよ?全然我儘言わないしお父さんのお店を手伝ったり、お礼にって男にプレゼントなんてあげようと思ったり俺なんかに帰らないで、とか言っちゃうし、お、俺に、つき、付き合わないか、とか言っちゃうような子」

「そんなに褒められると照れちゃいますね」

「一応、聞くけどからかってるわけではないよね?からかってるにしても...」

「本気です!」

「...あ、うん。からかうにしてもやり過ぎだし、そうだと思ったんだけど、夢みたいで...」

お互い顔を赤くしてもじもじしてしまって、何とも言えない空気に恥ずかしくなる。

肘に紙袋が当たって音をたてる。

「あ。そーだ。お菓子買ったんだった」

「お菓子?」

「はい、ここ来るとき買ったでしょ?食べません?」

「買ったっけ?」

アレクシスさん、ずっと俯いてたから、わたしが買ったのだ。

「ランチに誘ったの、わたしなのに御馳走になっちゃったし。どーぞ。食べたことないお菓子だから味わかんないけど」

紙袋から2つ出して1つをアレクシスさんに渡す。

自分も食べようと思ったけど封がされてあってどうやって食べるものかと眺めていたらアレクシスさんが持っていたものを袋ごと2つに折り曲げた。

中から上手い具合に揚げ菓子が顔を出す。

「はい」

アレクシスさんが差し出すそれをお礼を言って受け取る。

アレクシスさんは、わたしから受け取ったお菓子を、また2つに折り曲げてパクッと食べた。

「うん、美味い」

「こうやって食べるんですね」

わたしもパクッといく。

「いや、俺も初めて食べるから正しいかわかんねぇ」

「え?」

「まぁ、いんじゃね?食えれば」

なんか、かっこいい。うまく言えないけどかっこいい。

それに口調が変わったような...?

「...なんで、また赤くなってんの?照れてる?え、マジで?そんな要素あった?」

「...なんか、よくわかんないけど、カッコいい」

「え?」

「口調も少し変わったような気がする...」

「あ...。ごめん。冒険者なんかやってると、どうしても、な...。なんか、ちょっと気が抜けて...」

「ううん、それも、なんか、いい...」

「...そ?」


2人してモジモジしながら食べた揚げ菓子は今日イチ美味しかった。




た、短編...。

甘いのも難しいけど短編も難しいことを知りました...。


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