感動しっぱなしになってみた side アレク
16日振りにクロエと会えた。
貴族の恰好で会うのは初めてだったので気恥ずかしい。
クロエはよそ行きな恰好をしていた。髪も複雑に結っている。
少し大人っぽくて綺麗だ。
俺はこんな格好をしてもブサイクを隠せないのに。
差が開いたようで不安になる。
だが、クロエは「抱きつきたい」とか「凄い格好いい」とか「ぎゅーってしてほしい」などと言う。
抱きしめていいなら...と手が出そうになったとき親父さんが、ぽつりと言った。
「あー、また桃色の空気に...」
あ、危ない。
俺は気を引き締めるとクロエに手を差し出し馬車までエスコートした。
馬車に乗ると2人きりだ。
クロエが「会いたいなー、いつ帰ってくるのかなー、て毎日思ってた」などと可愛いことを言うので、さっきの発言が、まだ有効か聞いてみた。
「...うん。ぎゅうってしてくれる?」
聞いた瞬間には腰を上げ、クロエを膝に乗せると抱きしめた。
クロエは俺の膝の上で大人しくしている。
俺なんかの腕の中で頭を俺の肩につけ、安心しているように見えるクロエに愛しさがこみ上げる。
すぐ傍にある頭にキスしてもいいだろうか、などと考えていると「ところでね?アレクのお父様に会うことになったのは、どういう経緯?」と聞いてきた。
うーん、父上は、まだ少し疑っているみたいなんだよな。
クロエみたいな子はレアだから。
変なことを言うより、いつものクロエを見てもらった方がいいと判断して、そのままのクロエでいてほしい、と言った。
誤魔化そうとしたつもりはないんだけど「クロエは可愛いってこと」と言うと「そんなので話を逸らしたつもり?」と拗ねたように言う。
拗ねたように言っているが顔は赤いし、上目遣いがヤバい。
しかも自分が膝に乗せているせいだが顔が近い。
至近距離でこれはヤバいって。そうでなくてもクるのに...。
クロエの唇に自分の唇の代わりに指をなぞらせた。
クロエの頭を引き寄せると「ちょっとこのままで頼む」とだけ言った。
危ねぇ。顔を見るからダメなんだ、と見えないようにしたけど、今の俺の精神状態で抱きしめているのもヤバい。
手を動かしたい欲求を必死に抑え「早く着け」と何かの呪文のように唱え続けた。
邸に着くと父上が出迎えてくれていた。
使用人の数も多い。どうせクロエを見たいだけだろう。
ちゃんとした教育はされているから全員澄ました顔をしているが目は口程に物を言う、てな。
ち。見んじゃねぇ。俺のだ。
クロエは、きちんとした挨拶をしていた。
こんなクロエは初めて見るが誇らしい気持ちで惚れ直す。
父上はクロエの身辺調査など済んでいるだろうに、身近な人のことを聞いている。
そして、ついに本題だ。
「ところで、アレクシスから聞いたんだがクロエさんは夫が1人、というのが望ましいとお考えかな?」
「.....理想、ですが、そうです」
「クロエさんは可愛らしい。それに、その性格なら、もっと上を望んでもいい。わたしが1人でもあなたを守りきれるような男を紹介しよう。貴族がいいかな?それとも手広く商売をしている者がいいかな?他国とも繫がりがあってね。外国の男も紹介できるよ?わたしと養子縁組すれば皇族だって範疇に入ってくる。わたしは娘がいないし...」
「待ってください。お話を遮って申し訳ありません。でも...それは、わたしとアレク、シスさんとの仲を認められない、という意味でしょうか...?」
あぁ、ドキドキする。
大丈夫。大丈夫だ。クロエは俺がいい、と言ってくれたんだから。
「...そういうわけではない。アレクシスは、わたしの息子だが、こんな容姿だからね。とっくに諦めているんだ。あなたには、もっと相応しい男がいるだろう、夫を1人にするなら自他ともに一番いいと思えるような男がいいだろう?いいんだ。構わない。わたしはクロエさんを気に入ったからアレクシスを振っても怒りはしない。正直に言っていい」
えぇ、そこまで言う?
クロエ、大丈夫だよね...?
横目でクロエを見てびっくりした。怒ってる...?
「...結構です。元々わたしには夢物語だと思ってましたから。アレクシスさんと離れるくらいなら夫を2人でも3人でも迎えます。相手も自分で見つけますから、どうぞお構いなくっ」
あぁ、クロエ。最高だ。
やっぱりクロエみたいな子、他にいないよ。
これで父上も、やっと信じることにしたようだ。
「ふっ...。なるほど。お前の話は本当だな」
やっと、ちゃんと笑ってくれた。
父上の胡散臭い笑顔は気持ち悪い。
父上はクロエに謝ったが、クロエは顔を覆ってしまった。
「クロエ?」
「.....アレク、と離されるのかと、思って、こ、怖かった...」
「クロエ...!」
クロエ。可愛い。本当は怖かったのに俺のために怒ってくれたんだね。
感極まって父上の前だったがクロエを抱きしめた。
その後、父上が何度も謝り「どうか、これからもコレが見放すようなことをしない限り、よろしく頼む」と、また頭を下げた。
もちろん、クロエを大事にするに決まっているし見放されるようなことなど絶対しない。
「お前は相当な運の持ち主だったようだ。お前と結婚してくれるお嬢さんが現れるとは。それも、なかなかいない素敵なお嬢さんだ。見た目も可愛らしいし、アニス皇女様がいらっしゃらない今なら国で一番と言ってもいい」
べた褒めだ。
母上のことでも、こんなに褒めているのは聞いたことがない。
だがしかし、そうだろうとも。
クロエは、本当にいい子なんだ。
父上はクロエの認識が甘いこと、これから貴族としての心構えも踏まえ教育を受けてもらうことなどを話す。
俺が言葉を付け足す。
「うちは2代前の伯爵が功績を上げたときに子爵位を賜っているんだ。父は伯爵位を兄に、子爵位を俺に譲ると言ってくれた。領地もある」
「アレクシスには悪いが、こいつは結婚はできないものと思っていたし本人も自分は要らないスペアだから冒険者になって家を出る、と言って本当に出ていってしまった。メッセージを送っても、ほとんど返してこないしね」
父上は、そう言って俺を見た。
必要なことは返してるだろ。
が、クロエには毎日メッセージを送っていたことをクロエにも見られて思い出す。
俺は冒険者を辞めるつもりだがクロエはどう思うか気になって聞いたみた。
そうしたら「わたしはアレクがやりたいようにすればいいと思う。でも領地は遠いんでしょ?わたしもついていってもいい?」なんて言うんだ。
可愛すぎる。ついてきてくれるの?
「ク...」
「はい、そこまで」
抱きしめようと腕を伸ばしたときに父上に止められた。
「とりあえず、わたしもこんな大きなチャンス逃したくないんでね。クロエさんの父君も交えて話をして、さっさと婚約を結んでしまいたい。貴族には順番も大事だから。ね?アレクシス」
ソウデスネ。
甘い、に持っていきたくて、つらつら書く、すると長くなる。
要するに短編と甘いを両方狙ったのが失敗の原因と気づきました...。
そんな力が自分にあるとでも...?




