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【書籍化】 生産スキルがカンストしてS級レアアイテムも作れるけど冒険者アパートの管理人をしています  作者: まるせい


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こっちには愛しのアースきゅんがついてるんだからねっ!

「はぁはぁ……それ以上……進ませるわけにはいかないわ」


 周囲の建物は破壊され、瓦礫が積み上がっている。

 ラケシスは魔導アーマーを操るヘドロと対峙しており、巻き添えを食わないように警備兵が周りを囲んでいた。


「くくく、生意気な小娘め。貴様のせいでワシはここまで追い込まれたのだ。神殿の後ろ盾もなく、貴様の存在のせいで揉み消すこともできない。せめて一緒に破滅してもらうぞ!」


 目を血走らせたヘドロは、ラケシスに向け嗜虐的な笑みを浮かべた。


「私はこれから、あいつと幸せな生活を築き上げていくの。破滅するなら一人でどうぞ」


 長年の地獄から救い出してくれた少年の姿を思い浮かべると、ラケシスの胸に暖かいものが灯った。

 彼のことを考えるだけで、ラケシスはどんなことだってできる気がする。これまで以上の魔力が集まるのを感じた。


(問題は、このまま破壊して大丈夫なのかという点ね……)


 先程から、ラケシスの魔法攻撃は魔導アーマーの魔力吸収にて防がれてしまっている。

 元々、魔導アーマーを起動するのに必要な魔力は彼女が注いだもの。限界ギリギリまで補充してあり、今もこうして魔力を吸いあげたせいか、魔石が禍々しい赤い光を発している。


 操縦席の後ろにあるので、ヘドロは気付いていないようだが、このままでは爆発するのではないかとラケシスは考えた。


 自分の全魔力を吸った魔石が、限界を超えて魔力を蓄え続けている。

 もし、これが爆発するようなことになれば、この場にいる人間どころかブレスの半分が消し飛ぶことになるだろう。


 そう考えると、これ以上の攻撃を加えるのは危険だった。


「ふふふ、威勢の良い言葉を吐くわりにはそちらから仕掛けてくることもできないようだな」


 ラケシスが躊躇っていると、ヘドロが距離を詰めてきた。自身の状態を解っていないので暢気なものだ。


「くっ!」


 このままでは突破されてしまう。ラケシスがイチかバチか魔法を使うか躊躇っていると、


「吹き飛ぶが良いっ!」


 魔導アーマーの腕を振り上げたヘドロが叫んだ。


 ラケシスが目を背け、自分の最後を覚悟したところ……。


「させるかああああっ!」


「何っ!?」


 ケイが飛び出し、肉薄すると剣を振り、振り下ろされる腕の軌道を逸らす。


「ラケシスさん、助けに来ましたよっ!」


 肩に触れる暖かさ、目の前に映る安心できる優しい顔。


「遅いわよ、アース」


 ラケシスは力を抜くとアースにもたれかかる。


「あっ、ラケちんずるいっ! せっかく全力で走って助けに来たのに!」


「こんな時に何を言うておるのだ、リーン殿」


 リーンとベーアも駆けつける。


「ま、間に合って良かった……、もうこれ以上走るのむーりー!」


 ライラが目を回してその場に倒れる。彼女は走ってリーンたちを迎えに行き、ここまで連れてきたのだ。


「ラケシスさん、このポーションを飲んでください」


 アースが小瓶を差し出すと、ラケシスは一気にそれを煽った。体力が回復し気力も持ちナイス。


「気を付けてアース、あいつやばい状態になってるから」


 アースは魔石の色を見ると、険しい表情を浮かべる。


「これ以上魔法をぶつけると危険な気がするわ」


「それは、良い判断ですよラケシスさん」


 二人は身を寄せ合い情報の共有を開始する。


「ええ、あれは古代文明が生み出した【魔導アーマー】です。コアには大量の魔力が蓄積されていて、破壊して停止させると自爆します」


「なんですって!?」


 やはり踏みとどまって正解だった。


 現在、アースたちは街の中心で戦っている。もしこんなものが爆発したらただでは済まないだろう。

 どうにかして、ヘドロを説得して武装解除させるしかない。ラケシスがそう判断をしていると……。



「ちょっと! 何をしているのっ!」


 血相を変えたレミリアが姿をみせた。


「お前か! 神殿は高い寄付金をふんだくっておきながら、聖女の管理もろくにできなかったくせに。よくおめおめと私の前に顔を出せたものだな!」


「今すぐ魔導アーマーから降りなさい! 手遅れになりますよ!」


「馬鹿めっ! もう手遅れだ!」


 レミリアとヘドロが怒鳴り合う。


 レミリ我を睨み付けていたヘドロだが、ふと考えを改める。


「いや、そうでもないか……。今からでも遅くない。聖女が心から私の命令を聞くのなら考えてやらないこともない」


 ヘドロはそう言うと、カタリナに視線を向けた。


「聞きましたね、聖女カタリナ。あなたの責任なのだから言う通りにしてください」


 レミリアがカタリナを睨みつける。ラケシスの魔法が通じず、他の人間には魔導アーマーを止めることができない。


 時間を稼ぐことでしか、被害を食い止める方法がない。


 カタリナはアースをチラリと見た。顔が青ざめ、身体が震えている。もしここでヘドロの下に行けば自分がどうなるのかわかっているのだ。


 だが、それでもなお、他の人間に被害を及ぼすわけにはいかないと考えたカタリナは……。


「それで……皆が救われるのなら」


 魔導アーマーが爆発すれば、多くの市民が犠牲になる。自分が耐えれば、後始末はアースがしてくれる。


「ふふふ、よし。それじゃあ大人しくこっちにくるのだ」


 魔導アーマーの搭乗口が開き、カタリナを受け入れようとする。ヘドロは醜悪な笑みを浮かべカタリナを自由にできることに愉悦を覚えていると……。


「駄目よ」


 ラケシスが手で制しカタリナを止めた。


「な、何をしているのですっ! 今だけ言うことを聞いてでも、この場を収めなければならないのですよ」


 レミリアが怒鳴った。


「それでカタリナの心に一生消えない傷を負わせるつもり?」


 身勝手な主張に、ラケシスはレミリアを睨みつけた。


「そうだよっ! 元々の原因は神殿にあるのに、そんな責任負う必要ないよっ!」


 本人の許可もなく、カタリナを売るように差し出したのはレミリアだ。自らの行動の果ての結果だというのに、尻拭いをカタリナにさせるのはおかしい。


「だったら、このままブレスの街ごと滅ぼされろと言うのですか?」


 レミリアの言葉に、この街の住人の命が懸っていることを意識させられる。だが、


「僕たちが何とかします!」


 アースがそう答えると、アパートのメンバーは戦闘態勢をとるのだった。


「ベーアさんとケイさんは敵の足元を狙って行動力を奪ってください」


「わかった」


「了解した」


 アースの指示に従い、ベーアとケイは武器を構えた。


「リーンさんは死角にまわり込んで攪乱をお願いします!」


「リーンちゃんにお任せだよっ!」


 三人は返事をすると散会する。


「馬鹿めっ! この魔導アーマーに攻撃が通じぬのは先程から攻撃してわかっているはず」


 これまで、ラケシスの魔法はおろか、警備兵が持つ数々の武器でも傷一つ付かなかった。

 ヘドロは魔導アーマーの装甲に絶対の自信を持ち、アースを嘲笑うのだが……。


 ――ガキンッ――


「何ぃっ!」


 鈍い音がして魔導アーマーの一部が欠けた。


「この武器は特別製でのう。古竜の鱗にも傷を付けることができるらしいのじゃ」


「同じくっ!」


「武器だけなら古代文明にも負けない! こっちには愛しのアースきゅんがついてるんだからねっ!」


 三人の攻撃が、確実に魔導アーマーの装甲に傷をつけはじめる。


「リーンどさくさ紛れに告白とはいい度胸ね」


 一方、ラケシスは、アースの身近に身体を寄せると魔法の詠唱を続けていた。


「馬鹿め、いくら傷がつくといっても、ほんの少し欠けるだけではないか! これならば貴様らを倒せば問題ない!」


 コバエにたかられているかのように、うっとおしそうに腕を振るヘドロ。ケイたちの攻撃に気をとられている。


【ダークミスト】」


「何っ!」


 魔法が発動し、黒い霧が魔道アーマーを覆い隠す。


「何も見えぬっ! だが、これでは向こうも攻撃できないはず!」


 暗闇の中、ヘドロは動きを止め停止する。耳に集中し、相手が何をしてくるのか探ろうとするが、身動きする足音すら聞こえてこない。


「ま、まさか逃げるつもりなのかっ!」


 偉そうなことを言っておきながら、我が身可愛さに撤退するつもりなのだと考えたヘドロは、慌てて魔導アーマーを動かそうとするのだが……。


 ――キュウゥゥゥーーン――


「な、なぜ止まるっ!」


「あんたはもっとも見逃しちゃいけないやつを完全にスルーしていたのよ」


 ラケシスがそう言って、霧が晴れると……。


「ふぅ、これで停止完了っと」


 魔導アーマーの足元、操作パネルの目の前にアースの姿があった。


「ば、ばかなっ! まさか強制停止させたのか⁉ これを起動させるために、私がどれだけの投資をしたと思っている!」


 修復作業に加えてラケシスからの魔力供給。果ては、暗号を解読するために別な魔導具の購入まで。


 そこまでの費用をつぎ込んでようやく起動させたのに、アースはそれをあっさりと覆した。


「この手の魔導具については勉強しましたからね」


 以前に古代文明の遺跡に閉じ込められた後、時間があったので勉強した結果、緊急停止の仕方を知っていた……と周りには説明してある。


「普通はそれでできないんだけど、アースきゅんは頭がおかしいから」


「それ褒めてないですよね⁉」


 涙目になるアース。


「さあ、大人しく出てきてください!」


 注意勧告をするアースだったが、ヘドロは俯くと、足元に赤く点滅しているボタンを発見する。


「何だ、これは……?」


「それを弄らないでくださいっ!」


「ははぁ、さては再起動スイッチか? 貴様の言うことなど聞くと思うかっ!」


 ヘドロはスイッチを押した。


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