ー第一章(5/7)ー
次いで、女子児童が同じように手を上げて発現する。
「先生。小さな精霊って何ですか?」
「小さな精霊は〝ジン〟と読み、私達を手助けしてくれる存在です。皆さんが精霊様から魔法の実を授かると、空気中に漂っているジンを感じ取ることが出来るようになります。また、その感じ取る感覚を〝精霊感覚〟と言います」
「じゃー今もここにいっぱいいるんですか?」
「はい。目に見えないだけで、彼らはどこにでもいるんですよ」
「幽霊みたいだな―!」
クリムの説明を聞いた一人の男子児童がおちゃらけたように言い、女子児童が、やめてよ!とこれを諫める。
かつて自分たちも同じようなやり取りをしていただろうか、と目の前に広がる懐かしい光景に目を細める。
すると、サゾノフは一回手を叩いて皆の注目を集めた。授業終了の時間が来たようだ。
「おーしこの辺で今日は終わりなー。約束もしちまったことだし、鐘が鳴るまでは質問タイムにするか。クリムもそれでいいか?」
「はい。私で答えられることなら何でも聞いてください」
そう承諾するが早いか、児童達は座っていた椅子から飛ぶように立ち上がり、クリムの周りを囲んだ。
その勢いに気圧されるクリムだったが、そんなことは構わずに児童達の質問攻めが始まった。
高等部ではどのような授業があるのか、進学する際の試験勉強はどうすればいいのか等の真面目な質問から、彼氏はいるのか、どうやったら胸は大きくなるのか、と言った乙女な質問までバラエティに富んだ内容だった。
面食らっていたクリムだったが、無邪気な彼らの対応につい頬が緩み、すべての質問に答え始める。
異性交際に関する質問については、顔を赤らめ、そういった経験はありません、と恥ずかしそうに答えるクリムを女子は愛おしそうに見つめ、一方、聞き耳を立てていた男子は大きくガッツポーズを取った。
更に女子たちの、恋愛に偏った質問が過激化したため、そろそろ助け舟を出すか、とサゾノフが椅子から腰を上げる。
そのタイミングと同時に、一人の児童が、そういえば気になってたけど、と言葉を口にしてクリムに質問をぶつける。
「クリム先生の魔法の属性って何ですか?」
「―――っ!」
その質問を聞いた瞬間、恥ずかしさから紅潮していたクリムの顔は強張り、みるみる肌色を青白くさせた。
突然、様子が変わったクリムを不思議に思い、周りにいた児童達は心配そうに顔を覗かせる。
「大丈夫? クリム先生」
「だ、大丈夫ですよ。すみません、属性の質問、でしたね。私の……」
声が掠れ、動揺していることが自分でもはっきりと分かる。それでも、何とか平静を保とうと言葉をつないだ。
大丈夫、大丈夫と心の中で自身に言い聞かせる。
しかし。
―――お前みたいな〝無能の悪魔〟と今まで比べられてきたとはな。虫唾が走るよ。