ー第一章(3/7)ー
お父さんが自慢話する時と似てるー、と女子児童に言われ小さくないショックを受けるサゾノフ。まだ25だぞ俺ぁ、と呟くがいつも通りの覇気のない顔のため傷ついているのか判断が難しい。しかし、サゾノフは、ともかくだ、と気持ちを切り替えるように独り言ちると、おもむろに左手の平を上に向けてかざす。
クリムは、サゾノフが今からやろうとしていることを理解して、その場から一歩下がった。
「火よ、我に温もりを乞う。〝灯火〟」
サゾノフが言葉を唱えると、かざしていた手のひらの上に魔法陣が展開された。そして、一瞬の間に魔法陣から柔らかな光を放つ炎が現れて教室を照らし出す。
今までクリムに興味が向いていた児童達も、初めて見る魔法に感嘆の声を上げた。
やっと魔法に興味を示した児童達に、サゾノフは内心で安堵し、魔法を維持したまま説明を始める。
「今日は短縮授業だからもう始めるぞー。今、先生の手の平にある炎、これが魔法だな。俺達〝只人〟って種族が使える〝属性魔法〟の一種で、お前らも来年、つまりは十二歳の誕生日を迎えた夜に精霊様からこの力を授かることになる」
サゾノフは一息に説明をすると、教室を見渡す。先ほどまで騒いでいた児童達が嘘のように静まり返り、真剣な面持ちでサゾノフの説明を聞いている。
魔法は、この社会において必須と言っていい力だ。
日常生活の利便化、受験や就職に有利に働くアピールポイント、医療や科学など人類の発展を支える柱、生きるために戦う術と、幅広いジャンルで魔法は活躍する。
中には強大過ぎるがゆえに、使用を禁止された魔法もある。魔法とは、膨大な力の塊なのだ。
その力を手にするには、十二歳はあまりに若い。そのため、子供達には魔法の授業に関心を持ってもらわねばならない。それが、学園の最も重視している勉学のポイントである。
サゾノフは、説明を続ける。
「先生は、火を司る精霊様から加護を授かった。だから、火属性の魔法を使うことが出来る。精霊様は、地、水、風、火の四柱がいらっしゃる。そのうち一柱から加護〝魔法の実〟を授かるんだ。それまでにこの一年をかけて魔法の何たるかを学ぶように。それを疎かにすると―――」
サゾノフが言葉を区切った次の瞬間、彼の手の平でゆらゆらと燃えていた炎は、突然激しく燃え上がり、爆音とともに爆ぜ消えた。後には手の平から立ち上る白い煙だけが残る。
児童達は、いきなりの出来事に身体を強張らせ、中には目に涙を浮かべる児童もいた。
「こんな感じで魔法の暴発を起こすことになる。今のは先生の調整でやったから大したことなはいが、中には自分の魔法で亡くなった人もいる。魔法はお前たちの心強い力でもあるが、同時に命の危険が伴っていることを忘れるなよ」